9/19
第九話 帰り道の距離
凛は退院して、一週間後には学校へ戻ってきた。
クラス中が騒いだ。
「雨宮大丈夫か!?」
「めっちゃ心配したんだけど!」
「入院ってマジだったんだな……」
凛はいつもの調子で笑っていた。
「大げさだなぁみんな」
その姿を見て。
安心した。
……はずだった。
「じゃあ湊、帰ろ」
放課後。
いつものように声をかけられる。
でも。
少しだけ違和感があった。
「どうした?」
「え?」
「いや、なんか」
うまく言えない。
凛の距離感が。
ほんの少しだけ遠い。
隣を歩いているのに。
前みたいな自然さがない。
「……湊ってさ」
「ん?」
「前からそんなに静かだったっけ」
「は?」
「なんか最近、よそよそしい」
それを言いたいのはこっちだった。
でも言えない。
「気のせいだろ」
「かなぁ」
凛は首を傾げる。
その時。
不意に視界が揺れた。
「……っ」
息が苦しい。
胸の奥が焼けるみたいに痛む。
「湊?」
「……なんでも、ない」
誤魔化す。
でも。
これはきっと。
凛が受けるはずだった苦しみだ。
契約の代償。
そう思った瞬間。
なぜか少しだけ安心してしまった。
凛が元気なら。
それでいいと。
本気で思ってしまった。




