わたくし、あの方の「七人目」だそうです ~歴代婚約者の会にようこそ。本日の議題は「八人目を出さない」~
最新エピソード掲載日:2026/07/20
「ヴェンデル様のお言葉を、そのまま申し上げます。――『君では家格が釣り合わなかった』と」
子爵令嬢マレーネ、十八歳。婚約披露の三日前に、侯爵令息から破棄された。
しかも本人は来ない。仲人の口上ひとつである。
この国の縁組は、披露と登記で初めて公になる。それまでは書面一枚残らない私的な仮婚約――
破棄の履歴は、どこにも残らない。
おまけに翌日には「マレーネ嬢の作法に難があった」という噂が、社交界を先回りしている。
騒げば「金惜しさに縁談を騒ぎ立てる家」の烙印。妹の縁談が潰れる。
両家とも、恥として伏せるしかない――そういう仕組みなのだ。
烙印に耐えて一か月。差出人のない招待状が届く。
『同じ傷をお持ちの方へ――お茶会のご案内』
指定の屋敷で待っていたのは、初対面のはずなのに、鏡のような顔が六つ。
あの家門に破棄された歴代の仮婚約者、六人。
全員が、同じ仲人、同じ口説き文句、同じ「披露の三日前」、一字一句同じ悪評で沈黙させられていた。
つまりあの婚約は、家門ぐるみの家業である。
会の掟は二つ。
八人目を出さない。泣き寝入りの顔は、今日で終い。
折しも王都には、七年前から仲人網の金の流れを追いながら、記録も証言もゼロで歯噛みしてきた縁組監察官がいた。
「単独の証言は『破談の恨み』で片づけられます。ですが、同じ型が七つ並べば――偶然ではなく、設計です」
「あら。では安全になった順に、一人ずつ差し上げますわ」
一度聞いた言葉を一字一句忘れない「記録役」の七人目と、歴代の先輩方。
議事録の第一項が毎回「本日の焼き菓子」の、表向きはただの「同窓会」が、
家業の次の縁談を先回りで潰し、止まった人生をひとつずつ巻き直していく。
被害者の会、本日も和やかに開廷である。
子爵令嬢マレーネ、十八歳。婚約披露の三日前に、侯爵令息から破棄された。
しかも本人は来ない。仲人の口上ひとつである。
この国の縁組は、披露と登記で初めて公になる。それまでは書面一枚残らない私的な仮婚約――
破棄の履歴は、どこにも残らない。
おまけに翌日には「マレーネ嬢の作法に難があった」という噂が、社交界を先回りしている。
騒げば「金惜しさに縁談を騒ぎ立てる家」の烙印。妹の縁談が潰れる。
両家とも、恥として伏せるしかない――そういう仕組みなのだ。
烙印に耐えて一か月。差出人のない招待状が届く。
『同じ傷をお持ちの方へ――お茶会のご案内』
指定の屋敷で待っていたのは、初対面のはずなのに、鏡のような顔が六つ。
あの家門に破棄された歴代の仮婚約者、六人。
全員が、同じ仲人、同じ口説き文句、同じ「披露の三日前」、一字一句同じ悪評で沈黙させられていた。
つまりあの婚約は、家門ぐるみの家業である。
会の掟は二つ。
八人目を出さない。泣き寝入りの顔は、今日で終い。
折しも王都には、七年前から仲人網の金の流れを追いながら、記録も証言もゼロで歯噛みしてきた縁組監察官がいた。
「単独の証言は『破談の恨み』で片づけられます。ですが、同じ型が七つ並べば――偶然ではなく、設計です」
「あら。では安全になった順に、一人ずつ差し上げますわ」
一度聞いた言葉を一字一句忘れない「記録役」の七人目と、歴代の先輩方。
議事録の第一項が毎回「本日の焼き菓子」の、表向きはただの「同窓会」が、
家業の次の縁談を先回りで潰し、止まった人生をひとつずつ巻き直していく。
被害者の会、本日も和やかに開廷である。
1. 披露の三日前ですけれど
2026/07/19 22:55
2. 記録役の椅子
2026/07/20 01:30
3. 八人目候補
2026/07/20 07:40
4. 安全になった順に、一人ずつ
2026/07/20 12:10
5. 名乗らないお節介
2026/07/20 15:20