■第54話 チートなしの運搬作業と、狂乱のギルド
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
見事ジュエルタートルを生け捕りにした僕は、ふと我に返って巨大な獲物を見下ろした。
「……これ、どうやって持って帰るんだ?」
異世界転生モノの定番である『アイテムボックス』や『空間魔法』。そんな便利なチート能力があれば、この巨大な亀もポンと収納して優雅に帰還できるのだろう。
しかし、神様からチートを弾かれた僕にあるのは、相変わらずポーションでドーピングした『己の肉体』のみである。
「……引っ張るしかないよな」
僕はため息をつきながら、亀甲縛りにしたミスリルワイヤーの端を自分の肩にタスキ掛けにした。
『水棲ポーション(絶級)』の効果が切れる前に、追加の上級バフポーションを飲み干して筋力を限界まで引き上げる。
「よーし、行くぞ! アクア・ブースト、最大出力!!」
シュバァァァァンッ!!
ブーツから猛烈な水流を噴射し、僕は巨大なジュエルタートルを背後に引きずりながら、第3層から海面へ向かって一直線に急浮上を開始した。
「重っ!! 水の抵抗、エグッ!!」
いくらブーツの推進力があっても、背後に巨大なパラシュート(亀)を引っ張っているようなものだ。しかもジュエルタートルは抵抗してジタバタ暴れるため、軌道がブレて仕方がない。
僕は歯を食いしばり、文字通り馬車馬のように海中を突き進んだ。
途中、第2層や浅層にいた冒険者たちが、「なんだあれ!?」「銀騎士が、七色に光るバカでかい岩を引きずって飛んでいったぞ!?」と目を丸くしていたが、挨拶を返す余裕すらなく海面を目指した。
――ザバァァァァッ!!
「ぷはぁっ!! げっほ、ごほっ……着い、た……!」
水門の海面に飛び出した僕は、ワイヤーを引っ張ってジュエルタートルを陸地へとズリズリと引きずり上げた。
「お、おい! お前、それ……っ!?」
見張りの門番が、腰を抜かしてへたり込んだ。無理もない。純銀の鎧を着た男が、神々しい七色の光を放つ伝説級の巨大ウミガメを、ワイヤーで縛り上げて散歩の犬のように引きずってきたのだから。
「生け捕りに成功しました。これ、ギルドに持っていきますね」
僕は息も絶え絶えに笑いかけ、そのままアクアリアの中心部にある冒険者ギルドへと向かった。
街の大通りは当然のごとくパニックである。「なんだあの光る亀は!」「ジュエルタートルだ! しかも生きてるぞ!」と、まるでパレードのような大行列を引き連れながら、僕はギルドの扉を蹴り開けた。
「すんませーん! 買い取り、お願いしまーす!」
ギルドの広いホールにジュエルタートルをドスンと置くと、酒場で飲んでいた冒険者たちのジョッキが次々と床に落ち、ガシャーンという音が響き渡った。
カウンターにいた日焼け肌の受付嬢は、白目を剥いて硬直している。
「あ、あの……受付嬢さん?」
「……っ!? ぎ、銀騎士のお兄さん!? い、いや、これ、幻覚じゃないですよね!? 第3層の幻の神獣、ジュエルタートルを……しかも無傷の生け捕りぃぃ!?」
ギルド中に彼女の悲鳴が響き渡り、そこから爆発的な歓声とどよめきが巻き起こった。
「どうやって捕まえたんだ!? 魔法の網か!?」
「いや、見ろよあのミスリルワイヤー! 力技で亀甲縛りにしてやがる! どんなバカ力だ!!」
騒然とするギルドの奥から、「騒々しい! 何事だ!」とギルドマスターらしき初老の男が飛び出してきたが、ジュエルタートルを見るなり「ひぇっ」と変な声を出して固まった。
「あの、これ、王都の貴族とか大富豪が高値で買ってくれるって聞いたんですけど、ギルドで仲介とかってしてもらえますか?」
僕が尋ねると、ギルドマスターは慌てて頷いた。
「も、もちろんだ! これほどの完全な状態での生け捕りは、王家の献上品クラスだ! ギルドの特別ルートを使って、王都の貴族たちによるオークションにかける! 数十……いや、数百の金貨が動くぞ!」
その言葉に、僕は思わずガッツポーズをした。
と、その時である。
『キュゥゥ……』
縛られて観念したのか、ジュエルタートルが小さく鳴き声を上げ、その口からコロンと、何か丸いものが転がり落ちた。
「ん? なんだこれ」
拾い上げてみると、それは淡い七色の光を放つ、ピンポン玉ほどの大きさの美しい真珠だった。
「なっ……! それは、ジュエルタートルが極稀に生み出す『七色の真珠』!! それ単体でも、城が建つほどの国宝級アイテムだぞ!!」
ギルドマスターが血相を変えて叫んだ。
市場のおじさんが言っていた「飼っていると定期的に落とす」というアレが、恐怖と疲労のせいか、今このタイミングでポロリとドロップしてしまったらしい。
「ええっ、城が建つ!? ……じゃあ、この真珠も一緒にオークションに出しちゃってください」
「あ、ああ……分かった。責任を持って最高の値をつけてみせよう……」
かくして、チートなしの泥臭い釣り(物理)から始まった僕の一攫千金計画は、街のギルドの歴史に残る超高額オークションへと発展することになった。
果実代として使った金貨など、比べ物にならないほどの天文学的な報酬が、僕を待っている。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、
下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆(解体作業)のモチベーションが爆上がりします!
ブックマーク登録も、ぜひよろしくお願いいたします!




