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新訳 三河物語 〜 徳川家康と家臣団の戦国サバイバル 〜 with 逆行転生犬シロ  作者: 条文小説


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2-6 針崎の激突と「身内同士」の葛藤

挿絵(By みてみん)


 『三河物語』(みかわものがたり)は、江戸時代初期の、旗本の大久保忠教による著作。戦国時代から江戸時代初期を知るための史料とされることもあるが、徳川史観による偏った記述により資料としての正確性は欠如している。出典:Wikipedia

 よう、三河の歴史を語らせたら右に出る者はいない、大久保彦左衛門だ。


 前回、三河一向一揆という「三河最大級の反乱イベント」が起きて、岡崎城が四面楚歌になった話をしたな。今日はその地獄の門徒戦がいかにして終結し、そして伝説の「人質交換」から家康公が真の覇者へと駆け上がるまでの物語を語ってやろう。


 身内同士で殺し合う泥沼の戦い。だが、そこには三河武士の意地と、殿(家康公)の規格外のカリスマが詰まってる。


 上和田の防衛ラインでは、俺たち大久保一族が泥沼の防衛戦を続けていた。ある時、大久保七郎右衛門が敵の猛将・本田三弥と真っ向からエンカウント。一瞬の隙を突いて七郎右衛門が討ち伏せたが、三弥はまだ息があった。かつての仲間を仕留めるその手は、きっと震えていたはずだ。


 一方、敵軍のエース・八屋半之丞は複雑な立場にいた。彼は俺たちの長老・大久保浄玄の娘婿、つまり親戚だ。


 「身内を殺したくない、でも信仰は捨てられない……」


 そんな葛藤を抱えながらも、半之丞は「やるからには徹底的にだ!」と、一揆軍の策を練る。土井どいの水田に俺たちを引きずり込んで、足止めしたところを一網打尽にするという「地形デバフ」を利用したエグい策だ。


 戦況が動いたのは、苅屋の水野下野守(竹千代様の伯父だな)が見舞いに来た時だ。


 「殿、背後の作岡・大平に火の手が上がりました! 敵の別働隊です!」


 普通なら慎重に作戦を練るところだが、俺たちの殿は違う。


 「伯父上、あんたはもう帰ってくれ。上和田は俺が真っ直ぐ突き抜けて、敵を一人残らず消してくる」


 下野守が止めるのも聞かず、殿は馬を飛ばした。案内役は俺の叔父・弥三郎ひとり。小豆坂を爆速で駆け上がり、馬頭原で敵の別働隊と正面衝突エンカウント


 ここで、金の団扇の指物を背負って「俺はここだ!」と目立ちまくっていた石河新九郎が、水野藤十郎に突き落とされて討ち取られた。目立つ装備はヘイトを集めるってのは、戦国の基本だな。


 さらに笑える……いや、笑えないのが波切孫七郎だ。

 彼は坂を駆け上がってきた殿に、なんと二度も槍で突かれて落馬した。命からがら逃げ延びたんだが、プライドが高すぎた。


 「俺を突いたのは殿じゃない! 別の雑魚だ!」と言い張ったんだ。殿に直接相手をしてもらったなんて最高の名誉なのに、それを否定しちまったもんだから、殿の耳に入って「あいつ、マジで可愛げねーな」と永久出禁( perma-ban)。二度と御前へ呼ばれることはなかった。嘘はつくもんじゃないぜ。


 戦いが長引く中、ついに八屋半之丞が「これ以上は不毛だ」と、大久保次右衛門を通じて和談を申し出てきた。

 長老・浄玄が殿に泣きついた。


「殿。俺の息子も甥も、一揆の矢で目を射抜かれ、一族全員傷だらけです。でも、その犠牲に免じて、一揆の首謀者たちを許してやってくれませんか? そうすれば、他の裏切り者たちも降参します」


 殿は「……わかった。浄玄、お前に免じて許そう」と、上和田の浄衆院で起請文(誓約書)を交わした。


 これで一揆は終結。だが、ここからが「狸」の片鱗だ。


 門徒たちが「約束通り、お寺を前みたいに元通りにしてくださいよ!」と要求すると、殿は冷徹に言い放った。


「ああ、元通りにしてやるよ。お寺ができる前、ここは『ただの野原』だったろ? だから全部ぶっ壊して野原に戻せ。」


 ……最強の屁理屈!こうして一向宗の拠点は物理的に消去され、坊主たちは四散。三河から反抗勢力は一掃された。


 三河を固めた殿は、次なるミッション、今川に囚われている嫡男・竹千代(信康)様の奪還に動いた。まずは今川側の重要拠点・西の郡の城を落とし、今川義元の親戚である鵜殿長持うどのながもちの息子二人を生け捕りにした。


 これに対し、今川氏真は「竹千代を殺してやる!」と荒れていたが、側近の石川伯耆守ほうきのかみが命懸けで駿河へ乗り込んだ。


「氏真様、落ち着いてください。鵜殿の息子二人と、竹千代様をトレードしましょう」


 この交渉が成立。伯耆守が竹千代様を頸馬くびうまに乗せ、堂々と岡崎へ入城した時の伯耆守のドヤ顔は、三河中の伝説になった。


 永禄六年以降、今川氏真も必死だった。一之宮の砦を五千の軍勢で囲み、自ら一万の旗本を率いて牛久保へ出陣してきた。


 家康公はわずか三千で出陣。敵の包囲網を紙一重でかわし、一之宮の救援を成功させると、翌朝には堂々と敵の目の前を通り過ぎて帰還した。氏真は手出しすらできなかった。


 さらに御油ごゆ・赤坂での戦い。岡崎勢が押し込まれそうになったその瞬間……。


「……来たぞ! 殿だ!」


 またしても殿が爆速で戦場に現れた。敵軍を次々と押し崩し、八幡まで追い込んで放火。家臣たちが「いつか俺たち、見捨てられるんじゃないか?」と不安になっていたが、新八郎は笑った。


「安心しろ。この君は、誰よりも現場に駆けつけるのが早い。 どんなに新参者が独楽こまのように働こうと、俺たち譜代が泥を食って繋いだこの『絆』というバフは、一生消えないんだよ」


 どうだ。これが家康公が三河を完全に掌握し、戦国大名として覚醒した「三河統一編」のクライマックスだ。


 嘘を真実に変え、裏切りを慈悲で溶かし、絶望的な戦力差をプレイヤースキルで覆す。俺たちの殿の物語は、ここからいよいよ、武田信玄という「サーバー最強のラスボス」との対決へと向かっていく。




【三河物語 作:大久保忠教 国民文庫刊行会 1912年】




間上和田寄大久保一類るゐともが伊内いない之都得さがりて、鍼崎はりざき之寺内之きはに而きび敷せり合けり。其時大久保七郎右衛門と本田三弥相ためにしたるに、七郎右衛門早くはなし候而、三弥を打たふす。然ども其手に而は死ず。かゝりける所に一揆方之申けるは、爰元をきび敷あひしらひ而、はしら之郷中をとをり、妙国寺得出て取きる物ならば、上和田得入事成間敷、然時んばむかうをつよくさせ而、跡寄切而懸ならば、井をさし而のくべし。さもあらば土井之間の水田得追入而可㆑打と申を、半之丞者大久保浄玄じやうげんむこなれば、有は小姑こじうと、有は伯父姑をぢひうと、従弟姑なればあせにぎる。然と云而も各々を打せ而見る所にもあらずと思ひ而、みな々出て取剿きらんと云。はしら之郷中之原得出て馬をのりありきければ、妙国寺前を取剿きると見えたり。半之丞が来り而懸まはる成。急爰を引のけよとてのきければ、案之ごとく敵打除はらつ而出けれども跡にて候得ば手をうしなひたるふぜい成。八屋が出て懸まはり而、しらせずば大久保一名は不㆑被㆑残打れ可申間、愈 一揆ははゞかり可㆑申けれども是も、上様の御運の強き故成。然ば佐崎之寺内得取出を被㆑成ける所に、水野下野守殿鴈屋かりや寄武具に而、佐崎之取出得見舞に御越有。然処に土口ゑこもりたる一揆衆、佐崎之取出之後詰として、作岡つくりをか大平ひら得働はたらき而焼やき立る。佐崎に而御覧じて下野殿得被㆑仰けるは、御貴殿は是寄御帰被成候得、我等は上和田をすぐに取切申而不㆑被㆑残討取可㆑申と被㆑仰ければ、下野殿は只御無用と仰けれども、兎角に御帰り被成候得、我等は急申とて早御馬に召ければ、是を見捨すて而何と而返り可㆑申哉、其儀ならば御供申さんとて一度に懸給ふ。上様之御ためには能御仕合成。敵之ためには不運ふうん成次第成。渡り河地を越させ給ひ而、大久保一類るゐをははり崎之押おさへにをかせられ給ひ而、大久保弥三郎計御案内者申而、ぬす人来をすぐに小豆あづき坂得あがらせ給ひ而、馬頭ばとう之ふみわけ得出させ給得ば、つくり岡大平ひら寄帰るとて、はな合をして洞天どうてんす。石河新九郎はみちを替而のき而は、たと得ばいき而をもしろからず、又道をかゑ而山之中に而打れたらば、新九郎社こそへり道をして打れたるなどと、人に沙汰せられん事は、かばね之上之恥辱可㆑成とて、本道をすぐにのきければ、金之団扇の指物をさしける間、新九郎と見懸而、我も〳〵とおひかけたり。水野藤十郎殿懸付而突きおとして打取給ふ。頓而佐馳さばせ甚五郎、大見藤六郎、是兄弟も一つ場にて打取、波切孫七郎そこを行過而、大谷坂る上処を上様懸付させられ而、二鑓やり迄つかせ給ふに懸のび而馬寄落すしてにげ行。孫七郎を二鑓やりつきたるににげ而行たると被㆑仰ければ、波切孫七郎と申者、無㆑かくれ武辺之者又はちがい者なれば、此御意を聞而我は上にはつかれず、別之者につかれたると申。上様につかれ申と申ならばをぼえと申、又は其身のためにも能㆑可有に、眼前がんぜんに上様につかれ申而、上様にはつかれ申さぬと申たるに仍、御憨にくみ被成而、其後終つひに子供之代迄御前へ召不㆑被㆑出。然処に八屋半之丞、大久保次右衛門を (よび)出し而、御無事可㆑仕由申上候得と申けるに付而、大久保新八郎を同道して、次右衛門と両人御前に参、此由を申上ければ、御喜よろこび被成而さらばいそげとの御意なれば、八屋半之丞、石河源左衛門、石河半三郎、本田甚七郎、此外五三人申けるは、何と成とも御存分次第可㆑仕候。然ども何れもちがい申儀御赦免被㆑成可㆑被㆑下由、過分申つくしがたく奉㆑存候。其儀ならばとてもの儀に寺内を前々のごとく立をかせられ而可被下、次には此一揆のくはだての者の命を御捨免しやめん被㆑成而被㆑下候はゞ御過分に奉存候。然とは申とも各の存分は不存候へども、まづ申上候各に此事申ならば、定而異儀に及衆もあまたの中なれば不㆑存候。一人成とも何かと申者も候はゞ、又其に付て一味する者も御座候はゞ、此御ぶじ罷成難し。其時は我々供之斯かく斗存知候而も及間敷候得ば、御不沙汰は無して、御無沙汰に罷成候べき。其時はかへつ而二罪ざい之御咎とが人に可㆓思召㆒。然ば此事他言無して、此者供斗に而土ろ得引入可申間、各々の命右之くは立之者の命、寺内供に前々のごとく、御捨免しやめん之儀を申上給得と申に付而申上ければ、尤之儀汝なんぢ供申如く面々が命、並に寺内前々のごとく、相違さうい有間敷一揆企之者にをいては、兎角御成敗せいばい可歳成との御意なれば、右の者供惶おそれながら又言上申、寺内并に各々が命被下候儀、御過分申つくし難し。同はいたづら者の命をも被下候様にと申而、御ぶじの儀がつかゑければ、大久保浄玄申上けるは、をひ小供御手先得罷出申、日夜之戦無㆑隙仕、あまつさえ正月十一日には、土ろ鍼崎はりざき、野寺三ヶ所之一揆方一手に罷出、上和田へはたらきける処に一類るゐ之者供罷出ふせぎ戦申に付而、其日せがれ之新八郎はまなこを射られ、をひの新十郎もまなこを射られ、其外之姪をひ小供何れも手ををはざる者一人も無して、爰をせんどとしたる処得、上様御自身早く懸付させられ候に付而、敵方御影かげ見付つけ申に付而、我先にとにげのきけるに仍、一類るゐ供も利運仕。其時血池いけながししたるをば、上様御覧じ被成けり。其時之姪をひ子之辛労分と思召而、此一揆のくはだて之者の命を被下候得、此一揆をさへ御無事に被成而候はゞ、彼等を先立給ふならば、上野うへのに有坂井将監を頓て (ふみ)つぶさせられ給ふべき。何況哉いかにいはんや良殿松平監物殿も荒河殿も其日に押つぶし給ふべき。何か之御無心も打被㆑すて給ひ而、何と成供面々が望次第に可被成候得而、まづ御ぶじにさせ給得、御手さへひろくならせられ給はゞ、其時は何と被成候はんも御儘に罷可㆑成物を、只今は何かと被仰処にあらずと申上ければ、さらば浄玄次第に徐置ゆるしおき、起請を可㆑書とて、上和田之浄衆院じやうしゆゐん得御出被成而、御起請をあそばし而、右之者供に被㆑下ければ、是をいたゞき而、さらばとて石河日向守をろの寺内得、高須之口寄八丁得引入ければ、一揆方之各々傲騒おどろきさわげ供、早乱はやみだれ入ければかなはして、

我も〳〵と手を合ければ、御寛ゆるされ有而方々得御先懸をす。

〜参考文献〜

三河物語(国民文庫刊行会 大正元年)- Wikisource

https://share.google/jJTiQMFkLIRfryR6a


〜舞台背景〜

 この作品では原典を併記していますが、これがなかなか厄介で、単にWikiなどから貼り付けると元のルビが崩れて文章がグチャグチャになります。そのため原文の体裁は、ストーリーを考える数倍の手間を掛けて整えています。

 せっかくなので、小説と原文を見比べながら、原典の雰囲気を感じてもらえたらと思います。

 この「小説+原文併記」という形式は、たぶんなろうではあまり見ない試みだと思います。

 もし面白い試みだと思って頂けたら☆5とは申しませんが、☆3〜4くらい頂けると嬉しいです。

 逆に「ウ~ン」と思われた方は、遠慮なく☆1で意思表示して頂ければと思います。率直な感想として謹んで承ります。

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