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神枷を宿す少年は、大切な人を守るため剣を振る  作者: なごやかたろう
神枷

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16/17

神枷-06

 眩い光が、ノアの視界を埋め尽くす。

 何も見えない。

 何も聞こえない。

 ただ、身体だけがどこかへ引かれていく。

 遠くから、あの声だけが聞こえた。


「目覚めよ。」


 その一言を最後に、白い世界は砕け散った。


 ◇ ◇ ◇


「……っ!」


 ノアは大きく息を吸い込んだ。

 湿った土の匂い。

 木々を揺らす風。

 鳥の羽ばたき。

 森の音が、一気に耳へ流れ込んでくる。


「はぁ……はぁ……!」


 夢じゃない。

 森だ。

 さっきまでいた場所。

 目の前には、黒い獣の巨大な前足が、あと指一本分という距離で止まっていた。

 時間が止まっていたかのようだった。


 だが。

 次の瞬間。

 黒い獣の瞳が、ゆっくりと細められる。

 ――来る。

 ノアは反射的にリリアをかばうように前へ出た。

 その瞬間だった。

 胸の奥が、ずしりと重くなる。


「……え?」


 身体から力が抜ける。

 立っているだけなのに、膝が震えた。

 息を吸うだけで苦しい。

 腕が鉛のように重い。

 まるで身体中の力を、誰かに吸い取られたようだった。


 神枷(しんか)

 その名が、胸の奥で静かに響く。

 契約は終わった。

 代償は、もう始まっている。


 ノアは左手首を見る。

 さっきまで刻まれていた紋様は見えない。

 けれど、そこには確かに何かがある。

 熱を帯びた感覚だけが残っていた。


「ノア……?」


 背後から、震える声。

 リリアだった。

 涙で濡れた瞳が、ノアを見つめている。


「……大丈夫。」


 そう言おうとした。

 しかし、声がうまく出ない。

 身体が重い。

 さっきまで握れていた折れた木剣でさえ、持ち上げるのがやっとだった。

 これが……代償。

 その時。

 黒い獣が、再び前足を振り上げる。

 巨大な爪が、二人を覆う。

 リリアが小さく悲鳴を上げた。


「ノアっ!」


 その声を聞いた瞬間だった。

 ノアの胸の奥で、何かが弾ける。

 ――守る。

 その一つの想いだけが、世界を満たした。

 カチリ。

 どこかで、鎖の外れる音が響いた。

 黒い獣の紅い瞳が、わずかに見開かれる。

 そして――。

 ノアの左手首に、黄金の紋様が一瞬だけ浮かび上がった。

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