↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第九十九議席の古地図師と、零番目の乗客  作者: 沼口ちるの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/4

時の劇場

「……なんだ、これは」

俺は震える手で自分の椅子から立ち上がった。

広い円卓に残っているのは、俺を含めてたったの七人だけだった。

一番の物理学者、八番の将軍、十三番のマフィア、四十二番のピアニスト、そして数人のレオン。誰もが血の気を失った顔で、石の塊になった隣の席を見つめている。

「おい、一番! これはどういう冗談だ! 他の連中はどうした、寝坊か!?」

十三番が葉巻を床に叩きつけて怒鳴った。だが、いつもなら冷静沈着な一番の物理学者が、眼鏡の奥の瞳を激しく泳がせ、唇をわなわなと震わせていた。

「寝坊なんかじゃない……消えたんだ。いや、最初から分岐しなかったことにされている!」

「なんだと?」

「さっき、俺の目の前で五十六番が消えた。眠りから覚めた時のフェードアウトじゃない。あいつが座っていた椅子ごと、歴史の記録から削り取られるみたいに砂になって崩れたんだ!」

一番の言葉が終わるよりも早く、悲鳴が上がった。

「う、うわあああっ!?」

声を上げたのは、四十二番のピアニストだった。

彼が差し出した両手の指先が、まるで古い写真のインクが日に焼けて褪せるように、半透明に透け始めていたのだ。

「待て、俺の指が! 感覚がない! 今夜は王都の歌劇場でリサイタルがあるんだ、こんなところで消えてたまるか!」

四十二番は必死に円卓にしがみついたが、その手は黒曜石の天板をすり抜けた。足元から光の粒子となって崩れていく中、彼は虚空を見つめて何かを思い出したように目を見開いた。

「時計が……! あの日の駅の時計が、動いてる……っ!」

その言葉を最後に、四十二番は塵となって掻き消えた。後には、背もたれのない不格好な石塊だけが残された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。