〈二章アウトロ:後編〉ドパガキ・パニック?!-5
また一つの脅威が消滅していった、メイキョウ地方のオータムシティ……雲が数える程度ある青空の下で人々が今まで何か起こったのか把握できていないかのように、辺りを見渡していた……。
「あっ……あれ……? オレ達こんな所で……」
「ありがとう……イリル! スフィーリア!」
「お陰で、街全体の奴らは洗脳が解けたぜ!!」
セナとラッキーは私の元へと急いで向かい、笑顔で話していた……私はローデアの消滅の報告と同時に、先程の結界の中での出来事を詳しく話していた……。
「ローデアはもう来ることない……確か……見知らぬ誰かが、刀で断ち切ってたんだけど……」
「……他に誰かいたの……?」
「うん……黒い服の浮島人が突然表れて……時間が止まったかのようにね……あと、結界に入るとストップ・ドール族のおばば様に会えて、手伝ってくれた……」
「コマ子が言う、おばば様に……? まだいるのかしら……?」
私は突然として、出現した猫の人形を探しに、その場の周辺を探していた……しかし、渡り歩いていく人の姿ばっかりで、例の人形の姿がどこにも見当たらなかった……恐らく、結界が壊されて、外に出られた瞬間に帰っていったかと思われる……。
今回の件で、洗脳された人々の時間稼ぎに貢献したスフィーリアは、杖を片手にベンチへと向かって、腰を下ろした後、ため息をついた……。
「づがれだ~~……」
「寮母……すみません……俺が不覚を取ったばかりに……」
「本当に大変だったんだぞ……でも、みんなが怪我がなくて良かった良かった……」
スフィーリアは腰を下ろしたまま、オータムシティが穏やかに戻った姿を見て、明るい声で話した。その目の前に、最初に操られていた三人の少年が端末を開きながら話している……。
「はぁ……ひどい目に遭ったな……そうだ、おつかいまだだったな……でも、やっぱり『ツブヤキリンゴ』見足りないな……」
「帰って、『コーンティック』開こうっと、外って本当に危険だな……」
少年達は、疲れ切った表情でそう言いながら、去ろうとしていた……スフィーリアはすぐに立ち上がり、『少年達~!』と大声で引き留めた。
「そうやって端末ばっかり観ていると、やる気がなくなっちまうぞ。この便利となった世の中に、人々はつい、手頃な方を選びたがる……『楽なこと』と『楽しいこと』はまるで、天と地のように大きく違う……ギルドマスターって言っても通じないか……アタシの上司が口癖のように毎日ぼやいていた言葉なんだ……」
「……でも、オレ達は家でダラダラしている時間が一番楽しいし……」
「まずは、『達成感』が出てくる趣味を作るといいよ! 他の楽しい事を作れば自然にだらけずに充実した日々を過ごせるはずさ」
「達成感かぁ……ロボットアニメが好きで、プラモデルとか作ってたんだけど、最近は……」
少年は視線を逸らしながら、何故か集中が出来ない事をスフィーリアに相談する……。
「こういう時は、アタシに任せてくれ! 久しぶりにあのマジックを使うか……」
「あのマジックって……? 『大魔法使い』が言ってた『ティア・フィルドー』……?」
「なんだい? フィルドーの上位マジックを説明しようかと思ったのに……ローデアの記憶を観たようじゃ、説明する手間が省けるな。でも、違いは詳しくは分からねぇと思うから、使った方が早い!」
スフィーリアは杖を両手に振りかざして、温かみがある気がする呪文を唱えた……すると、地面から金色の光が立ち込め始めてきて、杖を上に捧げると――
「ティア・フィルドー!!」
「うわぁぁぁぁあ!!」「何なに?!」「なんだココは……?」
「普通のフィルドーとの違いは、複数人の記憶をベースに楽しい世界の結界を張ることができるんだ! 『大魔法使い』はこのマジックで授業をしたかったみたいだけど、難しすぎて辞めていたんだ……」
みんな大好きな、ゲームや食べ物の裏側には、手頃な娯楽では得られないような、物語がある……憧れのあのアイドルも、スポーツ選手も日々繋ぎ合わせた秘跡が、物を語る……。
人生はまるで、ガチャ……いや、ジェットコースターに例える方がいいのかねぇ……? 『当然』と『偶然』は、距離が遠く見えても案外と近い! 君だけの一つの『物語』を歩み通そう!!
何よりも重要なのは、自分の『物語』を楽しむことさ! あっ~~でも、常識やルールを守ることも大事だからね! 行き過ぎた自由は自分勝手になっちまうからな!
――こうして、オータムシティに一瞬のみだが、結界が包まれた……人々はスフィーリアの話を聴いて、目を輝かして、自分の生活を見直そうと、決意をしていた。
――そして、翌日……。
私達は睡蓮とスフィーリアと共に、フューチャーファイターズ、メイキョウ部隊拠点内の通信室に向かい、すぐさまに政治の役員である加江に連絡をして、『怪奇現象騒ぎ』について纏めた、レポートを提出した……加江は画面越しで深くお辞儀をした……。
「はい、確かに受け取りました。物凄く危険な目に遭わせてしまって、申し訳ございません……報酬を上乗せして、振り込んでおきます」
「いや……悪いのは全てローデアだから……」
「貴方様方は、もうじき浮島『TUKI』に旅立つのでしょうか……浮島諸島は、かつての地球の文明を遺した居住ユニットとなります……現代人にとっては、受け入れがたい場面が多く、希望して移住する者はほとんどいません……浮島諸島は『HANA』『TORI』『KAZE』『TUKI』の四つあり、その内『TUKI』は浮島諸島の中では最大で一番古い時代が遺されています……」
「やっぱり、大昔って感じかしら……ネットもテレビのない事が大きいのかしらね……」
セナは深く考えながらも、飛んでいた……ラッキーは鼻息を荒くしながら、足で耳を掻いていた……。
「フン! それにしても今回はあのゴミ魔法使いに振り回されてばっかりだったぜ!! あいつが操ったロボットにも本体にも、コントロールされちまったから!」
「本当に大変でしたね……そして……ストップ・ドール族の『おばば様』と名乗る方の一通のお手紙が来ているそうですよ。今すぐに送ります……」
加江は一通の手紙を私達の方へと、両手で渡しながら送ってきた……少し変わった柄の封筒を開けると、割と癖がないデザインの便箋が入っていた……。
「どれどれ~~?」
――拝啓
トキワタリ、この手紙を読んでいるってことは、政治の娘から届いて来たって事でいいんだよね。
ワシはローデアのフィルドーが壊れた後、勝手にいなくなった事はすまなかったね。
都会は人が多くいすぎたから、ワシにとっては、人形を通じてもちょいっと居心地悪かったな。更にストップ・ドール族の能力は薄々と知られなくなっていってるから、見つかると大騒ぎになりかねないと思ったからさ。
どうせ、また会ったら『あの時はありがとう』って言うつもりだろう? お礼は結構だよ。
今回の件を知ったのは、ワシの部屋にあるお気に入りの狐の人形が、ベッドの上に乗ってきて、自ら『お狐様』って名乗って、動き出した事で知ったんだよ。全く……誰だが知らんが、変な小細工をしてくれたもんだね……。
まぁ、それはさておき……メイキョウ地方が無事でよかったよ。これからのお前の活躍を期待してるからね。
コマ子にも宜しくって伝えておくれ。 ストップ・ドール族の『おばば様』
追伸:あっそうそう『黒魔導士』、あの狐が『大魔法使い』の代理として、こう言ってたよ。
「『コントロル』の騒動がなくなったら、お前にギルドマスターの座を継がせたかった……理由は私が解けなかった問題を誰よりも早く『解いた』からだ……」ってあのハゲ爺さんは、いっつもそう呟いていたけどさぁ……でも、重要なのはお前が心当たりがあるかどうかだな……。
スフィーリアはおばば様の手紙を読んで、少し切ない表情で、胸に手を当てていた……スフィーリアは瞼をゆっくりと閉じて、穏やかな声で話す……。
「あの時から、とっくに気づいていたのか……マスターは昔っから神経質だからさ、深い秘密なほど誰も話そうともしなかったからな……解散の件では止む追えず、打ち明けたって形でアタシに『ティア・フィルドー』を教えたと思う……」
スフィーリアは『大魔法使い』の顔を思い浮かべたのか、軽いため息をついた……そして、加江は次のスケジュールがあると再び深いお辞儀をしながら通信を切り、睡蓮は、時計を見ながらこう話した……。
「迎えの車がやってきたんで、私はそろそろ次のお仕事に向かいますね~。皆さんホンマにありがとうございました!」
私達は睡蓮を、フューチャーファイターズの入り口へ見送った。すると、『ノック・ゼクス』の社用車が停めてあり、ドアがスライドしながら開いていった……。
「それじゃあ、次はノック・ゼクスのみんなでメイキョウ地方に来てね。なるべくプライベートでね」
「は~~い! 引き続き、『ノック・ゼクス』のご利用をよろしゅうお願いいたします!」
睡蓮は手を振りながら、社用車へと乗っていった……私達も、しっかりと手を振った……。
「あ~~、五百子ちゃ~~ん? どないしたん?」
「スイレン~~チミが出掛けてから、オペレーター室は無関係な事で対処しづらくなってるって、サンロクさんが言ってたよぉ~~。長引いたのはトラブルとして見逃しているけどさぁ……急いで帰って来てくれぇ~~……」
「今急いで帰っとるで……時間は有限やからな……」
「……? 今回はちょっとアンニュイだな~~……どしたの?」
「私がおチビちゃんだった頃な……『キャリアウーマン』になりたいて、言うてたんやけど、ようわからんカルト宗教で修行して来いと反対されてたんや……んで、私が騙されていた事に気づいてな、ショック受けてたんやけど……再会した母に言うと、『今までの時間は無駄やない』て励ましててな、改めて自信を持って勉強して、ノック・ゼクスに入ったこと、今でもよう思い出すなぁ……」
「いい話だねぇ~~……オデはここに来る前、友人達に勧められるがままに入った会社は、マルチ商法を沢山していた会社だと判明してさぁ……借金地獄だったし、寮はまるで牢屋みたいだったし……パワハラ上司がうざかったし、大変だったなぁ~……んで、我慢の限界になったオデは、コッソリと証拠を集めて、裁判に打ち勝ちマルチ商法の会社を潰したんだよ~~……」
「ごっつすごいな~……後は確か、才能が見破られて、山麓さんにスカウトされてたんやっけ」
「そ~そ~……でも、最初は驚いたよぉ~~眠たがりなオデがエリートな大企業に入っていいのかって……でも、後ほどしたいことが分かってきたするよ~『誰かを守れる、ビジネスをしたい』ってねぇ~~……」
社内車は、ノック・ゼクスの本社があるレイト地方のアサガオ府へと向かいに、高速通路の方向に走っていったのだった……。
私は、セナとラッキーを連れて、次の旅に向かう、浮島諸島が一つの『浮島『TUKI』』へと旅立つ準備をすることにした……一緒にいた博士との記憶はどのようにして蘇るのだろうか……。
時間は有限で、やる気が出ないからと言い分でだらけて、端末をばっかり使ったりせずに、時間の使い方を上手く有効に使えるように見直すのもいいかもね。
ここまで読んでくれて、本当にありがとうございます!
浮島『TUKI』ではどのような物語になっていくのか……。
お楽しみに!




