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私の価値を測るには、この国の測定器では足りなかったようです。  作者: あとりえむ


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第8話:覚醒の輝き

「いやあああっ! 来ないで、誰か助けて!」

エレノア様の悲鳴が、天井の崩れかけた石造りの遺跡内に虚しく響き渡りました。


魔導兵器『プロメテウス』の爆発によって引き起こされた空間の歪み。そこから這い出してきた古代の魔獣は、どす黒い怨念の霧を撒き散らしながら、一歩、また一歩と私たちを追い詰めていきます。


義兄のジュリアンは、自慢の魔導杖をがちがちと震わせながら、狂ったように呪文を唱えていました。


「な、なぜだ! なぜ私の完璧な魔導兵器が制御不能になる! 立ち去れ、この前時代の化け物め!」


彼が放った火属性の魔導弾は、魔獣の強固な闇の結界に触れた瞬間、パチンと虚しく弾け飛んでしまいました。その圧倒的な実力差に、ジュリアンは杖を落とし、恐怖のあまり床を這いつくばって逃げ惑うことしかできませんでした。


魔獣の真っ赤な眼光が、今度は完全に私を捉えました。

逃げ場のない閉ざされた空間。背後の鉄扉は固く閉ざされたままです。


(ここまでなのかしら……。いいえ、私は絶対に諦めない!)

私は自身の胸の奥深く、あの黄金に輝く「最上位精霊・ガイア」の脈動に全神経を集中させました。私がその力を解放しようと覚悟を決めた、その時です。



ドガァァァン!!!


遺跡の分厚い鉄扉が、凄まじい衝撃波と共に内側へと吹き飛びました。

巻き上がる白煙と、一瞬にして周囲の空気を氷点下へと引き下げる圧倒的な冷気。その冷気の中に、私は誰よりも恋焦がれたその人の姿を見出しました。


「私の婚約者に、その汚い爪を向けるな」


漆黒の軍服を翻し、銀色の瞳に怒りの炎を宿したアルカイド様が、そこに立っていたのです。


「アルカイド様……!」


私が叫ぶと、彼は一瞬だけ私に柔らかな視線を向け、「遅くなってすまない、エルリア」と低く、包み込むような声で言いました。私の置き手紙を読み、軍の愛馬を限界まで飛ばして駆けつけてくださったのです。


アルカイド様は躊躇うことなく魔獣へと向き直り、王国最強と謳われる氷の魔力を解放しました。


「凍え果てよ」

彼の合図と共に、数千の巨大な氷の刃が空間に現れ、猛烈な勢いで魔獣へと襲いかかりました。魔獣の身体がみるみるうちに凍りついていき、これで勝負が決まったかのように見えました。


しかし、最悪の事態が起こります。

遺跡の中心で未だに暴走を続ける魔導兵器『プロメテウス』が、アルカイド様の強大な魔力を感知し、それを強制的に吸い上げ始めたのです。キィィィンと耳を刺す異音がさらに高まり、兵器から放たれた不浄な黒い電流が、アルカイド様の身体を直撃しました。


「ぐっ……ああぁっ!」

アルカイド様が苦悶の声を上げ、その場に膝をつきました。


不浄な魔導の毒を流し込まれたことで、彼の体内で、あの「闇と氷の魔力の暴走」が過去最悪の規模で目を覚ましてしまったのです。彼の身体から、制御を失った黒い冷気が激しく噴き出し、遺跡の床だけでなく、彼の自身の四肢までもが凍りつき始めました。


「ははは! 見ろ、あの黒狼公爵が苦しんでいるぞ! 私の兵器の勝ちだ!」

恐怖で狂ったジュリアンが奇声を上げますが、魔獣はアルカイド様の隙を見逃さず、さらに巨大化した闇の爪を振り上げ、彼を目掛けて振り下ろそうとしていました。


「アルカイド様――!!」


私の叫びと同時に、四年間ずっと私の中で静かに眠っていた「何か」が、完全に覚醒の時を迎えました。

彼を救いたい。あの優しい人を、私のたった一人の理解者を、絶対に死なせはしない。その強烈な祈りが、私の魂の檻を完全に打ち砕いたのです。



ドクン、と世界が脈打ちました。



私の足元から、眩いばかりの純金の光がブワリと溢れ出しました。それはかつての微弱な地属性の力などではなく、大地そのものが意思を持って激しく歓喜しているかのような、圧倒的な神の光でした。


「最上位精霊ガイアよ……私に、あの方を、この土地を守る力を貸してください!」


私が両手を掲げると、遺跡の石畳が一斉に黄金の光を帯びて鳴動し、床から無数の美しい光の蔦が伸びていきました。その蔦は、まずアルカイド様を襲おうとしていた魔獣の巨体を完全に縛り上げ、その動きを完全に封じ込めました。


「な、なんだあの光は……! 魔力ゼロのはずのエルリアが、なぜこれほどの力を……!?」

ジュリアンが目を剥いて絶叫します。エレノア様もまた、その神々しい輝きの前に、言葉を失ってへたり込んでいました。


私はアルカイド様の元へと駆け寄り、凍りつきかけている彼の身体を、再び強く抱きしめました。


「アルカイド様、もう大丈夫です。私の温もりを受け取ってください!」


私から放たれるガイアの黄金の光は、アルカイド様を蝕んでいた不浄な魔導の毒をあっさりと浄化し、彼の暴走する氷の魔力を優しく包み込んでいきました。刺すようだった彼の冷気が、みるみるうちに穏やかな、澄んだ輝きへと調和していくのが分かりました。


「……エルリア。お前、は……」

アルカイド様の銀色の瞳に、正気と、そして私への深い深い愛おしさが戻ってきます。


「さあ、アルカイド様。共にこの哀れな魔獣を、眠りへと返しましょう」


「ああ。お前と共に、どこまでも行こう」


二人の手が固く結ばれた瞬間、黄金の光と純白の氷の魔力が完璧な調和を伴って融合し、遺跡全体を包み込む巨大な魔法陣へと広がっていきました。真に覚醒した精霊の乙女の輝きが、暗い遺跡のすべてを照らし出していくのでした。

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