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■第41話 気楽な寺院と、水没迷宮への特効薬

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


冒険者ギルドで「海溝の迷宮」の情報を得た僕は、さっそく街の中で神様が用意してくれているはずの寺院を探すことにした。


最初の街では『手頃な寺院』。迷宮都市バベルでは『適当な寺院』。

ならば、この水上都市アクアリアにも、あの髭の大雑把な神様が手配した「僕のための補給所」が必ずあるはずだ。


白亜の巨大な大聖堂や立派な神殿が立ち並ぶメインストリートを抜け、少し路地に入った運河沿い。そこに、周りの荘厳な雰囲気とは明らかに浮いている、南国風の木造の小さな建物があった。

入り口の看板には、ゆるい手書きの文字でこう書かれている。


『気楽な寺院』

「……うん、絶対ここだ。あの神様、ネーミングセンスの方向性がずっと同じなんだよな」


カラン、と貝殻でできた風鈴のようなドアベルを鳴らして中に入る。

中はむせるようなお香の匂い……ではなく、爽やかな潮風と柑橘系の香りが漂っていた。祭壇には見慣れた女神像が置かれているが、その横になぜかハンモックが吊るされている。


「はーい、いらっしゃーい。気楽な寺院へようこそー」


ハンモックからひょっこりと顔を出したのは、少し日焼けした健康的な肌に、涼しげな薄手の神官服を着たショートヘアの少女だった。彼女はストローでトロピカルジュースのようなものをチューチューと吸いながら、僕の顔を見てパッと目を輝かせた。


「ああっ! その眩しい純銀のフル装備! もしかして、神様からご神託があった『チートを弾いちゃった可哀想な一般人様』ですか!?」

「……可哀想って言うな。まあ、その一般人だよ。バベルの街から流れてきたんだ」


僕がため息をつきながら答えると、彼女はハンモックからピョンと飛び降りて満面の笑みで出迎えてくれた。


「お待ちしてました! 私、この『気楽な寺院』を任されている神官です! 海の街らしく、気楽にのんびり寄進していってくださいね!」


どうやらこの街の神官ちゃんは、南国リゾート感あふれる非常にフレンドリーな性格らしい。最初の街やバベルの神官ちゃんたちと同じ匂いがして、僕は心底ホッとした。


やっぱり、気難しい大聖堂の神官よりも、こういう裏表のない子と取引する方が性に合っている。


「さっそくだけど、寄進を頼めるかな? 実は『海溝の迷宮』に潜るための対策アイテムが欲しくて」

「もちろんです! 神様からちゃんと、海仕様の新しいポーションのレシピを授かってますよ!」


僕は道中の護衛クエストなどで狩ってストックしておいた中級の魔石をいくつか祭壇に置いた。

神官ちゃんがそれに祈りを捧げると、魔石が光となって消え、代わりに淡い水色に発光するとろりとした液体の入った小瓶がコロンと現れた。


「じゃーん! こちらがアクアリア特製『水棲ポーション』です!」

「水棲ポーション?」

「はい! これを飲めば一定時間、水の中でエラ呼吸のように息ができるようになり、さらに深海の強烈な『水圧』を完全に無効化してくれます! これがないと、海溝の迷宮の奥では魔物と戦う前にペチャンコに潰れちゃいますからね!」

「おおおっ! さすが大雑把な神様、対策アイテムだけは毎回完璧だな!」


僕は水色のポーションを太陽の光に透かして見つめた。

これといつものバフポーションを組み合わせれば、水の抵抗や息継ぎを気にすることなく、地上と同じように純銀の剣を振り回せるはずだ。


「これならいける! 神官ちゃん、この水棲ポーションと、いつもの上級バフポーションのセットをたっぷり貰えるかな?」

「はい、毎度ありです! 水中ではポーションを飲むのが少し難しいので、潜る前にしっかり飲んでおいてくださいね!」


ポーチいっぱいに霊薬を詰め込み、ずっしりと重くなったのを確認して、僕は気楽な寺院を後にした。


「よし、準備は万端だ」


太陽が照りつける運河沿いの道を歩きながら、僕は海の底へと続くダンジョンに向けて気合を入れ直した。

勝手の違う水中の迷宮。そして、そこに待ち受ける次なる「神の使い魔」からのテスト。

頼れるポーションと銀の相棒を携え、僕はいよいよ『海溝の迷宮』へと足を踏み入れるのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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