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パズルのピースを探して(後) 2

「リコリスに何をするつもりだ!」


「そう慌てるな。彼女に向ける剣はない」


「妙な動きをすれば魔王と言えど私たちも全力で抗うわよ!」


 イェナはふっと息を吐いた。

 その表情は、なぜかとても嬉しそうに見えた。


「仲間か」


「そうだ。俺たちの力が例え及ばなくても、仲間に危害が及ぶのなら戦う」


「剣から手を離すのー!」


「良かった。今のお前には仲間がいるのか」


 そう言うとイェナはその剣をゆっくりと抜いた。

 ダンらが警戒する中、イェナの手の中でくるりと剣が向きを変えると、柄の方がリコリスに差し出された。


 リコリスではなくダンが「なんのつもりだ?」と聞く。

 イェナはダンではなく固まったままのリコリスに答えた。


「リコ、剣を取れ。恐れるな。ここに足りないピースがある」


「どうしてそれを!?」


「心にぽっかり空いた穴があるのだろう? 足りないパズルのピースをずっと探していた。そうではないか?」


「そうだ……探していた……ずっとずっとダンジョンの中にある気がしてさ迷って……見つからなくてここへ来た」


「これが答えだ。リコ、剣を」


 リコリスがぎゅっと手を握ったまま差し出されたサーベルを見つめる。なかなか取ろうとしない彼女に、イェナは「頼む」と懇願した。


 魔王の中の魔王と呼ばれた男はどうしてこんな苦し気な瞳を向けるのだろう。


リコリスは自分がこの剣を取らねば彼に永遠にそんな顔をさせてしまうような気がして、ついに震える指先を剣に伸ばした。

 

 触れた瞬間押し寄せたものが自分の記憶であることは分かった。

 だが脳裏に浮かぶなどと言う優しいものではない。

 内側から爆発するように蘇る記憶に、彼女は一瞬鼓動が止まったのだと思った。


『可愛いから』

『――だ。勇者じゃない、―イル』

『再会は抱擁と決まってるだろう』

『二時間ぶりだな。元気にしてたか?』

『一人残してごめんな』

『胡桃の蓋は閉じておいた方がいいんだろ?』

『……リコ、俺の……希望』


 まるで電流を放たれたような勢いで過去の回想が流れる。

 そのスピードと量に驚いたリコリスは、カランとサーベルを取り落した。

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