04.箱の中の猫(娘)
友人が段ボール箱を抱えてきたのは、梅雨の終わりだった。
「拾っちゃってさ」
箱の中で、小さな声が動いた。
覗くと、子猫が三匹いた。
そのうちの一匹が、ふらふらと立ち上がる。
白い体に、茶色の斑がいくつかあった。
私はしばらく見ていた。
子猫は箱の縁に前足をかけて、外を見ている。
子猫を抱き上げてみたくて手を伸ばしたが、壊してしまいそうな気もしてすぐに引っ込めた。
結局、そのなかの一匹の猫を連れて帰った。
すぐさま、ペット可の部屋を探して、引っ越して、バイトも少し増やした。
猫はよく眠った。
丸くなって、白い腹を見せて眠る。
ときどき、茶色の耳だけが動いた。
そうかと思うと、真夜中にいきなり走り出し、私のお腹を縦断していく。
それが、ほぼ毎夜のことだった。
本を読んでいる私の肘に額をこすりつけてきて、興味を自分に向かせようとしたりもした。
狭い部屋だったけれど、そこに生き物がいるだけで、少し暖かかった。
幼い頃から言われ続け、胸のうちにずっと木霊として残響している言葉があったが、その頃は、いつの間にか霧散して聞こえなくなっていた。
猫とは三年程、一緒に暮らした。
…ある朝、起きてこなかった。
私はしばらく抱いていた。
白い毛は、もう動かなかった。
妙に冷静な頭で、ペットの火葬場を探していた。
そうして、小さな箱を見つけて、そこに入れた。
ふたを閉じる前に、もう一度だけ顔を見た。
箱は軽かった。
それを持って外へ出て……。
部屋に戻ると、わずかな隙間があるように思えてならなかった。
気が付くと、私は結構な間、外界との接触を断っていた。




