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パズルのピースを探して(後) 3

「あ……わたし、わたしは……」


「魔王、リコリスに何をした!?」


「リコ、最初は少し苦しいかもしれない。だがすぐに終わる」


 リコリスが頭を押さえ苦しんでいる。

 そのまま傍観するのはダンたちには我慢の限界だった。


 何が起きているのかなんてまるで分からないが、人間界で恐れられている魔王が仲間を傷つけているようにしか見えない。

 どう見てもリコリスは困惑し、苦しみ、何かに悶えている。


 ダンの背中の剣が抜かれると同時に、ヘレンが走り出しターシャの錫杖が光った。


 ダンジョン島で一目置かれる三人による同時の攻撃が魔王に迫る。

 リコリスの前で無防備に見えた魔王は、ターシャが足元から生やした拘束の鎖を覇気の一つで消滅させ、ダンの岩をも砕きそうな一撃を左手に握ったナイフ一本で受け止め、ヘレンの電光石火の薙ぎ払いを右手で掴んでしまった。


「落ち着け。お前たちの仲間は傷つけてはいない。見ろ」


 ダンとヘレンはその姿勢のまま、ターシャはオーブに次の魔力を込めたままリコリスを振り返った。


 彼女の瞳からは、今まで一度も見たことのない大粒の涙が零れていた。


「リコリス……?」


「か……いる。……かいる……カイルっ」


 魔王イェナはダンとヘレンの剣から手を離すとほっとしたように頷いた。


「リコリス、何が!?」


「大丈夫ダン。心配させてごめん。ヘレンもターシャも大丈夫だから武器を引いて」


 リコリスは涙に濡れたまま足元のサーベルを拾うと、丁寧にイェナに返した。

 イェナは受け取ると鞘に収め、そのままその手をリコリスに向かって広げた。


「再会は――」


「――抱擁に決まってるっ」


 イェナが膝を着き彼女と同じ高さになると世界で最も尊いものであるかのように強き(かいな)に閉じ込めた。

 ふわりと香る懐かしいミュゲの香り。


 リコリスの仲間が突然始まった逢瀬に驚いていると、どこからかピクシーが現れた。

 とんぼのような小さな羽を懸命に動かし光の粒を振りまきながら飛ぶ姿はダンジョンの沼地エリアでも見たことがある。

 恐らく女の子であろうその妖精は、口元に爪楊枝のような人差し指をあてると「しーっ」と言う仕草をした。

 そのまま手招きする。


「俺たちは退場しろってことか」


 ちらりと見たリコリスは魔王の巨躯の中で包まれたまま表情が分からない。

 分からないけど、魔王にしがみつくように必死に身を寄せるその姿はこれ以上の邪魔は無粋としか言えない雰囲気があった。

 そして魔王は目を閉じ何かに感じ入るように大事な仲間をきつく抱きしめている。


「大丈夫そうね」


「後でぜーんぶ教えてもらうのー!」


 三人はピクシーについてそっと部屋を後にした。

 

 透き通るような静寂の部屋で、固く身を寄せ合う二人だけが残った。

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