変節1-8 ある青年の話
あぁ、どうも。こんにちは。
お変わりありませんか?
……グレイブハル城、ですか?
いいえ。
私は、まだ観光に出かけたことはありませんね。
ですが――
よく知っていますよ。
えぇ、誰よりも。
あの城は、愚か者の城です。
美しい城と、美しい青年たち?
……まぁ、そうでしょう。
非常に整った場所で、
非常に整った青年たちなのでしょうね。
えぇ、分かりますよ。
彼らは、創造神オルドに祝福されていますから。
……え?
私が、そんなに信心深い男だとは思っていなかった?
それは当然です。
私も、ついこの間まで、
神など信じていませんでしたから。
理不尽で、不公平で。
この世は不幸だらけだ。
神がいるのなら、
ずいぶん無能な存在だと思っていました。
この間の学会で発表された症例、ご覧になりましたか?
……可哀想でしたよね。
あんなに小さな子どもが。
でも、私は気づいたのです。
無力だったのは。
愚かだったのは。
――我々の方だったのだ、と。
神々は、箱を作っただけ。
そして、その箱を、ただ見ている。
ですがね。
箱には、支柱が必要なのですよ。
神は、その支柱だけは、自ら選ばれるのです。
グレイブハル城が美しいのは――
そう。
祝福されているからです。
神聖なのでしょうね。
きっと。
余計なものは、
何一つ、存在しないのではありませんか?
青年たちの顔貌も、
歪みが一つとしてないのでは?
……ほら。
創造神が好みそうでしょう。
それにしても――
力があるのに、奮わない。
選ばれておきながら、気づきもしない。
どうかしていますよ。
持つ者は、その力を使って、弱き者を救うべきでしょう。
それをしないのは、怠慢にも程があります。
……あぁ、
ノブレス・オブリージュですよ。
まさに、それです。
その上、その力を自らの欲のために捨てようとするなど、正気とは思えませんね。
今度、グレイブハル城へ行かれるのですか?
そうですか。
美しい場所でしょう。
建物も、青年たちも。
どうぞ、楽しんできてください。
私も――
近々、行こうと思っています。
えぇ。
私が、教えてあげるつもりなのです。
私が、彼らごと、救いあげてやりますよ。
それこそが――
ノブレス・オブリージュ、ですから。
……来週の学会で発表されるのですか?
それは楽しみですね。
あぁ、いいですね。
その後、食事でも行きましょう。
それでは。
また。




