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第十六話 完全忘却

二学期初日。


 教室へ入った瞬間、嫌な静けさを感じた。


 凛が。


 俺を見ていた。


 初対面を見るみたいな目で。


「……えっと」


 凛が困ったように笑う。


「ごめん、誰だっけ」


 世界が止まった。


 周囲の声が遠い。


 心臓だけが、うるさいくらい鳴っている。


「雨宮?」


 クラスメイトが驚いた声を上げる。


「え、神谷じゃん」


「……神谷?」


 凛は首を傾げる。


 本当に。


 分からないみたいに。


「私、その人知らない」


 その瞬間。


 胸の中で、何かが完全に壊れた。

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