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令嬢はこの気持ちの名前を知らない 〜「心がない」と婚約破棄された悪役令嬢に、殿下が感情をひとつずつ教えてくれます〜

作者:夜凪 蒼
最新エピソード掲載日:2026/08/12
「これは、どういう顔をする場面ですか」

頭から葡萄酒をかけられた公爵令嬢リディア・オルコットは、真顔でそう尋ねた。侮辱も嘲笑も、彼女には届かない。生まれてから一度も笑ったことも泣いたこともなく、5つの年に医師が告げたのは「心の臓に、欠けがございます」。以来12年、リディアは人の表情を帳面に書き写し、書いてあるとおりの顔を作って生きてきた。

婚約破棄を言い渡されたその夜、自分の頭からも葡萄酒をかぶった男がいた。継承権を自ら捨てた第二王子ノエル。

「君は感情がないんじゃない。名前を知らないだけだ」

こうして、感情に名前をつける実験が始まる。塩を山盛り3杯入れた紅茶。窓から降ってくる王子。実験はことごとく空振りして——けれど侍女が侮辱されたとき、リディアの手は勝手に動いた。

『怒り——習得』

名前がひとつ増えるたび、「人形だから何をしてもいい」と信じていた人々の足場が崩れていく。そして最後のひとつだけは、誰も教えてくれない。

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※カクヨム・アルファポリスにも掲載しています。
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