■第52話 激闘の果てと、深海の殺し屋(サメ)
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
……さらに二時間が経過した。
「ふわぁ……」
僕は海底の岩場に座り込んだまま、ポーションのおかげで溺れないことをいいことに、うとうとと船を漕ぎ始めていた。
いくら『絶級』の水棲ポーションで動体視力が上がっていても、見つめる先が変化のないピンと張られた釣り糸だけでは、宝の持ち腐れというものだ。
「ダメだ、眠すぎる……。もう今日は諦めて帰ろうか……」
鋼鉄の釣竿『リヴァイアサン』から手を離そうとした、まさにその瞬間だった。
――**ギギギギギギギッ!!!**
リヴァイアサンの巨大な巻き上げ機が、悲鳴のような金属音を上げて高速で逆回転を始めた。
極太のミスリルワイヤーが、深淵に向かって猛烈な勢いで引きずり込まれていく。
「うおっ!? きたっ!!」
僕は跳ね起き、慌てて釣竿を両手でガッチリと掴んだ。
ズンッ!! と、腕の骨が軋むほどの強烈な衝撃が伝わってくる。
「す、すげえ引きだ! これは間違いない、大物だぞ!」
一攫千金のジュエルタートル。七色の甲羅と真珠が、ついに僕の高級な餌に食いついたのだ!
僕は絶壁の岩場にシルバーアーマーのブーツをしっかりと食い込ませ、腰を落として踏ん張った。
「なめるなよ……僕の脳筋ステータスを……!!」
全身の筋肉に力を込め、バフポーションの恩恵をフル稼働させる。
オーガの突進すら片手で受け止める僕の怪力と、小型船をひっくり返す巨大ウミガメの、真っ向からの綱引きだ。
「おおおおおっ!! 巻き上がれえええっ!!」
ギリ、ギリ、ギリッ!
僕は歯を食いしばりながら、クレーンのような巨大リールを力任せに回し始めた。
海溝の底へ逃げようとする獲物の凄まじい抵抗。しかし、特注のミスリルワイヤーは切れる気配すらなく、確実に獲物を絶壁の上へと引き寄せている。
「見えたぞ! でかい影だ!」
暗い深淵の底から、猛烈に暴れ狂う巨大なシルエットが急速に浮上してくる。
さあ来い、僕の七色の宝石! 一攫千金のジュエルタートル!
「そぉいッ!!」
僕は最後の一巻きに全身の力を込め、海中からその巨大な獲物を岩場へと豪快にぶっこ抜いた。
バシャァァァァァンッ!!
水煙を上げて岩場に叩きつけられた獲物。
僕は歓喜の声を上げようとして――その姿を見た瞬間、完全に固まった。
「……あれ?」
そこにいたのは、キラキラと七色に輝く美しい甲羅を持ったウミガメではなかった。
流線型の分厚くザラザラとした灰色の肌。
背中にそそり立つ凶悪な背びれ。
そして、ノコギリのような鋭い牙が何重にも並んだ、血を求めて大きく開かれた巨大な顎。
「……サメじゃん」
海溝の迷宮に生息する凶悪な水棲魔物、『キラーシャーク』である。
「シャァァァァッ!!」
僕の高価な『深海サンゴの果実』を丸呑みにしたキラーシャークは、釣り上げられたことへの怒りからか、岩場の上で猛烈に体をのたうち回らせ、そのまま凄まじい勢いで僕に向かって噛み付いてきた。
「バカヤロウッ! 僕の高級な餌を返せ!!」
僕は釣竿を放り投げ、腰のシルバーソードを瞬時に引き抜いた。
怒りに任せた純銀の一閃が、空中のキラーシャークを真っ二つに両断する。
ズバァァァッ!!
浄化の光とともに、サメの巨体が光の粒子となって消え去り、あとにはそこそこ立派な水属性の魔石がコロンと転がった。
「はぁ……はぁ……」
静まり返った海底で、僕はサメの魔石と、餌だけが見事に消え去った巨大な釣り針を交互に見つめた。
「そりゃそうだよな……。海に餌を投げたら、カメより先に肉食のサメが食いつくわな……」
僕の数時間の忍耐と、老婆から金貨を積んで買い占めた高級な果実(一つ目)は、こうしてただのサメの魔石へと変換されてしまったのだった。
「……クソッ、まだ餌のストックはある! 今日は絶対に七色の甲羅を拝むまで帰らないからな!」
僕はギリッと歯を食いしばり、新しい『深海サンゴの果実』を巨大フックに突き刺した。
ステータス一桁時代から培ってきた僕の泥臭い根性を、甘く見るなよ。
怪力剣士の意地を懸けた、終わりの見えない深海フィッシングは、こうして第二ラウンドへと突入していった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、
下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆(解体作業)のモチベーションが爆上がりします!
ブックマーク登録も、ぜひよろしくお願いいたします!




