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ep3.うわごと

夜が深くなるにつれ、少年の熱はさらに上がっていった。


呼吸は浅い。


速い。


時折、胸の奥で濡れた音が混じる。


モニカは寝台のそばへ椅子を寄せ、静かにその呼吸を聞いていた。


暖炉の火は小さく揺れている。


女主人は先に眠ったらしく、階下はもう静かだった。


外では雪が窓を細かく叩いている。


少年は苦しそうに眉を寄せ、小さく何かを呟いていた。


熱のうわごとだった。


『やめろ……』


掠れた声。


『取んなよ……』


モニカは濡らした布を額へ乗せ直す。


汗が酷い。


指先へ触れると、熱がじわりと伝わってきた。


その時だった。


少年が不意にモニカの手首を掴む。


驚くほど強い力だった。


『やだ……』


閉じた瞼の奥で、少年の目が怯えるみたいに動く。


『置いてくな……』


モニカは小さく息を呑んだ。


その言葉が、胸の奥へ静かに沈む。


遠い記憶。


暗い病室。


小さな子どもの泣き声。


『ママぁ……』


誰かを呼ぶ声。


モニカは思わず目を閉じた。


頭の奥が少し痛む。


けれど。


少年の手は離れなかった。


熱に浮かされながら、必死みたいに握り続けている。


モニカはゆっくり、その手を握り返した。


『大丈夫です』


その言葉は、考えるより先に口から出ていた。


『ここにいます』


少年の呼吸が、少しだけ落ち着く。


暖炉の火が静かに揺れた。


雪の音だけが、夜の街へ降り積もっていく。


モニカはその小さな手を握ったまま、朝まで椅子から動かなかった。

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