■第33話 下層の遭遇と、通りすがりの銀装備
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翌日。再び下層へと潜った僕は、瘴気と精神干渉のエリアを縫うように進みながら、順調にアンデッドたちを狩り続けていた。
「よし、このエリアの瘴気もそろそろ限界だな。リジェネ・ポーションの効果が切れる前に、一度安全地帯に抜けよう」
時間制限の感覚も掴めてきた僕は、無理をせずに紫色の靄が立ち込める空間から離脱しようと足を踏み出した。
その時だった。
「くそっ! 物理攻撃が通らねぇ!」
「前衛、下がって! 瘴気で体力が……きゃあっ!」
靄の奥深くから、激しい剣戟の音と悲鳴が聞こえてきた。
身を隠してそっと覗き込むと、僕よりも年上の、いかにも歴戦といった風貌のベテラン冒険者パーティ(6人組)が、魔物の群れに完全に包囲されていた。
相手は無数の『スケルトンナイト』と、宙を舞う『レイス』の群れ。さらにその奥には、一回り巨大な漆黒の鎧を纏った『デスナイト』まで控えている。
ベテランたちの鋼の剣や魔法は、アンデッドの再生能力とレイスの幽体によって決定打を与えられず、じわじわと瘴気に体力を削られて絶体絶命のピンチに陥っていた。
「……うわぁ、あれはマズいな」
「出る杭は打たれる」がモットーの僕としては、あまり目立つ行動は避けたい。
しかし、ここで見殺しにしてしまえば、いくら平和なソロライフのためとはいえ、夢見が悪すぎる。何より、僕はこの街の人たちに助けられてここまで来られたのだ。
「仕方ない、パパッと片付けてササッと立ち去ろう!」
僕はマスクの位置を直し、背中のシルバーソードを抜いて、靄の中へと飛び出した。
「そこ、しゃがんで!」
「えっ!?」
唐突に響いた僕の声に、ベテランの前衛が条件反射で身を屈める。
その頭上を飛び越えるようにして、僕はレベル20オーバーのバケモノ敏捷性でデスナイトの懐へと潜り込んだ。
「はぁっ!」
白銀の刃が一閃する。
ベテランたちの鋼の剣を弾き返していたデスナイトの分厚い装甲が、まるでバターのように音もなく両断された。
「ギガァァァッ!?」
斬り口から強烈な浄化の光が爆発し、下層の強敵であるはずのデスナイトは、一瞬にして巨大な魔石へと変わって崩れ落ちた。
「なっ……!? 一撃、だと!?」
「何だあの銀色の……!」
呆然とするベテランたちをよそに、僕は流れるような動きで残りの魔物たちのヘイトを一身に集めた。
「ウォーター!」
指先から放った水流でレイスたちの目くらまし(効果があるかは謎だが)をしつつ、群がってくるスケルトンナイトたちの攻撃を、あえてシルバーアーマーで受け止める。
ガキンッ! ジュワァァァッ!
「ギェェェッ!?」
純銀の装甲に触れたスケルトンたちは、次々と猛毒を食らったように浄化され、光の粒子となって消滅していく。あとは残ったレイスを銀の剣で撫で斬りにするだけだ。
ほんの数十秒の間に、あれほどベテランパーティを苦しめていたアンデッドの群れは、大量の高品質な魔石へと変わっていた。
「ふぅ、片付いた」
僕が剣を鞘に収めると、へたり込んでいたベテラン冒険者たちが、信じられないものを見るような目で僕を見上げていた。
「あ、あんた……一体……?」
「その銀装備……まさか、最近ギルドで噂になってる『中層ソロの銀騎士』か!?」
まずい、すでに変な二つ名がつき始めている。
僕は慌てて首を振り、落ちている魔石を手早くポーチに回収しながら声をかけた。
「い、いえ! 僕はただの通りすがりのソロ冒険者です! それより、あなたたち瘴気を吸いすぎて限界でしょう。これ、持続回復の『リジェネ・ポーション』です。これを飲んで、すぐに上の階層へ撤退してください!」
僕は神官ちゃんからたっぷり貰っていたポーションを数本、彼らの足元にコロンと転がした。
「えっ!? こんな高価なポーションを……!」
「じゃあ僕は急いでるんで、これで! お気をつけてー!」
彼らが感謝の言葉を紡ぐ前に、僕は踵を返し、バケモノじみたスピードで靄の奥へとダッシュで姿を消した。
「……ふう。とりあえず助けられてよかったけど、また目立っちゃったかな」
安全地帯に辿り着いた僕は、小さくため息をついた。
圧倒的な装備の相性とステータスのおかげで、もはや下層の魔物すら僕の敵ではない。しかし、この異常な強さが周囲に知れ渡れば、また面倒な勝負を挑まれたりするかもしれない。
「やっぱり、ソロはこっそり稼ぐに限るな」
僕は誰にも見られないように、ひっそりと、しかし確実に、下層の良質な魔石を求めて迷宮のさらに奥へと足を進めていくのだった。
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