〈二章アウトロ:後編〉ドパガキ・パニック?!-4
電気屋の大型ビジョンが見える景色から一転、またよく分からない場所へと連れていかれてしまった……。
また、ローデアの『フィルドー』だろうか……それに、雰囲気がホラー映画に出てきそうなおどおどしている雰囲気だ……閉じ込められているのがウルだったら、どうなっていた事か……とにかく閉じ込められている以上、この結界を慎重に歩いていくしかない……。
目の前に、木製の扉を力一杯押したら、ポツンと小さな、魔法使いの帽子を被った猫の人形が、私の前へと歩いてきた……。
――「お前が孫の言う『トキワタリ』って奴か? この様子じゃあ、困ってるようだね……」
「……喋る……人形……」
ぬいぐるみは愛くるしい見た目とは裏腹に、高齢者の女性の声で喋ってきている……私はミライ大学にいる学生が言っていたあの人の事を思い出した……。
「あんたは……ひょっとして、コマ子が言ってた、『おばば様』……? ストップ・ドール族の中にギルドメンバーがいたの……?」
「いや、いないどころが敵視してたやつが多かったよ。ワシと『魔法使いギルド』のマスターとは腐れ縁ってやつさ……ワシは当初、『戦闘法人』で働いてたからね……そこで知り合ったんだよ」
コマ子の親族関係にあたる、ストップ・ドール族の『おばば様』は向かいにある次の扉の方に向きながら歩いて行った……。
「ちょっとばかし、手伝ってやろう……こんな退屈でつまらない舞台をすぐにでも出られるようにな」
私はおばば様についていきながら、次の扉のドアノブを押しながら開けていった……開けた先には、ドロドロした壁画が、私に向かって喋りかけてくる……この声からしてローデアだが……。
「『悲劇』へようこそ……トキワタリよ……」
「……ローデア!」
「スフィーリアがよっぽど大事なら、意地でもここから抜けてみるがよい……ただし、私に共感できるチャンスをやろう……これから映る事は、全て私の記憶だ……」
ローデアは何も変哲もない場所に、ぬいぐるみを配置した……そのぬいぐるみから、こだまして声が聞こえてきた気がしてきた……。
「ほう? お前の過去を人形にして再現するなんてのう……? 仕方ないから、見てやるか……」
「あんな奴が、次のギルドマスターになるなんて、どうにかしているぞ!」
「いっつも、傲慢で思いやりがないし、マジックを使って他のメンバーの心を操るやつが……そもそも何でいんだ……?」
「あいつは、ゴネで入団したってよぉ……『占星術師』の遠い親戚だと言っといてな……」
「本当か……? あの不思議なあの人の親戚だと誰が想像できるんだが……」
「ああ……せめて、『黒魔導士』や『赤魔導士』、歴史の教科書に載っていた、『金剛 明華』様のような奴が……」
「『金剛 明華』……? どうやっても戦士になれなかった人物だよな……」
「そうなんだ……俺は明華様の努力家の所や、八方塞がりでもめげない所に憧れているんだ! 二人の戦士にも認められたってさ!」
「はぁ……ローデア、昔っからこれじゃあ……同僚に叩かれるわけだねぇ……ワシの親戚ですらストップ・ドール族のイメージを良くしようと必死なのにねぇ……」
おばば様は疲れがたまったかのような態度で、ローデアの経歴について愚痴をこぼしていた……そのまま、次の部屋に行くと置物の人形二つが向かい合って置いてあったのだ……。
「ああ、『大魔法使い』と当時の『戦闘法人』の連中が話している場面だね……あのハゲ爺さんは無茶しすぎて、そろそろ座を降りようかと検討していたんじゃないだろうかね……」
「おばば様は、この時どうしてたの……?」
「ワシはあの時、映画を作ってくれってせがまれて、仕方なく留守にしていた頃合いだったかねぇ……」
「マスター……無事で何よりですが……もう少し、ご自身のお体をご自愛下さい……」
「おう、心配をかけてしまい、申し訳ない……そろそろ私もこの年齢だ……戦いはフューチャーファイターズが勝って来ているし、マジックユーザーを望んでなる若者もどんどん減ってきておる……魔法使いギルドの幕を降ろそうかと思うんだ……」
「マスターがそのような判断をなさるのは珍しい……しかし、前におっしゃってたギルドマスターを継ぐ件についてですが、万が一続くとして誰をご氏名したのでしょう……?」
「この便利となった世の中に、人々はつい、手頃な方を選びたがる……『楽なこと』と『楽しいこと』はまるで、天と地のように大きく違う……今抱えているこの『問題』は、私にすら『解け』なかったのだ……二つ目の質問については、そうじゃな……『黒魔導士』に任せたと思う……えこひいきするつもりはないが、この怪我が良くなったら『ティア・フィルドー』をコッソリと伝授しようかのう……私ですら手こずったマジックの一つだ……」
この会話から聴いて、『大魔法使い』が解けなかった問題について、何なのかが分かった……次のギルドマスターはスフィーリアに継がせたかったんだ……確かに、彼女はずっとマジック一筋で、楽しようともせずに見極めてきたから、正式にギルドマスターになる資格があった……。
「トキワタリ、お前は今『黒魔導士』と共闘している所だろう? この会話の内容を覚えて、任務が終わったらあいつに話してあげな」
おばば様は鼻で笑いながら、スフィーリアを褒めていた……その後、女性の人形二つが向かい合って、声がこだまをしていた……。
「ローデア……? 私が出かけている間に、一体これまで何をしてきたのよ……? あなたの評判は物凄く酷いわよ……」
「何故だ……ただ、完璧な私に指摘して来たから、黙らせてやっただけだぞ? それに、私の命令も背いたからマジックで……」
「はぁ……あなたはいつも独りよがりなのね……物心着いた時から、ずっと弱い子をいじめて……近所の犬が死んでしまうと、喜びを見せて……たまにはいいことをするかと思ったら、それは他人の手柄だったって……親戚だからっていい、これは言いたくないんだけど……子供の頃から、最悪な人間だったわね……あなたが改心して、第二の人生を上手く歩めると信じて入れたのに……」
「なら、尚更メンバー全員に私の有能さを向き合わせる機会ではないか……!」
「それが、酷いって言ってるじゃないのよ……ギルドマスターから言っていたわ……『生術士』ローデア……あなたを今日付けで追放するって……今朝、あなたに対する逮捕状が『黒魔導士』から届いたって……禁令マジックの一つ、『コントロル』を日常的に使うからよ……」
「はぁ……? この私を追放する気か……? これからのギルドは、私抜きではもう破滅するぞ……?」
「悪いけど、魔法使いギルドはもうじき、幕を閉じるって、マスターが言っていたわよ……そして、『黒魔導士』や『治癒士』達で事足りているって……『主のような正を乱す魔法使いは、用済みだ……しばらくの間、牢屋で自分に何が足りていないのか自身に問いただすといい』って怒っていたわ……」
「やれやれ……インチキばっかりしているから、そんなことになるんだよ。さっさと奥に行こうかねぇ……」
おばば様は呆れながらも、結界の奥へと進んでいく……すると、最後には人形じゃなくて、残像がそこにある……比較的新しい記憶だろうか……。
あれ……? 水晶を向かいにあの立っている女性って見覚えがあるような……?
「今、メイキョウ地方の刑務所で脱走中の『四季目 めあり』かい? フューチャーファイターズの拠点で泥棒して捕まったが……一体なんでローデアと一緒にいるのかねぇ……?」
「アンタをここから出してあげる代わりに、条件を出すって『あのお方』が言っていたわ。『第二の地球』をどうやってでも支配する事……ってそれしか言ってなかったけどね」
「フン……あのギルドに復讐する為なら、何だってする! 特に、『黒魔導士』は私をどん底に叩き落した……!」
「はい……ウイルス因子を上手く使って、成し遂げてみなさい」
「……!!」
「何で一般人の分際でウイルス因子を創り出せてるんだい……?」
残像には、確か……ニュース番組に出て来た『四季目 めあり』だったはず……フューチャーファイターズの拠点に不法侵入したことによって懲役を喰らったはず……。
見間違いじゃなきゃ、ウイルスでも何でもないのにウイルス因子を繰り出していた事だ……どうしてか調べたいところだけど、今はここから出ることの方が先だ……。
そして、最後の部屋の扉を開けると……後ろ姿は、ヘッドドレスをしている女性が力なく座っていた……まるで、呪いの人形みたいな姿で、ローデアの声が聞こえてきた……。
「これが……私の『悲劇だ』……でも、『あのお方』は私の復讐のチャンスを与えた……! そして、私はウイルスとして生まれ変わり、『第二の地球』を征服することに全力を尽くした……! 後は、魔法使いギルドを殺せば、大満足だが……最初は招かれざる客人を始末するとしよう……」
ローデアは人形のような仕草でゆっくりと立ち上がり、振り返った……! おばば様はローデアに対して目を尖らせながら言う……。
「ローデアが言う悲劇ってこれかい? ワシにいわせりぁ、自業自得にしか思わないね。これを題材に映画にするとしても、だーれも喜ばないね……」
「はぁ……? ストップ・ドール族の分際で何を言うか……!!」
「人の気持ちに寄り添う事が出来ない奴は、『共感』する事を得られるのはそもそも出来ないだろうねぇ。物語の主人公は、応援したくなる要素が大切なんだよ……『無能な少年が夢に向かって進む』とか『完璧な生徒だけど、感情が物凄く乏しい』とかさぁ……人は『一長一短』という言葉が必ずしもあるんじゃよ」
「……知らぬ!!」
真顔ながらも、怒りを露にしたローデアは、いきなりおばば様に攻撃を仕掛けた……! すると、おばば様は防御マジックで防いだ後、『Ice』タイプのマジック、『ブリズ』を放った……。
「トキワタリ、今だよ……!」
「うん……チャージ!」
私はすぐさまに、ライトシューターで『Aqua』タイプの力を蓄えて、ローデアに攻撃を放った……すると、『氷結』反応が起こって、ローデアの服装が凍り付き、動きが鈍くなっていた……すぐに、片手剣に持ち替えて接近戦を仕掛ける……。
「せぇぇぇぇい!!」
「ザンダ!!」
ローデアは『Thunder』タイプのマジックを放ってきて、抵抗をする……元魔法使いギルドだけあって、強い……私は指先が痺れながらも立ち上がり、再び攻撃を仕掛けるが――
「フフフフフ……ハハハハハ……!!」
なんと、ローデアは魂になっていた……! 魂となっていたローデアは、高速で移動をして、すぐに背後から人形の姿へと戻り、杖を振り下ろす……!
私はすぐに横に回避をして、片手剣を構えた……そして、再びローデアは高速移動をしながら攻撃を繰り返す……魔法使いギルドについてはあまり深いかかわりはないけど、絶対に汚名は着せたくないと感じ、私はスフィーリアとの会話から出て来たあの言葉を思い出した!
――「こうして……アタシはマジックの勉強に励んでいたんだ……辛くて辞めたいと思った時もあったが……何とか試験を突破して、『魔法使いギルド』に加入できたんだ……その上で、女性初の『黒魔導士』の肩書きを継いだって両親も親戚みんな大騒ぎだったよ!」
「今だ……!」
スフィーリアのあの時の熱意を思い出して、背後から表れたローデアに対して、私はすぐさまにローデアが振り下ろす一撃を盾で弾き飛ばした……そして、その瞬間に『Light』タイプの力を片手で放って、ローデアに反撃を仕掛けることに成功した。
「うわぁぁぁぁあ!!」
ローデアは壁に張り付いて、身動きが取れない状態でいた……すると、おばば様は前に出て――
「これで、もう分かっただろう……? そうやって、なんも努力せずに傲慢なことをばっかりやってるからじゃ」
「いや……まだだ……! どうして、マスターは私を追放したのだ……こんなにどこよりも完璧なはずの私よりも……あんなのよりも下なんて……!」
「ローデア……スフィーリアはこれまで、マジックに全てを捧げてきてたんだよ……そのお陰で、サブマスターまで昇格できた……禁令マジックなんか使わずにね……そして、スフィーリアは次のギルドマスターに継ぐ資格を得た……」
私はスフィーリアのマジックに対する熱意を、真剣に口で伝えていった……そして、壁に張り付いてるローデアに気になることを話した……。
「……あんたの記憶の中で、これは気になってたんだけど……『あのお方』って誰……?」
「知らぬのか……? 知能のシャドウ・ウイルス……『シャドウ・エイズ』の名を……!」
「……」
ローデアの口から、新たなるシャドウ・ウイルスの名前が告げられていた……! ローデアは最後の力を振り絞って、マジックを使おうとしている……!
「フン……こうなったら……トキワタリのイリルとやらよ……お前の全てを私に捧げろ……! 嫌なら道連れとなるがいい……!!」
「やれやれ、取り乱してんのかい?」
「戯言はもういい……!」
ローデアは、地面に向かってマジックを放った……私もおばば様も足にはツタのような物が絡み合い、身動きが取れなくなっていた……!
「くっ……! 身動きが……」
「うははははは!! どうせ死ぬなら、スフィーリアよりも後にしたかったが……まぁいいや……!」
禍々しいオーラを放っていったローデアは、強力なマジックを放とうとしていて、道連れにしようとしていた……! ところが――
(えっ?! 今度はローデアまで……どうなっているの……?)
「心ひて 血の刃を手に 支えては 世よ暗がりし 地を揺るしがな」
結界の中は、辺り一面、灰色になっていた……それに驚くことに、結界には、私たちの他にもう一人誰かがいた……! あれは……浮島『TUKI』で見かける黒い服装をしていて、腰に付けていた刀を抜き、消えかかっているローデアに向かって、刀を振り下ろした……!
「解除……!!」
「なっ……!!」
謎の男性が、この一言を告げると、再び結界の中は色が付いて『Dragon』タイプらしき衝撃破が、ローデアに向かって放っていった……!
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!! まだ、あいつとの決着がぁぁぁぁ!!」
ローデアは、謎の男性の応戦により消滅していき、衝撃破は結界の中にも切り裂かれていって、水に流されていく絵の具のようにどんどん落ちていく……。
そして、見覚えがある街並みの青空の下にて、人々は少しづつ目を覚ましていった……そして、見知らぬ男性は私に対して、微笑みを見せながら、何も告げずに一瞬で去っていった……。
「あっ……行っちゃった……」
辺りを見渡すと、スフィーリアが息を切らしながらも杖を片手に持ち、人々はどうしたのかと戸惑うばかりな反応を示した……。




