■第21話 買い替えの勧めと、親父さんの銀装備
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
それでは、本編をお楽しみください!
「よし、今日からいよいよ中層だ」
宿屋のふかふかのベッドで目覚めた僕は、気合を入れて立ち上がった。
未知の罠や集団戦が待ち受ける中層。さすがに上層での「魔法ポーション遊び」のノリのまま突っ込むのは危険だろう。
「その前に、念のため装備のメンテナンスをしておきたいな」
毎日休まず上層の魔物を狩り続けていたおかげで、親父さんに誂えてもらった『シルバーソード』も『シルバーアーマー』も、微かにくすんだり小さな傷がついたりしていた。銀は美しい分、鋼よりも少しデリケートなのだ。
僕は朝一番で冒険者ギルドへ向かい、眼鏡の受付嬢に腕のいい鍛冶屋を紹介してもらうことにした。ギルドの紹介なら、ぼったくられる心配もなく信用できる。
「中層に挑む前のメンテナンスですね。それでしたら、裏通りにある『ドワーフの鉄槌亭』という工房がおすすめです。無愛想ですが、腕は確かですよ」
受付嬢に教えられた通りに裏通りを進むと、カンカンと心地よい金属音が響く工房を見つけた。
中に入ると、筋骨隆々としたドワーフの職人が汗だくになってハンマーを振るっていた。
「すいません、ギルドの紹介で来たんですが、装備のメンテナンスをお願いできますか?」
僕が声をかけると、ドワーフの職人は手を止め、僕の全身を包む銀装備をジロリと睨んだ。
「……ほう。見事な銀細工だ。魔物避けの特効も丁寧に付与されてやがる。辺境の職人が打ったにしちゃ、最高の『業物』だな」
「わかりますか? 前の街で、すごくお世話になった武具屋の親父さんが見繕ってくれたんです」
「ああ、いい腕だ。……だがな、坊主。あんた、これから『中層』に行くんだろ?」
「はい、そのつもりですけど」
ドワーフの職人はふいっと鼻を鳴らし、僕のシルバーソードの刀身を指差した。
「だったら、悪いことは言わねえ。その銀装備は飾っておいて、新しくうちでミスリルかアダマンタイトの装備に買い替えな。銀じゃ中層の魔物の硬い甲殻を斬るには柔らかすぎるし、罠の酸や毒を浴びればあっという間に腐食して使い物にならなくなるぞ」
確かに、職人の言うことはもっともだった。中層の過酷な環境を思えば、銀装備ではすぐに限界が来るのかもしれない。今の僕には、最高級の装備をいくつも買えるだけの潤沢な資金がある。
でも――。
「……アドバイスありがとうございます。でも、一先ずはメンテナンスだけでお願いします」
「あ? なんでだ。金がねえのか?」
「いえ、そうじゃなくて。この装備、すごく手に馴染んでるし、何よりあの街の親父さんが『俺の最高傑作だ』って背中を押してくれたものだから。もう少しだけ、こいつと一緒に中層を歩いてみたいんです」
親父さんの、あの凶悪な笑みと、「死ぬんじゃねえぞ、ひよっこ」というぶっきらぼうな声が思い出された。ボロボロの鉄剣の時から僕を見守ってくれた、あの親父さんの打った最高傑作。簡単に手放したくはなかったのだ。
「中層をやってみて、どうしても銀の装備じゃキツそうなら、その時にまた買いに来ますよ」
僕が笑ってそう言うと、ドワーフの職人は呆れたようにため息をつき、ガシガシと頭を掻いた。
「……ったく。どこの世界にも、理屈じゃなく『相棒』を手放せねえ頑固なバカはいるもんだ。いいだろう、そこまで言うなら、俺が中層の酸にも耐えられるように、限界までこの銀をコーティングして磨き上げてやる。その代わり、死にそうになったら意地張らずに逃げてこいよ!」
「はい! よろしくお願いします!」
数時間後。
ドワーフの職人の手によって、僕のシルバーアーマーとシルバーソードは、新品だったあの時よりもさらに眩い、白銀の輝きを取り戻していた。
「すげえ……ピカピカだ! ありがとうございます!」
「ふん、腕のいい職人の作品をメンテナンスするのは、俺にとっても悪くねえ時間だった。ほれ、さっさと行きな!」
職人に背中を叩かれ、僕は工房を後にした。
ピカピカの銀装備と、ポケットの中で静かに冷気を放つドラゴン・リング。そして、「適当な寺院」にキープしてある大量のポーション。
準備は完全に整った。
僕は迷宮の入り口となる巨大な塔を見上げ、いよいよ未知の領域である「中層」へと足を踏み入れたのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
少しでも「面白い!」「次も読みたい!」「ヒョロガリ頑張れ!」と思っていただけましたら、
下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆(解体作業)のモチベーションが爆上がりします!
ブックマーク登録も、ぜひよろしくお願いいたします!




