■第55話 国宝級のドロップ品と、冒険者のロマン
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「ええっ、城が建つ!? ……じゃあ、この真珠も一緒にオークションに」
そこまで言いかけて、僕はハッと口を閉ざし、手の中にあるピンポン玉サイズの『七色の真珠』をまじまじと見つめた。
淡く、しかし力強く七色に発光するその真珠は、見れば見るほど吸い込まれそうなほどに美しい。これほどの神秘的な輝きを放つ宝石は、元の世界にも、この異世界にも二つとないだろう。
「……いや、やっぱりちょっと待ってください」
「ん? どうした? オークションの最低落札価格をさらに引き上げるか?」
「違います。この真珠は売りません。僕が持ち帰ります」
僕がそう宣言した瞬間、ギルドマスターと受付嬢、そして周囲で聞き耳を立てていた冒険者たちが「「「ええええええっ!?」」」と一斉に素っ頓狂な声を上げた。
「ば、馬鹿な! 城が建つほどの国宝級アイテムだぞ!? これ一つ売るだけで、お前さんは一生遊んで暮らせるんだぞ!」
「城なんて貰っても維持費が大変なだけですし、一生遊んで暮らすために冒険者やってるわけじゃないですからね。それに――」
僕は七色の真珠を指先でつまみ、太陽の光にかざしてニヤリと笑った。
「こんな超絶レアアイテム、売っちゃったら二度と見られないじゃないですか。ポケットに入るサイズの国宝なら、冒険の『最高のお守り』として手元に置いておくのがロマンってやつですよ」
「ロ、ロマンで城をフイにしおった……! この銀騎士、どこまで規格外なんだ……!」
ギルドマスターは頭を抱えてわななき、他の冒険者たちも「マジかよ……」「どんだけ肝が据わってんだ」と呆れ半分、尊敬半分の眼差しを向けてきた。
「ということで、生け捕りにしたジュエルタートルのオークションだけお願いします。あれはさすがに大きすぎて連れて歩けませんからね。真珠のことは、ギルドの記録からは伏せておいてください」
「わ、分かった……。亀だけでも王都がひっくり返る騒ぎになるだろうからな。オークションの手続きが進んだら、また連絡しよう」
かくして、僕は途方もない価値を持つ真珠をヒョイッとポーチに放り込み、ギルドを後にした。
「よし、これでまた一つ『とんでもない自慢の品』が手に入ったぞ」
ホクホク顔で街を歩きながら、僕はポーチ越しに真珠の感触を確かめた。
武具屋の親父さんに見せて専用のペンダントに加工してもらうのもいいし、気楽な寺院の神官ちゃんに見せびらかして驚かせるのも楽しいだろう。売らなくて本当に大正解だった。
だが、寄り道(一攫千金フィッシング)はこれくらいにしておかなければならない。
僕の本来の目的は、この『海溝の迷宮』の最深部に到達し、このダンジョンのエコシステムを管理している「神の使い魔」からのテストに合格することなのだ。
「ジュエルタートルがいた第3層の奥……あの真っ暗な深淵の下に、きっと第4層への入り口があるはずだ」
バベルの下層を統べていた高位悪魔のように、この海の底にも途方もない力を持ったボスが待ち受けているに違いない。
ポーチの中で輝く七色の真珠を最高のお守りに、僕はいよいよ海溝の迷宮の『真の深層』へと挑むための準備を始めるのだった。
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