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■第44話 水没迷宮の浅層と、不思議な海中会話

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


巨大な水門の前に戻り、今度はドヤ顔で『潜水許可証』を提示する。門番は渋い顔をしながらも道を開けてくれた。


「よし、いよいよだな」


僕は腰のポーチから、気楽な寺院で貰った『水棲ポーション』と、お馴染みの『上級バフポーション』を取り出し、一気に飲み干した。

喉の奥がヒンヤリとした魔力で満たされ、同時に爆発的な筋力と敏捷性が全身の筋肉に漲っていく。

準備を整えた僕は、石階段を降りて、青く澄んだ海の中へとザブンと飛び込んだ。


「……おおっ! 本当に息ができる!」


本来なら肺に水が入ってむせ返るところだが、ポーションの効果でエラ呼吸のように水中の酸素を自然に取り込める。深い水底へ向かっても、鼓膜を圧迫するような水圧は一切感じない。


さらに、武具屋の親父さんが塗ってくれた『海竜の脂』のコーティングが完璧に機能し、重いはずのシルバーアーマーを着ていても、驚くほど水の抵抗を感じずにスイスイと手足を動かすことができた。


「すげえ……陸上と全然変わらない感覚で動けるぞ」


感動しながら周囲を見渡すと、そこは美しい海底遺跡だった。

白い石造りの柱には色鮮やかなサンゴが群生し、頭上からはキラキラと太陽の光が差し込んでいる。浅い階層はまだ光が届くため、視界は極めて良好だ。

そして何より驚いたのは――。


「そっちのサハギン抑えて! 私が魔法で撃ち抜くから!」

「了解! 回復よろしく!」


……ウヨウヨいた。

見渡す限りの浅層エリアに、素材を集めたり、下位の魔物と戦ったりしている冒険者たちの姿がそこかしこにあったのだ。バベルの中層や下層のようなヒリヒリとした孤独感はなく、まるで休日のレジャープールのようである。


「って、ちょっと待て。なんで水の中なのに普通に声が聞こえるんだ……?」


ゴボゴボという泡の音に混じって、明瞭な話し声が響いてくる。不思議に思って首を傾げていると、近くで貝殻の採集をしていた軽装の冒険者が、僕の姿に気づいて気さくに手を振ってきた。


「おーい、こんにちは! 見ない顔だけど、新入りかい?」

「あ、こんにちは! ……って、普通に喋れるんですね!?」


僕が水中で思わず大声を出すと、冒険者の男はカラハハと笑った。


「なんだ、他所から来たのか! この街で出回ってる『水棲ポーション』はな、エラ呼吸を可能にするだけじゃなくて、声帯の震えを魔力の波に変換して水中に伝達する効果があるんだよ。だから、ポーションを飲んでる者同士なら地上と全く同じように会話ができるのさ!」

「なるほど、ファンタジー特有の『ご都合クオリティ』の恩恵か! ありがたい!」


息が続くかどうかのハンドサインだけでコミュニケーションを取るような、息苦しい展開にならなくて本当に良かった。大雑把な神様の配慮か、この街の魔法技術の賜物かは分からないが、とにかく便利であることに変わりはない。


「おっ、サハギンが湧いたぞ! 気をつけろ新入り!」


男が指差した先から、半魚人のような魔物『サハギン』が三匹、こちらに向かって鋭いもりを突き出しながら泳いできた。浅層の定番モンスターだ。


「ちょうどいい、水中戦の小手調べだ!」


僕は海中の石畳を蹴り、サハギンの懐へと一直線に飛び込んだ。

水の抵抗を切り裂く海竜の脂のコーティング。そしてバケモノ級のステータス。


「ふっ!」


スパーンッ!

純銀のシルバーソードが一閃し、サハギンたちが反応する間もなく、三匹まとめて一刀両断された。彼らは浄化の光とともに弾け、コロンと水底に魔石を落とす。


「うおっ!? なんだ今の速さ!? 水中であんな重装備のまま、サハギンを瞬殺したぞ!?」

「それにあの眩しい銀色の鎧……おい、もしかして他所のギルドで噂になってる『銀騎士』じゃないか!?」


周囲で戦っていた冒険者たちが、僕の鮮やかな(そして力任せの)一撃を見てざわめき始めた。


「あはは、どうもー! お騒がせしてまーす!」


僕は彼らに向かってひらひらと手を振りながら、海底の魔石を素早く回収した。

水中の環境にも、動きにも全く問題はない。会話もできるなら、いざという時の連携や情報交換も容易だ。


「皆さん、お気をつけて! 僕はもう少し深くへ潜ってみます!」

「お、おう! さすが噂の銀騎士、気をつけてなー!」


好意的な冒険者たちと水中で挨拶を交わしながら、僕は海底遺跡のさらに奥、太陽の光が届かなくなる深く暗いエリアへと繋がる大穴を目指した。


腰に下げた『深海サンゴのランタン』が、これから先の暗闇を照らす出番を待っている。

軽快な滑り出しを見せた第三部の海中探索は、さらに深く、未知の領域へと続いていく。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、

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