第二話 放課後のコンビニ
「湊、肉まん買って」
「六月だぞ」
「冷房寒い」
「意味分かんねぇ」
放課後のコンビニ。
凛は雑誌コーナーの前でしゃがみ込みながら、完全に人を使う顔をしていた。
「優しい幼馴染ならここで買う」
「優しい幼馴染は財布扱いされない」
「ケチ」
「お前が自由すぎるんだよ」
結局買ってしまう自分も大概だと思う。
温かい肉まんを渡すと、凛は満足そうに笑った。
「さすが湊」
「はいはい」
店を出ると、空は少し曇っていた。
六月の湿った風が肌にまとわりつく。
凛は肉まんを両手で持ちながら、ゆっくり歩いている。
「そういえばさ」
「ん?」
「来月、花火大会あるじゃん」
「あー」
「行く?」
聞き方が妙に自然だった。
だから俺も、変に意識してしまう。
「……まぁ、予定なければ」
「なにそれ。遠回しに断ってる?」
「違うって」
「じゃあ決定ね」
凛は勝手に話を進める。
昔からそうだ。
俺の予定に、勝手に自分を組み込んでくる。
でも嫌じゃない。
むしろ。
「湊?」
「……いや、なんでも」
危ない。
最近、こういう瞬間が増えた。
何気ない顔を見ただけで、変に意識してしまう。
今さら、遅いのに。
「……っ」
その時だった。
隣を歩いていた凛が、小さく咳き込む。
「大丈夫か?」
「ん、水飲んだ時変なとこ入った」
「顔赤いぞ」
「だから暑いんだってば」
そう言って笑う。
でも。
少しだけ、苦しそうだった。
その違和感が、なぜか頭から離れなかった。




