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■第53話 二日目の激闘と、巨大ウミガメとの綱引き

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


昨日の釣果は、あのキラーシャーク1匹と、それに食いつこうとして引っ掛かった小ぶりのサメや深海魚が数匹。

結局、高価な『深海サンゴの果実』をいたずらに消費しただけで、本命のジュエルタートルは姿すら見せなかった。


そして、迷宮フィッシング二日目。

僕は昨日と同じ第3層の絶壁に陣取り、残り少なくなった果実の一つを巨大フックに突き刺して、深淵へとワイヤーを垂らしていた。


「……今日こそ、絶対に釣る」


ポーションのバフを絶やさないよう定期的に飲み直しつつ、ひたすら待つ。


忍耐の時間は今日も過酷だった。発光するサンゴの美しさにもすっかり慣れてしまい、ただ無心で極太のミスリルワイヤーを見つめ続ける。


数時間が経過し、「今日もダメか……」と諦めが頭をよぎり始めた、その時だった。


――ギギッ……ギ、ギギギギギギギギギッ!!!

特注釣竿『リヴァイアサン』の巨大リールが、昨日とは比べ物にならない異常な悲鳴を上げた。

竿の先端が、限界まで「し」の字にひしゃげている。


「来たッ!!」


僕は瞬時に竿を握りしめ、岩場に足を踏ん張った。

伝わってくる衝撃が、昨日のサメとは全く違う。サメの引きが「暴れ狂う荒馬」だとすれば、今日の引きは「海底を突き進む重戦車」だ。


暴力的なまでの重さと、底へ底へと向かう圧倒的で一定の推進力。間違いない、この規格外のトルクは、あの高速で泳ぎ回る巨大ウミガメのものだ!


「逃がすかよぉぉぉっ!!」


僕はバケモノ級の筋力を全開にし、さらに腰から追加の『上級バフポーション』を引っこ抜いて、歯で栓を飛ばして一気飲みした。


筋肉が限界を超えて熱を帯び、シルバーアーマーがミシミシと軋み声を上げる。


「おおおおおっ!!」


ギリッ……ギリリリッ!

僕は全身を弓のように反らせ、巨大なリールを力任せに巻き始めた。


ウミガメの推進力と、僕の筋力の真っ向勝負。ワイヤーが擦れるバチバチという音が海中に響き、僕の足元の岩場が圧力に耐えきれずピキピキとひび割れていく。


数分間に及ぶ、文字通りの死闘(綱引き)。

やがて、深淵の暗闇の中から、眩い七色の光が急速に浮上してくるのが見えた。


「見えた……! ジュエルタートルだ!!」


ステンドグラスのように輝く美しい甲羅。先日僕が真っ二つにしたあの神獣のようなウミガメが、果実を丸呑みにしてワイヤーの先で暴れている。


「そぉいッ!!」


僕は最後の一巻きに全てを懸け、海中からその巨大な亀を、強引に絶壁の岩場へと引きずり上げた。


ズドォォォォォンッ!!

岩場に叩きつけられたジュエルタートルが、七色の光を乱反射させながら地響きを立てる。

怒り狂ったウミガメは、僕に向かって大きく口を開き、あの凶悪な水流レーザーを放とうと光を収束させ始めた。


「ヤバッ!!」


僕は咄嗟に『アクア・ブーストのブーツ』で横に跳んでレーザーを回避した。

岩場が一直線にえぐり取られる。


「さて、ここからどうやって生け捕りに……って、あっ」


レーザーを躱した先で、僕は重大な事実に気がついた。

昨日、市場のおじさんに「釣りでいける」と言われてテンションが上がった僕は、魔道具屋で『捕獲用の魔法の網』を買うのをすっかり忘れていたのだ。

目の前には、激怒して次弾を装填しようとしている巨大なウミガメ。

手元にあるのは、剣と、釣竿と、替えのミスリルワイヤーだけ。


「……やるしかないか。カメの弱点といえば、昔から相場は決まってる!」


僕は剣を抜きもせず、素手でジュエルタートルの懐へと飛び込んだ。

驚くウミガメの甲羅の縁を下から両手でガッチリと掴み、筋力ステータスのすべてを両腕に込める。


「ふんぬぅぅぅぅぅっ!!」


ゴロンッ!!

力任せにひっくり返されたジュエルタートルは、見事に仰向けの状態で岩場に転がった。

ウミガメ特有の悲しいさがである。手足をバタバタさせているが、自力では起き上がれず、水流レーザーも明後日の方向(海面)に向かって誤射している。


「よし、今のうちだ!」


僕は釣竿の予備として持っていた極太のミスリルワイヤーを引っ張り出し、仰向けになってジタバタする巨大ウミガメの手足と甲羅を、プロレス技のように強引にぐるぐる巻きに縛り上げた。


「ふぅ……ふぅ……」


数分後。

そこには、ミスリルワイヤーで亀甲縛り(物理)にされ、涙目でキュゥゥと鳴いている美しいジュエルタートルの姿があった。


「やった……! 完全に生け捕り成功だ!!」


僕はゼェゼェと息を切らしながら、七色に輝く巨大な甲羅の上でガッツポーズをした。

一切のスマートさはない、どこまでも泥臭くて脳筋な方法だったが、結果がすべてだ。

ついに僕は、この海溝の迷宮で最高級の獲物(一攫千金)を生きたまま手に入れることに成功したのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、

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