魔王の祈り
200年前、史上最悪の厄災として討ち倒された魔王は、神殿の地下深くに封印されていた。
しかしあくる日、闇の中で深い眠りについていた魔王は、少女の啜り泣く声で目を覚ました。
「…誰か助けて、お願い…。私の声を聞いて…」
それは、天才的な魔力を持つ少女を己のものとしようとした強欲な神官により、魔道具で"話すこと"を封じされていた少女の心の叫びであった。
少女は神官により「罪人の娘」と偽られて仮面を付けられ、他の人々と関われないよう声を奪われていたが、地下に居る魔王にだけはその悲痛な叫びが届いたのだった。
始めは無視していた魔王だが、次第に少女の魔力に興味を持ち始める。少女の声に魔王が呼応すると、これまで孤独に打ちひしがれていた少女は心から喜び、魔王に感謝を伝えた。
やがて少女は会話している相手が魔王だと気がついたが、いつしかかけがえのない大切な存在となっていた魔王のことは、それが重罪と知りながらも神官には秘密にしたのだった。
ある日、美しい娘へと成長した少女へ、神官の悍ましい欲がにじり寄った。神官に追い詰められながら必死に逃げる少女はいつしか地下へと辿り着き、声にならない声で助けを呼んだ。
その瞬間、近くに来た少女の魔力を奪い取った魔王は封印から解き放たれ、神官ごと大神殿を破壊したのだった。
巨大な影となった魔王は、200年前の史実の通り、まさに【厄災】であった。
人々は恐怖し、逃げ惑い、そして絶望した。
魔王が再び世界を終焉に追い込むものと誰もが思ったそのとき、巨大な影の前に立ちはだかったのは、あの少女だった。
少女は魔王にしか届かないその声で、孤独から解放してくれた魔王への感謝とこれまでの想い述べ、覚悟を決めて魔王と対峙した。
初めて人から温かな想いを与えられた魔王は感激した。そして、魔王は少女への感謝を表すために少女の声を奪う魔道具を破壊し、自らにもそのありったけの魔力を向けて己を滅ぼした────
────…はずであった。
「大丈夫ですか…お怪我はありませんか?」
魔力を使い果たした魔王は、ただの人間の男の姿になっていた。
「魔王が爆発した時に、あの膨大な魔力が四散しました。このままでは国中で魔物が増えてしまうので、私は倒しに行く旅に出ます」
魔力を取り戻して天才的な魔術師に成長した少女の旅路に、魔王は正体を隠して…
しかしあくる日、闇の中で深い眠りについていた魔王は、少女の啜り泣く声で目を覚ました。
「…誰か助けて、お願い…。私の声を聞いて…」
それは、天才的な魔力を持つ少女を己のものとしようとした強欲な神官により、魔道具で"話すこと"を封じされていた少女の心の叫びであった。
少女は神官により「罪人の娘」と偽られて仮面を付けられ、他の人々と関われないよう声を奪われていたが、地下に居る魔王にだけはその悲痛な叫びが届いたのだった。
始めは無視していた魔王だが、次第に少女の魔力に興味を持ち始める。少女の声に魔王が呼応すると、これまで孤独に打ちひしがれていた少女は心から喜び、魔王に感謝を伝えた。
やがて少女は会話している相手が魔王だと気がついたが、いつしかかけがえのない大切な存在となっていた魔王のことは、それが重罪と知りながらも神官には秘密にしたのだった。
ある日、美しい娘へと成長した少女へ、神官の悍ましい欲がにじり寄った。神官に追い詰められながら必死に逃げる少女はいつしか地下へと辿り着き、声にならない声で助けを呼んだ。
その瞬間、近くに来た少女の魔力を奪い取った魔王は封印から解き放たれ、神官ごと大神殿を破壊したのだった。
巨大な影となった魔王は、200年前の史実の通り、まさに【厄災】であった。
人々は恐怖し、逃げ惑い、そして絶望した。
魔王が再び世界を終焉に追い込むものと誰もが思ったそのとき、巨大な影の前に立ちはだかったのは、あの少女だった。
少女は魔王にしか届かないその声で、孤独から解放してくれた魔王への感謝とこれまでの想い述べ、覚悟を決めて魔王と対峙した。
初めて人から温かな想いを与えられた魔王は感激した。そして、魔王は少女への感謝を表すために少女の声を奪う魔道具を破壊し、自らにもそのありったけの魔力を向けて己を滅ぼした────
────…はずであった。
「大丈夫ですか…お怪我はありませんか?」
魔力を使い果たした魔王は、ただの人間の男の姿になっていた。
「魔王が爆発した時に、あの膨大な魔力が四散しました。このままでは国中で魔物が増えてしまうので、私は倒しに行く旅に出ます」
魔力を取り戻して天才的な魔術師に成長した少女の旅路に、魔王は正体を隠して…