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新訳 三河物語 〜 徳川家康と家臣団の戦国サバイバル 〜 with 逆行転生犬シロ  作者: 条文小説


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3-21 戦後査定に物申す。

挿絵(By みてみん)


三河物語みかわものがたり』は、江戸時代初期の、旗本の大久保忠教による著作。戦国時代から江戸時代初期を知るための史料とされることもあるが、徳川史観による偏った記述により資料としての正確性は欠如している。出典:Wikipedia

 よう、また会ったな。三河の「真実ログ」の番人、大久保彦左衛門だ。


 大坂の陣が終わり、ついに天下泰平のパッチが適用された。だがな、戦が終われば今度は「報酬アチーブメントの査定」という、これまた厄介なフェーズが始まる。


 今日は、戦場を知らない連中が武功を語るおかしな風潮と、俺が家康公と真っ向からぶつかった「御旗と御鑓」の激論ログを語ってやろう。いいか、これが「戦国ガチ勢」の最後の意地だ。


 戦後、京都では今回の大坂での働きを精査する「戦功定せんこうさだめ」が行われた。ところが、その証人レフェリーとして出てきたのが、天海僧正や宗拙法印といった戦闘経験ゼロの「僧侶バフ」や「医者ヒーラー」だった。


 これには俺たち古参プレイヤーは呆れ果てたぜ。昔は武辺の証人といえば、同じく戦場を駆け巡ったガチ勢を立てるのが当たり前だった。なのに今の世は、一度も敵のグラフィックを見たこともないような坊主や医者が、武功の評価するなんて、腹筋が痛くなるほどお笑い種だ。


 奴らが「察するに、あいつの手柄だ」なんて言うだけで、それが公式 武功ログに認定される。まさに「未プレイ勢がゲーム批評を語る」ような末世の光景だ。


 最近の連中は、兜を被った首を取れば「最高 高名レアだ!」と騒ぎ立てる。だが、俺たち古参の基準は違う。昔の基準はもっとシビアだった。


 敵が崩れて逃げ出す「崩れ口」で首を獲るなんてのは、手柄のうちに入らねえ。「まだ敵の戦線が崩れる前、槍の下で命のやり取りをしたかどうか」。そこが評価の分かれ目だった。


 今の若造は、馬に乗ったまま敵を追いかけて「兜首レアアイテム獲った!」とドヤ顔してるが、昔のガチ勢は、合戦になれば馬を後ろに下げて、徒歩カチで殴り合うのが基本だった。今の連中のプレイスタイルは、鼻で笑うしかない。


 そんな中、旗奉行フラッグホルダーの連中が戦場でウロウロして役に立たなかったというログが、家康公の耳に入ったらしい。


 そんな中、家康公(相国様)が広間にお出ましになり、俺(彦左衛門)を見つけてこう仰った。


「彦左衛門、お前は今回、不甲斐なかった『御旗フラッグ(旗奉行)』の組に付いていたよな?」


 俺は畳に手を付いて、後ろを確認してからキッパリ言った。


「いいえ、俺は『御鑓メインアタッカー(鑓奉行)』に付いて参りました」


 すると家康公の声が険しくなった。


「いや、お前は旗の組だったはずだ」


「いえ、鑓の組です」


「お前は旗だ!」


 家康公が怒鳴るような大声を上げても、俺は引かなかった。


「どこまでも、俺は御鑓に付いて参りました」


 結局、家康公は諦めて「なら、あの時、旗には誰がいたんだ?」と聞かれた。


 俺が「旗には保坂と正田が付いていましたよ」と答えると家康公は「正田……正田……」と三度もつぶやいたが、どうやら正田三太夫の名前をド忘れしてたらしい。


 小栗又一郎が「正田三太夫です」と助け舟を出したが、肝心の旗奉行の連中は、気まずいのか広間に一人も姿を見せていやがらなかった。家康公がブチ切れたのは、言うまでもない。そこから、家康公の怒りに火がついた。


「5日の日、よどに泊まろうなんて弱気な退却案デバッグを言い出したのはどこのどいつだ!!」


 誰もが縮み上がって沈黙する中、俺が真っ先に手を挙げて答えた。


「殿。誰が言ったかなんて特定できません。この場にいる上下の者すべて、誰一人として『淀に泊まろう』と言わなかった者はおりません。 全員の意見でした」


 家康公はフンと鼻を鳴らした。


「俺が泊まると言う前に、勝手に休止ログアウトしようとする奴らは、ただの怠慢だ!」


 俺は「みんな言っていました」と一点張りで押し通した。もしここで誰か一人の名前を出せば、その奴は確実に処刑されていた。俺が「全員の意見です」とログを上書きしたおかげで、特定の犠牲者を出さずに済んだんだが……誰も感謝してくれねえなw。


 どうだ。無能な「お気に入り(出頭人)」には厳しく、だが仲間のミス(淀の停滞)には体を張ってカバーを入れる。


「報酬の査定は坊主に任せても、現場の誇りと仲間だけは、俺が命懸けで守る」。これが、俺が貫いた「譜代の意地」だ。




【三河物語 作:大久保忠教 国民文庫刊行会 1912年】




其後相国様京都にて今度大阪にてのよきあしきの御せんさく被成けるに、あるいはでんちやうらうに相申たると云人も有り、又はそうてつ法印に相たると云人も有、あるいは我々たがひに云合て証人に立相たる人も有、事おかしきせう人成。昔は出家や医者などを武辺之証人に立たる人をば、中々付合もせざれ共、今の世は末世にも成り、出家といしやが武辺の脈とり、又はさつしれば武辺に成と見へたり。又は度々の武辺のしたる者を、昔は武辺のせう人には立て有に、一代之内敵のかほの赤きも黒きもしらざる者を、武辺のせう人に立る事、腹筋のいたきほどおかしき事なり。相国様はもとより度々合戦に合付させられて、日本の事は申不㆑及異国迄も隠れなき御武辺第一之相国様なれば、おかしくは思召共それ〴〵に被成而、打おかせられ給へば、申霽れたると思ひ而武辺顔をしていたる人おほし。古き武辺者共は目引鼻引わらひてこそいたり。其故武辺のしなも多し、昔はくづれくちの武辺をば武辺とはいわず、但しくづれざるまへにたがひにつゞゑてまほり合たる時之武辺をば、よき武辺とてほめたり。敵くづれたる処へ人さきにかけ入たると云共、其儀は昔はほめず、のきぐちの武辺が成がたき者なり。然間のきぐちの時手きつくて敵につかれ申時は、五人十人には過ざる者に候間、のきぐちの武辺を昔はほめ申なり。又こゝに只今はおもしろき事を云、兜をきたる者の頸を取ては、もぎ付と云事昔はなければ只今聞当世流か、昔は小者中間ふ丸之頸なりとも、押つおされつ之処にての頸か、又は槍下の頸か、深入をして打たる頸などの手がらなる処にて取頸は、何くびにてもあれ手がらと云たり。今度之大阪などのやうにの追ひ頸をばかぶときたりとも、たとへば大将のくびなりとも手がらの高名とはいわざるに、大阪にてかぶと頸を取たるとて利口する事のおかしや。然どもくづれてにぐる人が帰しししたる武辺をば、其儀をば殊の外にほめあげたり。今度は始めよりくづれたる敵なれば、各々馬にておひかけければ、何時もか様に馬にのり而合戦は可有と斗、たうせいの衆は心得候へども、合戦の時は皆々馬よりおひおろして、馬をば後備ひよりはるかにとおくやる物とはしらずして、何時も馬にのりてあらんと斗言もはかなき事なり。然る所に今度相国様の御旗奉行之衆うろ〳〵としたるを聞召被成候哉、小栗又一郎と大久保彦左衛門が罷出て有けるに、御座の間よりひろ間へ成せ給ひしが、彦左衛門を御覧ぜられて、汝は旗に付而来りたるかと御意の候へば、彦左衛門手を付いてうしろを見ければ、汝が事にて有と御意なれば、我等は御鑓やりに付奉り申と申上ければ、汝は旗にて可有と御意なれども、いや〳〵御鑓やりに付奉り申すとまた申上ければ、重而又汝は旗にて可有と、あららかなる御こゑを被成而御意の有りけれ共、兎角御鑓に付奉りて参上申由申上ければ、其時したらば旗には誰が付たるぞと御意の時、ほさか金右衛門と小田せうだが付奉りて参たる由申上ければ、何小田せうだ々々と三度迄御意なれども、三太夫をわすれける処に、小栗又一郎が申上けるは、せう田三太夫と申ける。其時四方を御らんじけれ共御旗ぶぎやうの衆一人もあらざれば、御広間へ御座被成候つるが立帰らせ給ひて、御目を見ひらかせ給ひて、五日の日淀にとまらんとは誰がいふつると、あら〳〵成御声にて三度迄被仰候へ共御返事申上る人なし。はじめにそれがしに御あらため被成候間、某が事にもやと奉存、彦左衛門申上げ申は、よどに御とまりの儀は誰と人を奉㆑指に及不申、上下共に左様に不申候人は、一人も無御座と申上ければ、重ての御諚に、我がとまらんといわざるに、とまらんと云やつばらめはたくらため迄と御諚被成而御ひろ間へならせけり。誰申ともなく申つると申上たらば、誰が云つると御意被成而云くちを御せり被付可申が、上下共不申候人一人も無御座候とごん上申によりて、彦左衛門はされ共せり被付不申。

〜参考文献〜

三河物語(国民文庫刊行会 大正元年)- Wikisource

https://share.google/jJTiQMFkLIRfryR6a


〜舞台背景〜

 この作品では原典を併記していますが、これがなかなか厄介で、単にWikiなどから貼り付けると元のルビが崩れて文章がグチャグチャになります。そのため原文の体裁は、ストーリーを考える数倍の手間を掛けて整えています。

 せっかくなので、小説と原文を見比べながら、原典の雰囲気を感じてもらえたらと思います。

 この「小説+原文併記」という形式は、たぶんなろうではあまり見ない試みだと思います。

 もし面白い試みだと思って頂けたら☆5とは申しませんが、☆3〜4くらい頂けると嬉しいです。

 逆に「ウ~ン」と思われた方は、遠慮なく☆1で意思表示して頂ければと思います。率直な感想として謹んで承ります。

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