■第46話 第3層の輝きと、美しき大ウミガメ
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第2層のサンゴ礁エリアを抜け、さらに深くへと続く大穴を潜り抜けると、いよいよ第3層の領域へと足を踏み入れた。
そこは、2層以上に幻想的な空間だった。
周囲に群生する発光サンゴの光が幾重にも乱反射し、海中全体がまるで宝石箱の中のようにキラキラと瞬いている。
「すごいな……深く潜れば潜るほど綺麗になっていくじゃないか」
そんな美しい景色に見惚れながら泳ぎ進んでいた僕の視界に、ひときわ眩い光を放つ巨大な影が飛び込んできた。
「うわぁ……なんだあれ」
それは、見上げるほど巨大なウミガメの魔物だった。
しかし、先ほどの第2層で突進してきたようなゴツゴツとした岩のような甲羅ではない。その巨大な甲羅は、まるでステンドグラスか極上のクリスタルのように透き通り、周囲のサンゴの光を反射して七色にキラキラと輝いていたのだ。
優雅に前足を羽ばたかせ、光の尾を引きながら悠然と泳ぐその姿は、神聖さすら感じさせるほどに美しい。
「すっげえ……。あれも魔物なんだよな? なんだか、倒して消してしまうのが惜しいくらいだぞ」
ゲームやファンタジーの世界なら「神獣」とか「精霊」として扱われて、間違っても攻撃対象にはならないような神秘的なビジュアルである。
僕はしばらくシルバーソードを構えることも忘れ、その場にプカプカと浮きながら美しい巨大ガメの遊泳を眺めていた。
しかし、ここは『海溝の迷宮』。生態系の要たるダンジョンボスへと続く、過酷な弱肉強食の世界だ。
ピタッ。
巨大ウミガメが泳ぎを止め、その透き通った瞳で僕をギロリと睨みつけた。
――ゴオォォォォッ!!
次の瞬間、巨大ウミガメは美しい甲羅を激しく発光させ、大きく開いた口から超高圧の水流レーザー(ウォーターカッター)を一直線に放ってきた。
「うおっ!? 容赦ねえな!」
僕は反射的に、魔道具屋で買った新兵器『水流推進のブーツ』に魔力を込めた。
シュバァンッ! とかかとから水流が噴射され、僕の体は海中を弾かれたように急加速して、凶悪な水流レーザーを間一髪で回避する。レーザーが直撃した背後の巨大な岩柱が、音もなくスッパリと両断されて崩れ落ちた。
「美しさに騙されるところだった! あれ直撃したらシルバーアーマーごと真っ二つだぞ!」
ロマンチックな観光気分は完全に吹き飛んだ。いくらキラキラで美しくても、向こうは僕を殺す気満々の魔物なのだ。
巨大ウミガメは首を巡らせ、再び口元に眩い光と水流を収束させようとしている。
「悪いけど、こっちも命がけなんだ。遠慮なくやらせてもらうぞ!」
僕はアクア・ブーストのブーツで急加速し、水の抵抗を切り裂きながら一直線に巨大ウミガメの懐へと飛び込んだ。
「ふっ!」
筋力ステータスとバフポーションの力を全て乗せ、純銀のシルバーソードを大きく振り抜く。
ズバァァァァッ!!
白銀の軌跡が海中を走り、美しいクリスタルの甲羅ごと、巨大なウミガメの体を一刀両断した。
浄化の光が弾け、美しい魔物はパリンッとガラスが砕けるような澄んだ音を立てて光の粒子となって消えていく。
「……やっぱり、ちょっともったいないことした気分になるな」
剣を振り抜きながら、僕は少しだけ胸が痛んだ。
しかし、光の粒子が完全に消え去った後、水底にコロンと落ちてきたものを見て、その罪悪感は一瞬で吹き飛んだ。
「おおっ……!! なんだこれ、めちゃくちゃ綺麗じゃないか!」
そこに落ちていたのは、あのウミガメの甲羅と同じように、七色の光を放ちながらキラキラと輝く、特大サイズの『魔石』だったのだ。
普通の魔石のような単色の結晶とは違い、まるで宝石職人が丹念に磨き上げた最高級のダイヤモンドのようである。
「よし! あの神官ちゃんに見せたら、絶対目を丸くして驚くぞ!」
僕はホクホク顔で、その美しい魔石を傷つけないようにそっとポーチの奥にしまい込んだ。
ダンジョンの魔物は、ただ凶悪なだけではなく、こんなにも美しく幻想的な存在もいる。
水没迷宮の奥深さを噛み締めながら、僕はランタンを腰で揺らし、さらなる未知の魔物と宝を求めて第3層の奥へと泳ぎ進んでいった。
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