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■第27話 勝負の着地点と、オーダーメイドの片眼鏡

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

それでは、本編をお楽しみください!


「やれやれ、面倒なことに巻き込まれちゃったな……」


勝負が宣言された直後。熱気冷めやらぬギルドを早々に抜け出した僕は、迷宮へは向かわず、西区の裏通りへと足を向けていた。


勝負の期限は明日の夕方17時。

普通に迷宮に潜って魔石を乱獲し、すべてをギルドのカウンターに叩きつければ、間違いなく僕の圧勝だろう。


しかし、何の因果もない相手を完膚なきまでに叩きのめして圧倒的な大差で勝利したところで、僕には何のメリットもない。むしろ「バベルの常識を覆す異常なソロ冒険者」として悪目立ちし、無駄なヘイトや厄介事を引き寄せるだけだ。


かといって、適当に手を抜いて負けるのもダメだ。

「俺たちの全財産、兄ちゃんに賭けるぜ!」と拳を突き上げていた顔なじみの冒険者たち。彼らは僕の実力を信じて、なけなしの金を賭けてくれている。ここで僕が負ければ、彼らの財布をすっからかんにする無責任な裏切りになってしまう。


圧勝して目立つのも嫌だ。負けて賭けを台無しにするのも嫌だ。


つまり、僕が目指すべき理想の着地点はただ一つ。

『相手の魔石数より、ほんの数個だけ多く提出して、ギリギリの接戦で勝つこと』


だが、相手がどれだけの魔石を持ち込んでくるか分からない以上、その調整は至難の業だ。そこで僕は、あの優秀な魔道具職人を頼ることにした。


カランカランッ!


「いらっしゃい、にゃあ。あら、例の勝負の真っ最中じゃないの? ギルドの噂、ここまで聞こえてきてるわよ」

「お姉さん、相談があるんです!」


カウンターの奥にいた黒猫の獣人のお姉さんに、僕はこれまでの事情と「ギリギリのいい勝負の末に勝ちたい」という思惑をすべて打ち明けた。


「……なるほどね。あんた、脳筋のソロかと思ったら、案外したたかで計算高いのね、にゃあ」

「僕の故郷には、出る杭は打たれる、てことわざがあるんですよ。目立たずに平穏なソロライフを送るためには、これくらいしないと。それで、相手の袋に入ってる魔石の数を外から鑑定できるような、そんな都合のいいアイテムってありませんか?」


僕が身を乗り出して尋ねると、黒猫のお姉さんは腕を組み、しなやかな尻尾をパタパタと揺らした。


「うーん……相手の魔力を外から透視して総量を測る魔道具ね。構想はあるし、ちょうどいいのも作れるけど……あいにく、今は完成品の在庫がないのよ」

「えっ、ないんですか!?」

「そんなマニアックなアイテム、普段は需要がないもの。でも、今から私が特急で組み上げてあげるわ。明日の昼まで時間をちょうだい。最高のものを用意しておくから」


腕利きの職人らしい頼もしい言葉に、僕はパッと顔を輝かせた。


「ありがとうございます! 代金は金貨でいいですか?」

「ふふっ、お金はいらないわ。その代わり……あんたが『僅差で勝つため』にギルドに提出しなかった余りの魔石、全部うちの工房に回してくれるわよね? 圧勝できるほどの量を持ってるんでしょ?」

「あ……! なるほど、そういうことですか! もちろん、余った分は全部お姉さんのところに持ってきます!」

「にゃふふっ、交渉成立ね。それじゃ、明日の昼過ぎにまたいらっしゃい!」


翌日。

午前中のうちに中層でサクッと大量の魔石(普通のパーティの数日分)を確保した僕は、昼過ぎに再び『黒猫の宝箱』を訪れていた。


「お姉さん、来ました!」

「待ってたわよ。ほら、約束の品」


彼女が自慢げに差し出してきたのは、金色のフレームに縁取られたアンティーク調の片眼鏡モノクルだった。


* 『魔量測りの片眼鏡マナ・スカウター


「これを通してみれば、相手の袋や鞄の中にある魔石の『総量』が、おおよその数値として視覚化されるわ。即席にしては上出来でしょ?」

「すごい……! ありがとうございます! これがあれば、提出の直前で相手の数を確認して、自分の袋の中身を微調整できる!」

「しっかり『僅差の勝利』を演出してきなさいな。終わったら、うちへの納品も忘れないでね!」

「はい! 行ってきます!」


『魔量測りの片眼鏡』をしっかりと懐に忍ばせ、僕は決戦の地である冒険者ギルドへと向かった。


夕方のギルドは、勝負の行方を見守る冒険者たちの熱気で、すでに爆発寸前の盛り上がりを見せているはずだ。


完璧な計画とオーダーメイドのアイテムを手にした僕は、誰にもバレない「接待プレイ」を完遂するため、静かにギルドの重い扉を押し開けた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、

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