↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/52

第51話 無能として追放された王女は虚栄に満ちた世界を壊して高らかに笑う

「完全勝利、ですの?」


 イリアスはカードに手をかける。

 セラフィナも大火槍を弐式蒼炎に変化させ、油断なく間合いを計る。


「あぁそうだ。我がこの世界で達すべき目標はすべて達した。後は次の世界に行くだけだが、少々時間が掛かる。折角だから、我が目的を話してやろう」

「……必要ありませんわ。なぜなら、お前は今ここで、――殺す」


 イリアスはカードを取り出し、発動を宣言する。


「Scientist(かがくしゃ) 正位置<観察者の瞳> 対象は虚ですわ」

「なぜそのカードが完成した? 貴様に対して我が何度も試したにもかかわらず、そのカードは完成しなかったというのに……」

「……言ったはずですわ。あなたはここで殺すと。そして、見えましたわ。あなたの持つカードのことが」


 イリアスは抜刀し、刀を返さずに構える。

 体勢を低くし、いつでも飛びかかれるように足に力を溜める。


「……くっ!! ならば、『Injustice(ふせい)』<正位置>偽罪付与。我が許しを得ずに動いた場合に、最も大切な者を処す」

「Scientist<逆位置>論理(フェイルド)破綻(ロジック)。その効果は無効。『いつ』『どこで』『誰が』『なぜ』『どうやって』が定義されていませんわ」

「なぜ、こんな剣と魔法の世界にやってきてまで5W1Hを聞かねばならぬ」

「……その返しで確信いたしましたわ。あなた、日本人ですのね」

「……っ!!」


 図星を突かれた様子の虚は思わず黙る。

 イリアスは続ける。


「『現場』で『現物』を見て、嫌というほどに『現実』を知ってきましたの。――お前を殺してすべてを終わらせる」

「……甘い。我にはまだカードが21枚もある。そして、お前から奪い取れば22枚すべてがそろう。――奪わせてもらうぞ」

「こんな物、いりませんわ。返すので受け取ってくださいませっ!!」


 イリアスは虚に向けてカードを投げつける。

 そしてセラフィナに向けて叫ぶっ!!


「セラっ!!」

「一切合切すべて等しく焼き尽くせっ!! 大火槍!! 白焔(びゃくえん)っ!!」


 超高温に達し、不可視の炎となった大火槍の刺突がイリアスの投げたカードを襲う。

 その一撃は確かにカードを捉えた。

 不可視の炎が「Scientist」のカードを包んだ。


「……無駄だ。そのカードは破壊することも、汚染することもできない。その程度の炎で燃えるものかっ!!」

「――えぇ、知っていましてよ」

「っ!!」


 イリアスが虚に肉薄(にくはく)する。


「黒衣流。送り灯籠。――特式、遣(や)らずの雨(あめ)」


 常であれば、返す刀で放つ必殺の袈裟斬り。

 しかし、その一撃は左足を引いて唐竹割りへと変えられる。

 確実に相手の脳天を叩き割り、殺すための技。

 虚はその攻撃を「Alive」のカードで受け止め、飛びすさって距離を取る。


「……カードを破壊しようとしたのはブラフ。本命は我に近づいて一撃を加える事か」

「えぇ。あなたを殺せばすべてが終わるのですから当然ですわ」

「面倒だな。『Alive』が使えれば貴様など悠々と殺せるというのに」

「あら、どうやら何か使えない条件があるようですわね。『観察者の瞳』ではそこまで見えませんでしたわね。――ゴミみたいな力(ちから)です事」

「……」


 虚は一枚のカードを取り出す。

 対するイリアスは杖を突くように刀を構えた。


「Separate(べつり)正位置<悪縁の断絶>対象はイリアス・ケセド・ヴァルハライト。カード名はScientist。Scientistの所有権を我に移せ」


 虚の元に「Scientist」のカードが飛んで行く。

 そのカードを掴もうとしたところで、イリアスが動くっ!!


「黒衣流っ!! 飛燕っ!!」


 足下から伸ばされた腕へと向かう斬撃。

 斬られるのを嫌がった虚は思わず手を引っ込めた。

 イリアスは刀を回転させ、虚の目を斬り裂く一撃を放つ。

 後ろに下がり斬撃を回避したが、目の下に僅かに斬り傷をつけた。

 虚が反撃に出ようと前進したところに、逆袈裟の一撃が襲う。


「くっ!!」

「……しぶといですわね」


 虚は「Scientist」のカードで、その斬撃を受け止めている。

 しかし、その肩は不自然に下がっている。


「斬れてはないようですが、骨折はしているようですわね」

「……この人斬り包丁ごときがっ!!」

「違いますわ。この刀は聖剣。銘を『凱旋丸(がいせんまる)』と言いますわ」

「それがどうしたっ!!」

「――お前の力ではない力でこの世界に流れ来た一人の武士が、いつの日か日本に戻ることを夢見てつけた銘だっ!!」


 イリアスは距離を取る。

 虚は小さく笑う。


「……イリアス・ケセド・ヴァルハライト。いや、入巣京よ。ここでの小さな勝利は貴様にくれてやろう」

「いりませんわ。ここで終わらせますもの」

「……残念ながら、時間のようだ。――行くぞ、アイ」


 虚の頭上に空間の裂け目が生まれる。

 しかし――。


「……ぐっ!!」


 イリアスが最高戒告官と戦った際に、投げ込んだ短剣が空間の裂け目から落下してくる。

 そして虚の左肩を貫いた。


「あなたは人を利用することだけ考えてきた。だから、こうして人に助けられてきた私に負けそうになっているのですわ。――人の執念を舐めるな」

「……うるさいぞ」

「あはは~。そろそろ面倒になってきたから行くね~。ばいば~い」


 アイの剣呑(けんのん)な雰囲気を壊す軽い調子。

 

「――めんどくさっ」


 アイはそう吐き捨てる。


「待てっ!!」


 入巣京も、その空間の裂け目へと飛び込む。

 背後からセラフィナの「お姉様っ!?」と言う声が聞こえた。

 空間の裂け目は閉じ、返す言葉は届かない。

 しかし、それでもイリアスは告げる。


「行って参りますわ。セラフィナ」


 イリアスは少し先を行き、姿を消した虚に向けて宣言する。


「虚。あなたの造った世界(カード)は私が壊しますわ。せいぜい楽しみにしていてくださいまして!!」


 そしてイリアスは声高らかに笑った。


(了)

ご愛読ありがとうございました。

もしよろしければ、作品の評価をお願いします。


PS

新作投稿開始しました

ひたすら死んで強くなるっ!?~死ぬたびに「能力ガチャ」を引ける俺、無限蘇生で最強を目指しますっ!!(なれるとは言っていない)~

https://ncode.syosetu.com/n8460ms/


こちらも、もしよろしければお読みください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。