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第十話 名前

その変化は、小さなものだった。


 でも。


 確実に始まっていた。


「神谷ー」


 昼休み。


 購買帰りの凛が手を振る。


 俺は一瞬、違和感を覚えた。


 今まで。


 凛はずっと。


「湊」


 と呼んでいた。


「……どうした?」


「え?」


「いや、なんでも」


 言えるわけがない。


 名前一つで傷ついてるなんて。


「そうだ、これ半分あげる」


 凛がパンを差し出してくる。


 その仕草は、昔と同じだった。


 でも。


 どこかぎこちない。


「ありがと」


「どういたしまして」


 凛は笑う。


 優しい笑顔。


 なのに。


 その笑顔の中に。


 俺の知らない距離が混ざっている。


 放課後。


 一人で帰る途中、スマホが震えた。


『ごめん、今日先帰る!』


 短いメッセージ。


 前なら。


 絶対に待っていた。


 それだけで、胸の奥が冷える。


 空を見る。


 灰色の雲が広がっていた。


 雨が降り出しそうだった。


「……これくらいで」


 呟く。


 まだ大丈夫だと。


 そう思おうとした。


 でも。


 本当は気づいていた。


 少しずつ。


 確実に。


 雨宮凛の世界から。


 神谷湊という存在が、消え始めていることに。

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