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出逢い





「…誰か助けて、お願い…。私の声を聞いて…」




………………何だと?

俺は思わず自分の耳を疑った。今、「助けて」と言ったのか?

俺の頭がどこ位置にあるのかも分からないが、頭を抱える。

助けてほしいのはこちらの方だ。ここがどこかも分からないし、俺は自分の名前すら思い出せないから、今は聞こえてくる声だけが頼りだと言うのに。

一体こいつは何なんだ。



だが、声から得られる情報は言葉の意味だけではないことに気がつく。この声質と高さから察するに、恐らくこいつはまだ子どもなのだろう。それも女の。


理由は知らないが、こいつは今困っており、誰かに助けを求めているのだ。

耳をすましたら分かったが、時折しゃくり上げるような嗚咽や鼻を啜る音も聞こえる。泣いているのだ。



そういえば俺が初めて目を覚ましたときから、この子どもは泣いていたような。となると、一体どれだけ長い時間泣いているのか…。

いや、もしかすると俺が目覚めてからまだ数刻しか経っていないのかもしれない。何せ、この体は感覚機能を失っているため、時の流れが感じ取れないのだ。





あれ以来時折、あいつの声は俺の元へ届けられた。






「違う、私は………。どうして誰も分かってくれないの……」



「もう嫌だ。苦しい。辛い。なんで私だけこんな目に遭うの…」



「痛い、やだ!!お願いやめて!!誰か助けて!!」



「どうして私の声は………」





始めはどんな些細な情報でも逃すまいと集中して神経を尖らせていた俺だが、次第に馬鹿馬鹿しくなっていった。

こいつはいつも怯えているか、泣いているだけだ。俺に関わりそうな情報なんて、何も分かりそうにない。

何故か俺の耳には会話相手の声は聞こえないため、一体何が理由で泣いているのかは知る由もないが、時折聞こえる「痛い!」「やめて!」の悲鳴から、他者からなんらかの苦痛を与えられていることくらいは予想がつく。

まあ、それは俺にとって何も関わりがないことだから心底どうでもいい。




"声"に飽きた俺は、耳をすませるのをやめて再び思案の旅に戻った。




俺は一体誰で、どうしてこんなところにいるのか。

そもそも一体ここはどこなのか。

時が経つにつれ、朧げに思い浮かんでくるのは、






   【俺は、閉じ込められている】







という感覚であった。

己が望んでこの状態になったわけではなく、全くの不本意なのだ。理由は言えないが、とにかくそう感じるのである。

誰が何のためにどうして、という経緯については少しずつ思い出すのかもしれない。



……しかし不快だ。

閉じ込められている、と実感した瞬間からじわじわと体の内側を不快感が蝕んでくる。

俺の意に反して、何者が俺を閉じ込めた。それは過去の俺にとっては由々しき事態だったのではないか。どこの誰だか知らないが、この俺を閉じ込めるなんて………俺から自由を奪った奴は、必ず俺の手で……。



黒い感情に支配されていくのを感じていたその時、また耳にあの声が飛び込んできた。






「どうして私だけこんなことに………。自由になりたい…………」






………………"自由"。




それは今、俺が渇望しているものだ。

俺の中に一つの疑問がふっと浮かんだ。




もしかしてこいつは、"俺と同じように閉じ込められている"のではないか?

だからいつも泣いているのだ。


そうと分かれば、俺は急にこいつに対して興味が湧いてきた。今の状況には腹が立つが、同じ状態の人間がいると思うと少し溜飲が下がるのだ。


気分を良くした俺は、ふとある事に気がついた。



そういえば、俺には"声"もあったはずだ。

目も見えないし何にも触れられないので、てっきり聴覚と思考しか出来ることはないと思っていたが、考えてみれば、声を出すことにはまだ挑戦していなかった。


ぐすんぐすんと鼻を啜るような泣き声の主に対して、俺は話しかけてみることにした。




【おい、いつもうるさいぞ。いい加減、少しは黙りやがれ】




俺の苛立ちが伝わったのか、泣き声はピタッと止んだ。


その数秒後、恐る恐る、でも希望が滲むような声色が返ってきたのだ。







「だれ…?私の声が聞こえるの…?」

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