■第20話 魔法ポーションでの遊びと、中層の噂
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それからしばらくの間、僕は迷宮の上層階に毎日通い詰めていた。
「よし、そこだ……ファイヤー!」
ポンッ!
指先から放たれた小さな火の玉が、迷宮の壁を這っていたアシッドスライムに直撃し、ジュワッと音を立てて魔石へと変えた。
「いやあ、魔法って本当に便利だなあ。次はウォーターでいってみるか!」
完全に「魔法ポーション」での遊びにハマってしまった僕は、剣を振るうのもそこそこに、様々な簡易魔法を試しながら上層の魔物を乱獲し続けた。チート能力を持たない僕にとって、自分の手から炎や水が出るというファンタジー体験は、楽しくて仕方がなかったのだ。
そして、日々の稼ぎの配分もすっかりルーティン化していた。
毎日大量に回収する魔石のうち、四分の一だけを冒険者ギルドで換金する。
そして残りの四分の三という膨大な量を、「適当な寺院」へと寄進し続けたのだ。
「ひゃあああ! 今、今日もこんなに大量の魔石を!? 女神様も大喜びです!」
「あはは、今日も魔法ポーションのおかげで大漁だったよ。はい、これ寄進ね」
「ありがとうございます! では、いつものように上位ポーションと魔法ポーションを山盛りで……って、あれ?」
神官の少女が用意してくれた木箱の山を見て、僕は苦笑いした。
毎日毎日、大量の魔石を寄進し続けた結果、僕のポーション在庫はとんでもないことになっていたのだ。腰の木箱や宿屋の部屋には到底入りきらない。
「ごめん、さすがにもう持ち歩けないや。悪いんだけど、このポーションのストック、しばらくこの寺院の倉庫で保管しておいてもらえないかな? 必要な時に取りに来るから」
「ポーションのボトルキープですね! かしこまりました、神聖なる倉庫の空きスペースを貴方様のために空けておきます!」
適当な寺院の柔軟な対応(?)のおかげで、アイテムの持ち運び問題も無事に解決した。
一方、生活費の面も全く問題なかった。
ギルドで換金している魔石は全体の四分の一とはいえ、そもそも一人で狩っている量が尋常ではないため、ソロの取り分としては破格の金額になる。
宿屋では一番良い部屋を取り、夜は食堂で名物の「オーク肉の厚切りステーキ」や「迷宮キノコの濃厚シチュー」など、美味しいご飯を毎晩お腹いっぱい食べてゆっくりと休む。そんな贅沢な日々を送っていても、僕の革袋の中の金貨は減るどころか、毎日チャリンチャリンと増え続けていた。
そうしてギルドに毎日顔を出し、酒場で美味しいご飯を食べていると、自然とこの街の冒険者たちとも顔なじみになっていった。
「おう、銀装備のソロ兄ちゃん! 今日も上層で魔法遊びしてきたのか?」
「お疲れ様です。ええ、おかげさまで今日も大漁でしたよ」
声をかけてきたのは、ギルドでよく顔を合わせる中堅パーティのリーダーだった。彼らも最初は「全身銀装備のソロなんてすぐ死ぬぞ」と警戒していたが、僕が毎日涼しい顔で大量の魔石を持ち帰るのを見て、今ではすっかり気さくに接してくれるようになっていた。
「兄ちゃんの強さは本物だ。上層の魔物じゃ、もうすっかり物足りないだろ?」
「実はそうなんです。魔法で遊ぶのも楽しいんですけど、そろそろ下に行ってみようかなって。……『中層』って、どんな感じなんですか?」
僕が尋ねると、リーダーの男はジョッキを置き、少しだけ真面目な顔つきになった。
「中層からは、空気がガラッと変わるぜ。上層みたいに単純に突っ込んでくるだけの魔物じゃなくなる。毒や麻痺を持った厄介な変異種が増えるし、知恵をつけて集団戦を仕掛けてくるオークの軍団なんかも出る」
「なるほど……」
「それに、魔物だけじゃない。迷宮自体が牙を剥いてくるんだ。『罠』が至る所に仕掛けられるようになる。足元に気をつけねえと、串刺しになったり落とし穴で下層に落とされたりするからな」
魔物の強化に、集団戦、そして迷宮の罠。
いよいよ本格的なダンジョン攻略といった感じだ。
「教えてくれてありがとうございます。罠には気をつけますね」
「おう! 兄ちゃんの実力なら大丈夫だと思うが、油断すんなよ! やばいと思ったらすぐに上層に逃げてこい!」
先輩冒険者の温かい忠告に頷きながら、僕は残りのステーキを平らげた。
大量のポーションのストックも、溢れるほどの資金もある。
いよいよ明日からは、迷宮都市バベルの「中層」への挑戦だ。未知の領域への期待に胸を膨らませながら、僕はふかふかのベッドで眠りについた。
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