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ゴーストインザルーム

作者:葦原 蒼紫
最終エピソード掲載日:2026/03/05
 私は、現実世界では誰からも見向きもされない「透明人間」だ。
 スーパーのレジ打ちとして理不尽な客に頭を下げ、無能な店長に怒鳴られ、ただ若くて愛想が良いだけの同僚の陰で、使い捨ての部品として底辺の生活を送っている。カビと下水の匂いが充満する六畳一間のアパート。それが私の惨めな現実のすべてだ。
 しかし、夜になりノートパソコンの電源を入れた瞬間、私は絶対的な権力を持つ「神」へと変貌する。
 SNSの匿名アカウント『Ghost In the Room』。そこは、私が高潔な批評家として、社会の不条理を裁くための玉座だった。
 私の最大の標的は、世間で持て囃されている大人気男性アイドルグループ「NONEL」。何の苦労も知らず、薄っぺらい笑顔で大金と称賛を搾取する彼らがどうしても許せなかった。私は彼らの動画を執拗に監視し、些細な言動を「パワーハラスメント」や「ファンへの搾取」といった正義の言葉にすり替え、猛毒のテキストとしてネットの海に投下し続ける。
 私の放った言葉はまたたく間に拡散され、数万人のフォロワーが私を教祖のように崇め始めた。私は有象無象のネット民を操り、見ず知らずの地下アイドルを「比較の生贄」として利用し、NONELを社会的に包囲していく。その圧倒的な支配の感覚は、現実の苦痛を完全に忘れさせる極上の麻薬だった。
 ネット上の炎上をさらに加速させるため、私はなけなしの全財産を投げ打って彼らの東京ドーム公演へと潜入する。すべては「口パク」や「ファン差別」の証拠をでっち上げ、彼らに決定的な破滅をもたらすために。
 何万人もの軍勢を率い、偶像を破壊する快感に酔いしれる私。だが、ネットの海で虚構の全能感に溺れ狂う私の背後には、巨大な権力と「法律」という名の恐るべき現実が、静かに、そして確実に迫っていた――。
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