変節1-2 エリオットの話
こんにちは。
グレイブハル城について聞きたい、ですって?
それは光栄です。
私でよければ、ぜひお話させてください。
私がグレイブハル城を訪れたのは、新緑の季節でした。
祖母が亡くなり、私は彼女の日記帳を譲り受けたのですが、鍵がかかっているわけでもないのに、なぜか開かなくて。
祖母は寡黙で厳しい人でしたが、愛の深い、とても素晴らしい女性でした。
祖母を失ったこと、そして日記帳が開かないこと。
それが重なって、僕はすっかり意気消沈してしまって……
気晴らしに訪れたのが、グレイブハル城だったんです。
そこにいたアウレリウスという青年は、驚くほど美しく、そしてとても人懐こい人でした。
彼がにこりと笑うと、つい、こちらもつられて微笑んでしまうんです。
礼儀正しくて、所作も美しかった。
もしかしたら名家のご出身なのかもしれませんね。
あの優美な城を受け継いだ青年ですから、きっと、そうなのでしょう。
アウレリウスさんは、日記帳を開けるためのヒントをくださいました。
「日記帳にね、
祖父から“愛してる”って伝えてあげて」
……と。
まさか、そんなことで開くなんて、思いもしませんでした。
何をしても、ぴくりともしなかった日記帳が、その、たった一言で開いたんですから。
本当に、驚きました。
それにしても、あの頑固者の祖父の口から「愛してる」なんて言葉が出てくるなんて……。
祖父母が、きちんと愛し合っていたのだと分かって、僕も、なんだか嬉しくなってしまいました。
あれから祖父は、毎日、祖母の日記帳を読んでいるようです。
あぁ、もちろん、日記帳は祖父に譲りましたよ。
だって、そうでしょう?
あれは祖母から祖父への、ラブレターだったんです。
僕が持っているのは、少し変ですから。
祖母だって、孫に読まれたら、きっと恥ずかしいでしょうし。
祖父は、毎日、花に水をあげています。
こっそり花に向かって、「私も愛してるよ」なんて、つぶやいているのを聞いてしまいました。
ふふ。
ここだけの話ですから、どうかご内密に。
……すみません、話がそれてしまいましたね。
グレイブハル城そのものも、本当に美しくて、今思い出しても、ため息が出ます。
私は、あちこちで彼らの話をしてしまいました。
だって、あそこには、いい思い出しかありませんから。
城も、青年たちも、美しくて、温かくて、本当に素晴らしい場所でした。
彼らには、感謝しかありません。
今は父の仕事を引き継いで、私も、ずいぶん忙しくなってしまいました。
実は、結婚もしまして。
……あぁ、ありがとうございます。
ちょっと、照れくさいですね。
落ち着いたら、また家族で訪れたいと思っています。
行くご予定があるんですか?
それは、素敵ですね。
どうぞ、ぜひ楽しんでいらしてください。
えぇ、それでは。
また、どこかでお会いできたら嬉しいです。




