■第11話 新装備の威力と、ソロ到達の快挙
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本編スタートです。
武具屋の親父さんが見繕ってくれたのは、手入れの行き届いた『鋼の長剣』と、急所に鉄板を縫い込んだ軽量かつ頑丈な『強化革鎧』だった。
翌日、僕はさっそくその真新しい装備を身につけ、再び『獣牙の森』へと足を踏み入れた。
「ふっ!」
鋭い呼気とともに鋼の長剣を一閃する。
ズバァッ! という小気味よい音とともに、突進してきたオークの分厚い皮膚と肉が、まるでバターのように両断された。
「……す、すごい! 全然違う!」
安物の鉄剣とは比べ物にならない切れ味と、手に吸い付くような重心の良さ。刃こぼれを気にせずフルスイングできる安心感。さらに、新しい鎧はキラーウルフの鋭い爪をガキンッと弾き返し、僕に傷一つ負わせなかった。
中級バフポーションの恩恵と、レベル4のステータス。そこに『本物』の装備が加わったことで、僕の狩りの効率は文字通り跳ね上がった。飛ぶ斬撃を織り交ぜながら森を駆け抜け、あっという間に大量の魔石をかき集めることに成功した。
それから数日。
新装備のおかげで、僕はこれまで以上のハイペースで獣牙の森の魔物を狩り尽くしていた。
「……はい、オークとキラーウルフの魔石、今日もすごい数ですね。確認しました」
ギルドのカウンターで、受付嬢が山積みの魔石を前にしてため息をついた。呆れているというよりは、もはや感嘆の域に達しているようだ。
「装備を変えたら、めちゃくちゃ捗るようになっちゃって」
「でしょうね。それに、これだけの強敵をこれほどのペースで討伐しているんですから……間違いなく、またレベルが上がっているはずです。さあ、今日も鑑定板へどうぞ」
もはや日課のようになりつつある『ステータス測定板』に手を置く。
淡い光が収束し、新たな数字が浮かび上がった。
【レベル:5】
【筋力:35】
【体力:32】
【敏捷:33】
「レベル5! ステータスもついに30台に突入した!」
「おめでとうございます! 本当に、あっという間のレベルアップですね」
受付嬢は満面の笑みで拍手をしてくれた後、ふと表情を引き締め、カウンターの下から古びた地図を取り出した。
「レベル5。この数値とあなたの今の実力なら、ご案内できる場所があります。……いえ、この街を拠点とする冒険者に案内できる『最後の狩場』です」
「最後の狩場?」
「はい。東の果てにある『竜骨の荒野』です。ここは大型の凶悪な魔物や、強力な魔法を使う魔物も出現する、この街の周辺で最高難易度のエリアになります」
ついに最高難易度。
農家の子供以下と笑われた僕が、ポーションをガブ飲みして剣を振り回し続けた結果、とうとうこの街のトップ層が挑む場所にまで辿り着いたのだ。
「竜骨の荒野……よし、明日からそこに行ってみます!」
「……本当に、信じられません」
受付嬢は地図を見つめながら、ポツリと呟いた。
「この街の歴史の中でも、レベル5に到達する冒険者はもちろんいます。ですが、竜骨の荒野へは必ず複数の職業でパーティを組んで挑むのが常識なんです。……ソロ(単独)で、しかもこれほど短期間で最高難易度の狩場への到達条件を満たしたのは、この街ではあなたが初めてですよ」
「え……? 僕が、初?」
その言葉に僕が呆然としていると、背後の酒場スペースから、ドンッ! とジョッキをテーブルに叩きつける大きな音が響いた。
「おいおいマジかよ! あの『ステータス一桁』のヒョロガリが、ソロで竜骨に行くってのか!?」
立ち上がったのは、初日に僕を大笑いし、先日「装備を買い替えろ」と忠告してくれたあの先輩冒険者だった。
一瞬、また馬鹿にされるのかと身構えたが、彼の顔に浮かんでいたのは満面の笑みだった。
「お前ら、聞いたか! 農家のガキより弱かった剣士様が、とうとうこの街のソロ到達記録を塗り替えやがったぞ!!」
その大声を合図に、ギルドにいた冒険者たちが次々と立ち上がり、僕に向けてジョッキを掲げた。
「すげえじゃねえか、坊主!」
「毎日血まみれになってたのは伊達じゃなかったな!」
「ソロ記録更新に乾杯だ!!」
「「「乾杯!!」」」
ギルド中に割れんばかりの歓声と、ジョッキがぶつかる音が響き渡る。
初日、一桁のステータスを曝け出してギルド中から嘲笑を浴びたあの日の空気が、まるで嘘のようだった。彼らは僕の泥臭い努力を、毎日ボロボロになって魔石を持ち帰る姿を、ちゃんと見ていてくれたのだ。
「……ありがとうございます、皆さん!」
照れくさくて、でも誇らしくて。
僕は顔を真っ赤にしながら、祝福の声援に向かって深く頭を下げた。チート能力を貰えなかった僕の異世界生活は、この街の誰よりも熱く、充実したものになっていた。
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