■第22話 怒涛のレベルアップと、中層の罠
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ピカピカに磨き上げられた銀の装備を身に纏い、僕は迷宮都市バベルの地下迷宮、その「中層」へと続く長い階段を下りていた。
一段下りるごとに、空気がひんやりと冷たくなり、微かなカビと魔物の獣臭さが混じったような重い空気が肌にまとわりついてくる。上層とは明らかに違う、張り詰めたプレッシャーがあった。
「そういえば……中層に入る前にギルドで鑑定板に乗ったけど、相変わらずとんでもない数字だったな」
薄暗い通路を歩きながら、僕は今朝のギルドでの出来事を思い返していた。
上層で「魔法ポーション遊び」にかまけていた数日間。標準的なパーティの倍とはいえ、毎日大量の魔石を納品し続けていたのだから、当然経験値も莫大なものになっていたのだ。
【レベル:15】
【筋力:125】
【体力:122】
【敏捷:124】
ついにレベルは15に達し、基礎ステータスは全て三桁の領域に突入していた。
もはや眼鏡の受付嬢も驚きを通り越して、「あ、はい。15ですね。おめでとうございます(無表情)」と、完全に悟りを開いたような顔で処理をしてくれたほどだ。
このバケモノじみた基礎ステータスに、適当な寺院でキープしてある「上級バフポーション」の補正が乗るのだ。負ける気がしない。
「キシャアアアッ!」
通路の奥から、不快な叫び声とともに魔物の群れが姿を現した。
緑色の硬そうな皮膚を持った『ハイゴブリン』の集団と、天井に張り付いた『ポイズンスパイダー』だ。ただ突っ込んでくるだけだった上層の魔物とは違い、前衛と後衛で陣形を組むようにこちらを囲み込もうとしている。
「なるほど、これが知恵をつけた中層の魔物か。でも……!」
僕は腰の木箱から、虹色の魔法ポーションを取り出してグイッと飲み干した。
「先手必勝! ファイヤー!」
ポンッ! と指先から放たれた炎の玉が、天井のポイズンスパイダーに向かって飛んでいく。
初級魔法なので大爆発こそ起こさないが、蜘蛛の巣に引火させるには十分だ。「ギチィッ!」と悲鳴を上げて蜘蛛が落下してきたところを、すかさず踏み込んでシルバーソードを一閃する。
ズバァァァンッ!
ドワーフの職人が極限まで磨き上げ、特殊なコーティングを施してくれた銀の剣は、ポイズンスパイダーの硬い皮膚も武器の棍棒も、まるで紙切れのように抵抗なく両断した。
「すごい! 斬り抜けが上層の時よりさらに良くなってる! 親父さんの剣と、ドワーフのメンテナンスの相乗効果だ!」
感動している暇はない。残りのハイゴブリンたちが、怒り狂って一斉に飛びかかってくる。
「なら、こっちはこれだ! ウォーター!」
バシャッ! と指先から勢いよく水を放ち、ゴブリンたちの視界を奪う。
怯んだ一瞬の隙を見逃さず、レベル15の圧倒的な敏捷性で敵の懐に潜り込み、流れるような剣舞で次々と魔石へと変えていった。
「ふう、剣と魔法の組み合わせ、めちゃくちゃ効率がいいな!」
息を一つ吐き、ドロップした質の高い中層の魔石を拾い集めようと一歩踏み出した、その時だった。
――カチッ。
足元の石畳が、不自然に沈み込んだ。
「っ! 罠か!」
先輩冒険者が言っていた言葉が脳裏をよぎる。
直後、左右の壁の無数の小さな穴から、緑色の液体を滴らせた『毒矢』が雨あられのように射出されたのだ。
普通の冒険者なら、為す術もなく串刺しになっていただろう。
しかし、上級バフポーションで強化され、120を超えた僕の敏捷ステータスからすれば、その矢の軌道はまるでスローモーションのように見えていた。
「はっ! ふっ! とぉっ!」
僕は飛んでくる毒矢の隙間を縫うように、体を捻り、ステップを踏んで完全に回避する。さらに、ドワーフの職人が施してくれたコーティングのおかげで、かすかに飛び散った毒の飛沫がシルバーアーマーに触れても、全く腐食する気配はなかった。
「あぶねー……。やっぱり罠には気をつけないとだな」
ステータスと装備のゴリ押しで回避できたとはいえ、迷宮が牙を剥くという中層の恐ろしさを肌で感じた瞬間だった。
「でも、これならいける。魔法と剣、それに罠への警戒。やることが増えて、ますます面白くなってきたぞ!」
僕は気を取り直してシルバーソードを構え直し、さらなる獲物と良質な魔石を求めて、迷宮の中層の奥へと足を踏み入れていくのだった。
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