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■第8話 ご都合クオリティと飛ぶ斬撃

お読みいただきありがとうございます!

本編スタートです。



翌日、僕は意気揚々と東門のさらに先、『岩鳴りの谷』へと足を踏み入れた。


切り立った岩肌が続く荒涼とした景色。僕はいつものようにポーションを煽り、気合を入れて魔物を待った。


最初に現れたのは『はぐれゴブリン』だった。醜悪な顔と棍棒を持ったファンタジーの定番モンスターだ。角ウサギよりは力が強く凶暴だったが、動きは単調だった。二桁に乗ったステータスと、効果の上がったポーションのバフがあれば、攻撃のパターンさえ掴んでしまえば結構楽に倒すことができた。


「なんだ、ゴブリンって意外と大したことないな」


順調な滑り出しに思わず笑みがこぼれたが、問題はもう一つの魔物の方だった。

バサバサッ! と不気味な羽音を立てて上空から襲いかかってきた『大牙コウモリ』である。


「うわっ、危なっ!」


急降下してくるコウモリを躱し、カウンター気味に鉄剣を振り上げる。しかし、コウモリはくるりと空中で身を翻し、僕の剣が絶対に届かない高い場所へと逃げてしまった。


「クソッ、降りてこいよ!」


何度か飛びかかってくるのを狙って剣を振るが、空を飛ぶ敵というのは想像以上に厄介だ。剣が届かない位置から一方的に牽制されると、完全に手も足も出ない。これでは効率が悪すぎる。


魔物と遭遇しないあの不自然な無の時間を過ごしながら、僕は岩に腰掛けて頭を悩ませた。弓なんて使えないし、魔法なんて当然使えない。


「剣が届かないなら、剣の攻撃を飛ばすしかないのか……? いや、それって転生前によく見てたアニメのやつじゃん」


剣を振ると、カマイタチのような斬撃が飛んでいく例のあれだ。そんな漫画みたいなこと、いくらなんでも異世界だからってできるわけが……いや、ダメ元でやってみるか。どうせ魔物が出るまでは暇だし。


僕は立ち上がり、コウモリを想像しながら「斬撃よ、飛べ!」と念じて鉄剣を力いっぱい振り抜いた。


ブンッ!

空気を裂く音だけが響く。当然だ。何も起きない。


しかし僕は諦めず、魔物に遭遇しない長い空白の時間を使って、ただひたすらに斬撃を飛ばすイメージで鍛錬という名の素振りを続けた。何十回、何百回と剣を振る。


そして、千回を超えたあたりだっただろうか。


「飛べえええっ!」


ヒュンッ!……ズバァァァンッ!!


「……え?」


鉄剣の軌跡から三日月型の風の刃のようなものが飛び出し、数メートル先の岩を見事に真っ二つに両断したのだ。


「マジで!? 飛んだ!? ああ、なんというご都合クオリティ!!」


僕は自分の手と剣を交互に見つめ、歓喜の声を上げた。チート能力は弾かれたのに、アニメの知識と気合の素振りだけで技を習得してしまうとは。


だが、これで最大の懸念は払拭された。

再び大牙コウモリの群れが現れても、空高く逃げようとした瞬間に飛ぶ斬撃を放てば、面白いように次々と叩落とすことができた。


「ははは! 落ちろ落ちろー!」


すっかりコツを掴んだ僕は、この岩鳴りの谷でも苦労することなく、どんどん討伐数を伸ばしていった。


――そして、一週間後。

僕はいつものように、ギルドのカウンターに質の良い魔石がたっぷり詰まった袋を提出していた。


「はい、大牙コウモリとはぐれゴブリンの魔石ですね。……いつもながら、見事な数です」


受付嬢は魔石を査定しながら、どこか訝しげな視線を僕に向けていた。


「あの……少し気になっていたんですが」

「はい? なんですか?」

「岩鳴りの谷は、レベル3の冒険者ならまだまだ苦労するはずの狩場なんです。特に大牙コウモリは空を飛ぶので、剣士一人の場合は対処が難しくて……。でも、あなたは毎日全く苦労した様子もなく、大量の魔石を持ち帰ってきますよね?」


受付嬢は僕の腰にある安物の鉄剣を見つめた。


「もしかして、空を飛ぶコウモリに対して、剣以外に何か特別な投擲武器や魔法の道具を使っているんですか?」

「え? いや、結果としては剣だけで攻撃してますよ。振ったら届くので」

「振ったら……届く……?」


受付嬢は全く意味が分からないというように、不思議そうに小首を傾げた。


剣から斬撃が飛んでいくなんて、この世界の常識ではあまり一般的ではないのだろうか。僕は余計なことは言わず、ただ曖昧に笑って誤魔化すのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、

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