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グレイブハル城の観測者  作者: かも ねぎ
拾遺 第八章『終わりの方法』
134/160

拾遺8-1 測る温度


 王都オルドンからほど近い、湖のほとりに建つ――グレイブハル城。


 風光明媚なこの城は、いつしか観光名所として知られるようになった。


 美しく、

 静かで、

 それでいて、どこか不思議な場所として。


 この城を守るのは、

 錬金術によって生み出された二体の――ホムンクルス。


 絶世の美貌を持つ青年、アウレリウス。

 そして、彼の手によって生まれた少年、セティ。


 その誕生に祝福があったのか。

 それとも――


 それを知る者は、誰もいない。

 世界から弾かれたこの城に封じられた、

 厳かな秘密である。


 ◇


 朝陽が、室内の沈黙を静かに撫でていた。


 アウレリウスがベッドから起き上がると、セティはすでに身支度を終えていた。

 書物机の前に立ち、髪を整えるための道具を並べている。


 軽く伸びをする。


 スリッパに足を入れ、セティの方へ歩み寄ると、革紐を持つその手首をそっと掴んだ。


 ――心拍数は、八十くらい。


 そのまま引き寄せ、胸に抱き込む。


「おはよう、セティ」

「おはようございます、アウル」


 離れ際、片手で彼の頬を包む。

 薬指を頸動脈に当て、脈を測る。


 ――少し速い。九十を超えている。


 腕を解き、セティから離れた。


 アウレリウスも朝の身支度を始める。

 クローゼットから服を取り出し、夜着のボタンに手をかけた。


 背後で、扉が閉まる音がする。


 ――思い返せば。

 僕が着替えるタイミングで、セティは部屋を出ていることが多い。


 ――そうか。

 僕の肌を、見ないようにしていたのかもしれない。


 ずっと、気づかなかった。


 セティに首筋へキスをされたあの時からしばらくして、アウレリウスは彼の脈を取るようになった。

 自分に触れられることを、セティがどう感じているのかを知るために。


 ずっと一緒にいても、分からなかったこと。

 彼の気持ちを知るには――

 アウレリウスには、この方法しか思いつかなかった。


 小さく息を吐く。


 一人きりになった部屋には、朝の光が水のように静かに満ちていた。



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