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十二秒

作者:久賀ラトル
最新エピソード掲載日:2026/10/23
居間の本棚の上のカメラは、部屋の中で何かが動くたびに、十二秒ずつ撮って残しておく。
動くものは、猫のムギしかいないはずだった。

母の遺した十七歳の猫を見守るため、三輪は昼休みに録画を見るのを日課にしている。一覧のいちばん下には、毎朝、出がけの自分が一件いる。流しで水を一杯飲み、痛めた左の手首を右手でさする背中。

ある日の一覧に、午後一時五十二分の一件があった。
流しの前に、灰色のカーディガンの背中が立っている。うつむき、右手を口元へ運び、手を下ろして、左の手首をさする。三回。
今朝の自分と、何もかも同じだった。手にコップが無いことを除いて。
その時刻、三輪は会社にいた。

駆けつけた警察官は、部屋には誰もいないと言った。
その夜、三輪は録画に並ぶ自分の背中を、一件ずつ開いて確かめた。
背中だけでは、どれが自分なのか、分からなかった。
一
2026/10/21 21:00
二
2026/10/21 22:00
三
2026/10/22 20:00
四
2026/10/23 23:00
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