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ep6.帰る場所
その時。
ルカが毛布を抱き寄せながら、小さく呟く。
『……モニカってさ』
『はい』
ルカは少し言いづらそうに視線を逸らした。
『先生っぽい』
モニカの手が止まる。
暖炉の火が静かに揺れていた。
『先生?』
ルカは肩をすくめる。
『なんか……ちゃんと見てくる感じ』
モニカは何も言わなかった。
ルカは続ける。
『熱あるとか、苦しいとか、そういうの隠しても、すぐ分かるし』
照れ臭そうに鼻を擦る。
『あと、変に怒んねぇし』
暖炉の火が、小さく弾けた。
『俺、前に咳止まんなくて倒れた時さ』
ルカは窓の外を見たまま呟く。
『うるさいって蹴られたことある』
その声は妙に軽かった。
軽く言わないと、本当に痛かったことまで出てきてしまいそうな声だった。
モニカは小さく目を伏せる。
胸の奥で、また遠い記憶が揺れる。
疲れ切った夜勤。
苛立つ声。
『またナースコール?』
誰かの舌打ち。
そして。
それを聞きながら、何も言えなかった自分。
モニカはゆっくり息を吐く。
ルカは毛布を握りながら、小さく笑った。
『俺、先生なんて見たことねぇけど』
モニカが顔を上げる。
ルカは少しだけ照れ臭そうに続けた。
『でも、いたらモニカみたいなんかなって』
暖炉の火が静かに揺れている。
その赤い光を見ながら、モニカはしばらく何も言えなかった。




