■第42話 海都の武具屋と、深海を照らす魔道具
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
気楽な寺院で『水棲ポーション』という絶対的な命綱を手に入れた僕は、その足でアクアリアの市場へと向かった。
ポーションで呼吸と水圧の問題はクリアできるが、ここは未知の海中迷宮だ。この街独自の水中用装備や、役立つ魔道具がないかチェックしておくに越したことはない。
潮の香りと活気にあふれる市場を歩き、まずはカンカンと小気味よい槌音が響く『海都の武具屋』の暖簾をくぐった。
「いらっしゃい! ……おや、兄さん。立派な銀装備だが、そのまま海溝に潜るつもりかい?」
出迎えてくれたのは、見事な筋肉と日焼けした肌を持つ、恰幅の良いドワーフの親父さんだった。バベルの親父さんの親戚だろうか、顔つきが少し似ている。
「ええ、そのつもりなんですが。やっぱり銀だと海の中で錆びたりしますかね?」
「純銀なら鉄よりはマシだが、海溝の底から湧き出る硫黄成分や、魔物の返り血と海水が混ざれば一発で黒く変色(黒ずみ)しちまうぞ。それに、そのゴツい鎧じゃあ、いくら筋力があっても水の抵抗で動きが鈍る」
「う……やっぱりそうですよね」
親父さんは僕のシルバーソードとアーマーを値踏みするように見つめた後、ニヤリと笑って奥から小瓶を持ってきた。
「そこでこいつの出番だ。『海竜の脂』をベースにした特殊なコーティング剤さ。こいつを武具に塗り込めば、塩や変色を完全に防ぐどころか、水の抵抗を極限まで減らしてスイスイ動けるようになる。海に潜る前衛の必須アイテムだぜ!」
「おおおっ! さすが海のドワーフ、痒い所に手が届く! それ、たっぷり塗ってください!」
バベルで稼いだ資金はまだ山のようにある。僕は金貨を弾んで、愛用の銀装備に完璧な防水・防汚コーティングを施してもらった。
武具屋を出た僕は、次に怪しげな光が漏れる『波間の魔道具屋』へと足を踏み入れた。
「こんにちはー、何か水中の探索に役立つ面白い魔道具ってありますか?」
店番をしていたのは、透き通るような青い髪をしたエルフのお姉さんだった。彼女は僕の姿を見ると、にっこりと微笑んでショーケースの奥からいくつかのアイテムを取り出してきた。
「ソロで潜るのなら、絶対にこれが必要よ。まずは『深海サンゴのランタン』ね」
「ランタン? でも、水の中じゃ火は……」
「ふふっ、これは火を使わないの。魔力を流すとサンゴ自体が発光して、真っ暗な海溝の底でも昼間のように周囲を照らしてくれるわ。しかも、この光の波長は一部の狂暴な深海魔物を遠ざける効果もあるのよ」
深海は光の届かない完全な暗闇だ。これがないと、魔物と戦うどころか迷子になって終わる。僕は迷わず購入を決めた。
「それから、もう一つ。水中での機動力を補うなら、この『水流推進のブーツ』がおすすめよ」
「推進ブーツ!?」
「ええ。かかとの部分に小さな魔法陣が刻まれていてね。魔力を込めると、そこから強力な水流が噴射されて、海中を文字通り『飛ぶ』ように高速移動できるの。急な回避や、水面への緊急浮上にはもってこいよ!」
水流を噴射して海中を高速移動するブーツ。
ロマンの塊のような魔道具に、僕のテンションは爆上がりした。
「すごい! 完全にSF映画のガジェットじゃないですか! それも買います!」
ホクホク顔で大量の金貨を支払い、僕はランタンを腰に下げ、ブーツをその場で履き替えた。
『水棲ポーション』による完璧な環境適応。
『海竜の脂コーティング』による装備の保護と水の抵抗軽減。
『深海サンゴのランタン』による視界の確保。
そして『水流推進のブーツ』による立体的な機動力。
「……完璧だ。これ以上ないくらい、完璧な布陣じゃないか」
未知のダンジョンに挑む前の、この準備を整えていく時間は何度経験してもワクワクする。
僕は海風を胸いっぱいに吸い込み、海面がキラキラと輝く運河の奥――街の地下深くから海へと繋がる『海溝の迷宮』の入り口へと、力強い足取りで向かった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、
下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆(解体作業)のモチベーションが爆上がりします!
ブックマーク登録も、ぜひよろしくお願いいたします!




