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第七話 契約

「……方法って、なんだよ」


 喉が乾く。


 それでも、声を絞り出した。


 白い存在は、感情のない目でこちらを見る。


「彼女に訪れるはずだった死を、別の場所へ移す」


「移す……?」


「君だ」


 一瞬、言葉の意味が理解できなかった。


 いや。


 理解したくなかった。


「待てよ……それって」


「彼女の病は消える。その代わり、君が引き受ける」


 淡々としていた。


 まるで天気でも話すみたいに。


「ふざけんな……!」


 気づけば声を荒げていた。


「そんなの、死ねって言ってるのと同じだろ!」


「そうだ」


 即答だった。


 言葉が詰まる。


 白い死神は、静かに凛を見る。


「本来、彼女はここで終わる」


「……」


「命は等価だ。歪めれば、必ず代償が生まれる」


 窓の外で雷が鳴った。


 病室が一瞬だけ白く染まる。


「代償は、それだけじゃない」


「……まだあるのかよ」


「君が彼女を救うたび」


 死神はゆっくりとこちらを見る。


「彼女は、君を忘れていく」


 息が止まった。


「……は?」


「世界は帳尻を合わせる。本来消えるはずだった存在を繋ぎ止めれば、代わりに君の存在が薄れていく」


 理解できない。


 理解なんかしたくない。


「待てよ……そんなの」


「怖いか?」


 静かな問いだった。


 当然だ。


 怖い。


 忘れられるのは怖い。


 死ぬのも怖い。


 全部怖かった。


 でも。


 ベッドの上の凛を見る。


 小さく呼吸するその姿が。


 消えてしまう未来だけは。


 想像できなかった。


「……助かるんだな」


「契約が成立すれば」


「凛は、生きるんだな」


「ああ」


 それだけ聞ければ十分だった。


「じゃあ、いい」


 死神が初めて少しだけ目を細める。


「後悔するぞ」


「……うるさい」


 震える声で笑った。


「好きなやつが死ぬ方が、ずっと嫌だ」


 その瞬間。


 白い光が、病室を満たした。

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