■第1話 大雑把な神様と、チート能力を弾く僕
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本編スタートです。
「おや? おかしいのう。君の魂、どうにもチート能力が馴染まないな。ツルッと弾かれてしまうわい」
「……はい?」
真っ白な空間で、目の前の髭の老人が首を傾げている。
「うむ、原因はよく分からん! ということで、異世界召喚のお約束であるチート能力は無しじゃな! まあいいだろう」
「いや、全然よくないですよ! なんでそんな大雑把なんですか!」
「心配せんでも、現地の手頃な寺院に落としておく。そこで『寄進』してポーションを貰うのじゃ! 飲めばステータスが補正されるし、君のレベルが上がれば効果も跳ね上がる。まあ、なんとかなるじゃろう。それじゃ、世界を救うのじゃぞー!」
「いや、だからちょっと待てって——うわあああああっ!?」
ドスッ!
強烈な浮遊感のあと、鈍い音とともに冷たい石の床に尻餅をついた。
むせるようなお香の匂い。ステンドグラスから差し込む色鮮やかな光。どうやら、本当に「手頃な寺院」とやらの真っ只中に直接放り出されたらしい。
ふと顔を上げると、立派な女神像の前で祈りを捧げていたらしい神官の少女が、目を丸くしてこちらを見つめていた。
「えっと……空から降ってきた……勇者様、ですか?」
「……たぶん、その予定だったただの一般人です」
僕が尻餅をついたままため息をついて答えると、神官の少女はポンと手を打って顔を輝かせた。
「ああ、やっぱり! 先ほど神様からご神託があったのです!」
「ご神託?」
「はい!『チート能力を弾いてしまった可哀想なヤツがそっちに落ちるから、手頃なポーションと支度金を渡してやってくれ』と!」
「可哀想って言ったの!? あの大雑把な神!」
配慮してくれたのはありがたいが、原因を作った本人の言葉だと思うと無性に腹が立つ。
少女は苦笑いしながら祭壇の奥へ向かい、小さな木箱と、ずっしりと重い革袋を抱えて戻ってきた。
「こちらがご神託で指定された『初心者お助けポーションセット』です。赤いのが筋力アップ、青いのが敏捷アップの効果があります。そしてこちらが、装備一式を整えるための支度金ですね。当寺院では武器や防具の配給は行っておりませんので、街の武具屋でお買い求めくださいとのことです」
「なるほど、それは助かる……。ちなみに、このポーションを飲むと具体的にどれくらいステータスが上がるんですか?」
「ええと……今のあなたのレベルですと、効果は『ほんのり』ですね。でも、レベルが上がれば効果も跳ね上がりますから!」
ほんのり、か。完全な素の状態で戦うよりはマシだろうが、過信は禁物だな。
革袋の中身を確認すると、金貨や銀貨がそれなりの枚数入っていた。これで最低限の身の回りの品と、身の丈に合った武具は揃えられそうだ。
「装備を買うのはいいんですが、僕みたいな素人に何の武器が向いているのかも分からなくて。適性のある職業とかって、この寺院で鑑定できたりしませんか?」
「はい、もちろんです! こちらの『鑑定の水晶』に手を触れてみてください」
神官の少女が祭壇から持ってきた透明な水晶玉に、そっと手を触れる。
すると、水晶玉の中にぼんやりと剣のマークが浮かび上がった。
「ええと、適性職業は……『剣士』ですね! 小難しいことを考えるより、とにかく前衛で剣を振り回すのが得意な……いわゆる、力こそパワーな気質みたいです!」
「オブラートに包んでくれたんだろうけど、それって完全に『脳筋』ってことだよね?」
「あはは……でも、ポーションの『筋力アップ』効果とは相性バツグンですよ!」
圧倒的な力を持つチート能力がない以上、ポーションを飲んで物理で殴るスタイルになるのだろう。まあ、頭を使って難しく立ち回るよりは、シンプルで性に合っているかもしれない。
「それでは、まずは街で剣と鎧を整えて、一番弱い魔物から挑戦してみてくださいね! 寺院への寄進もお待ちしております!」
こうして僕は、なけなしの初期ポーションと支度金だけを頼りに、異世界での大雑把で脳筋な旅へと足を踏み出すことになった。
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