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不可解な空席
なぜ眠っている間のわずか一時間だけ、こうして同じ空間で意識を共有できているのかは誰にもわからない。ただ、俺たちはこの夢の集会を『定例会議』と呼び、互いの世界で得た知識――株の値動き、新薬の化学式、未発表の楽譜、あるいは政変の裏情報――を交換し合うことで、それぞれの世界でちゃっかり甘い汁を吸ってきた。
古地図の修復技術くらいしか持たない俺は、この互助会に提供できる華々しい手札がなく、いつも末席で書記係を押し付けられていたのだ。
だが、俺はこの役目が嫌いではなかった。他の九十八人の俺たちが語る「もしもの人生」を聞きながら、羽根ペンを走らせるのは悪くない暇つぶしだったからだ。
少なくとも、昨日の夜までは。
その夜、眠りに落ちて白亜の円卓に目を開けた瞬間、俺は息を呑んだ。
静かすぎた。
いつもなら九十九人の俺たちが我先にと怒号や笑い声を響かせているはずの空間に、凍りつくような沈黙が落ちている。
それだけではない。
黒曜石の円卓を囲んでいた九十九脚の椅子のうち、実に九十二脚が、まるで最初から存在しなかったかのように冷たい石の塊へと変わり果てていたのだ。




