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第五話 崩れる音
その日は、朝から嫌な空気だった。
理由は分からない。
でも。
妙に胸騒ぎがした。
凛は一応学校に来ていた。
けれど明らかに顔色が悪い。
「休めばよかっただろ」
「テスト返却あるし」
「真面目か」
「赤点回避は命懸けなので」
「縁起悪いこと言うな」
そう返した瞬間。
凛が少しだけ目を細めた。
「……湊ってさ」
「ん?」
「変なところで本気で怒るよね」
「当たり前だろ」
「ふふ」
凛は嬉しそうに笑った。
その笑い方が。
なぜか少しだけ寂しそうに見えた。
五時間目。
突然、教室がざわついた。
前の方で椅子が倒れる音がする。
反射的に顔を上げた。
床に倒れていたのは。
「——凛?」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
クラスメイトの悲鳴。
駆け寄る教師。
白くなった凛の顔。
「おい、凛!」
名前を呼ぶ。
返事はない。
触れた手が、怖いくらい冷たかった。
そこで初めて。
俺は理解した。
これは。
ただの体調不良なんかじゃない。
世界が崩れる音を、確かに聞いた気がした。




