■第2話 魔石と装備と、いざ初陣
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本編スタートです。
「よし、善は急げだ。さっそく街へ行って装備を整えてくるよ!」
支度金の革袋を腰に下げ、意気揚々と寺院を出ようとした僕を、神官の少女が「あ、ちょっと待ってください!」と慌てて呼び止めた。
「大事なことを言い忘れていました。魔物を倒したら、必ずその体から『魔石』を回収してくださいね」
「マセキ?」
「はい。魔物の心臓付近にある小さな結晶です。それはギルドに持っていけば換金できますし、何より当寺院での『寄進』の対象にもなるんです」
なるほど。魔石を集めることが、そのまま路銀稼ぎと、次のポーションを手に入れるための軍資金になるわけか。実にシンプルな仕組みで分かりやすい。
「分かりました、魔石ですね。忘れないようにします!」
寺院を後にした僕は、活気あふれる街の大通りを抜け、少女に教えられた武具屋の暖簾をくぐった。店内には無骨な剣や鎧が所狭しと並んでおり、奥では強面な店主が黙々と剣を研いでいた。
「いらっしゃい。……ほう、召喚されたばかりのひよっこか」
「分かりますか? とりあえず、この予算で買える一番いい剣と鎧をください」
僕は革袋をカウンターに置いた。店主は中身をちらりと確認すると、鼻で笑って壁際の一角を指差した。
「初心者にはそっちの棚だ。錆びにくい安物の鉄剣と、厚手の革鎧。それ以上は今のあんたには重すぎて振り回せねえし、使いこなせもしねえよ。まずは『ないよりマシ』程度の装備で、自分の身の丈を知ることだな」
「……手厳しいですね。でも、確かにその通りだ」
変に背伸びをして高い装備を買うより、今はこれが精一杯なのだろう。僕は店主の言葉に従い、最低限の鉄剣と革鎧を買い揃えた。鉄剣の重みは、これからの旅の厳しさを物語っているようだった。
次に向かったのは冒険者ギルドだ。
酒場を兼ねた広いホールには、屈強な冒険者たちが集まって昼間から酒を酌み交わしている。その視線を背中に感じながら、僕は受付で登録の手続きを始めた。
「はい、それではこちらの『ステータス測定板』に手を置いてください。これで初期能力を測り、ギルドカードに登録します」
受付嬢の言葉に従い、金属製の板に手を触れる。淡い光が浮かび上がり、いくつかの数字が形作られた直後――受付嬢が目を限界まで見開き、素っ頓狂な声を上げた。
「ええっ!? ス、ステータスが全て一桁!? 筋力も体力も、その辺の農家の子供より低いですよ!?」
シンッ、と一瞬ギルド内が静まり返り……次の瞬間、ドッと爆笑の渦が巻き起こった。
「おいおい嘘だろ!? 異世界から来たんじゃねえのかよ!」
「農家のガキよりひ弱な剣士様のお出ましだぜ! ギャハハハ!」
「おーい剣士様! 角ウサギに噛み殺されないように気をつけなァ!」
顔から火が出るかと思った。受付嬢はハッとして両手で口元を押さえたが、時すでに遅しだ。
「す、すみません! あまりにも想定外の数値で、つい大声を出してしまって……!」
「……いや、いいです。事実ですから」
「ほ、本当に申し訳ありません……。あの、実は先日も別世界から『勇者様』がいらっしゃったんです。その方は最初からステータスが私たちの何倍もあって……あっという間にこの周辺のクエストをこなし、より難易度の高い依頼を受けるために、次のダンジョンがある街へ早々に旅立たれてしまいました」
別の勇者。おそらく、あの白い空間で僕より先に召喚され、順当にチート能力を貰っていった誰かだろう。
神様のチートをすんなり受け入れ、華々しく活躍して次の街へ進んだ本物の勇者。
片や、チートを弾いてしまい、現地人以下のステータスで嘲笑われている僕。
「……そうですか。すごいですね、その人は」
胸の奥に、チクリとした切なさと惨めさが広がる。
僕は手渡された冒険者証をひったくるように受け取ると、笑い声の響くギルドから逃げるように外へ出た。
街の東門へと向かう足どりは、どうしても重くなる。
けれど、立ち止まっていても仕方がない。今の僕にあるのは、腰に提げた重たいだけの安い鉄剣と、木箱の中でカチャカチャと鳴るポーションだけだ。
「……やるしかないだろ」
誰に言うでもなく小さく呟いて、僕は一番弱い魔物がいるという『緑の草原』へと足を踏み出した。
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