第九十九議席の古地図師と、零番目の乗客
最終エピソード掲載日:2026/10/31
毎晩午前零時、夢の中の「白亜の円卓」に九十九人の男たちが集まる。
顔も名前も同じ『レオン・ヴァイス』。十年前の大惨事となった列車事故に偶然乗り遅れて命拾いし、別々の歴史へと枝分かれした九十九通りの「俺」たちだ。
天才物理学者の一番、裏社会を牛耳る十三番、世界的ピアニストの四十二番。
あの日、同じ列車に乗っていた幼馴染の少女・イリスを失った痛みを抱えながらも、やつらはそれぞれの世界で得た知識を交換し合い、ちゃっかり甘い汁を吸って生きている。そして末席の七十四番――しがない古地図修復師の俺だけが、いつも書記係として隅で羽根ペンを走らせていた。
やつらは皆、そう信じ込んでいる。
円卓にひとつだけある一度も使われたことのない空席――『零番』の主だけは、あの日列車に間に合ってしまい、イリスと共に谷底へ落ちて死んだのだと。
……悪いな、俺は死んでなんかいない。
十年間、暗闇の向こう側からずっとお前たちを観察していた。お前たちがなぜあの日、九十九人揃いも揃って都合よく列車に乗り遅れたのか。なぜ毎晩この円卓で繋がっているのか。その本当の理由には、天才の一番すら気づいていない。
さあ、十年の猶予は終わりだ。
今夜、俺はお前たち九十九人の存在を、ひとりずつ「最初からいなかったこと」にして消去していく。すべては、あの日失われたものを奪い返すために。
俺の計画は、誰にも止められない完璧なはずだった。
円卓の末席でただ議事録を取っていただけの、一番無力で冴えない「七十四番目の俺」が、次々と仲間が消滅していく絶望の中で、俺すら見落としていた『ある真実』に気づくまでは――。
顔も名前も同じ『レオン・ヴァイス』。十年前の大惨事となった列車事故に偶然乗り遅れて命拾いし、別々の歴史へと枝分かれした九十九通りの「俺」たちだ。
天才物理学者の一番、裏社会を牛耳る十三番、世界的ピアニストの四十二番。
あの日、同じ列車に乗っていた幼馴染の少女・イリスを失った痛みを抱えながらも、やつらはそれぞれの世界で得た知識を交換し合い、ちゃっかり甘い汁を吸って生きている。そして末席の七十四番――しがない古地図修復師の俺だけが、いつも書記係として隅で羽根ペンを走らせていた。
やつらは皆、そう信じ込んでいる。
円卓にひとつだけある一度も使われたことのない空席――『零番』の主だけは、あの日列車に間に合ってしまい、イリスと共に谷底へ落ちて死んだのだと。
……悪いな、俺は死んでなんかいない。
十年間、暗闇の向こう側からずっとお前たちを観察していた。お前たちがなぜあの日、九十九人揃いも揃って都合よく列車に乗り遅れたのか。なぜ毎晩この円卓で繋がっているのか。その本当の理由には、天才の一番すら気づいていない。
さあ、十年の猶予は終わりだ。
今夜、俺はお前たち九十九人の存在を、ひとりずつ「最初からいなかったこと」にして消去していく。すべては、あの日失われたものを奪い返すために。
俺の計画は、誰にも止められない完璧なはずだった。
円卓の末席でただ議事録を取っていただけの、一番無力で冴えない「七十四番目の俺」が、次々と仲間が消滅していく絶望の中で、俺すら見落としていた『ある真実』に気づくまでは――。