拾遺4-2 手記 Ⅰ
ベネディクト・アシュクロフトの手記――
今日もエドマンドの奴と一緒にポーカーをした。
あいつに勝てた試しがない。
稀に勝つこともあるが、あれは譲られているのではないか?
まぁいい。
ポーカーに勝つことより、エドマンドと酒を飲むのが楽しいだけだからな。
幼い頃からの腐れ縁だが、彼は本当によくできた男だ。
貴族的な華やかさを持っている上に、見目も悪くない。
それでいて潔癖で賢いときた。
神は二物を与えないとかなんとか、誰が言った?
エドマンドを見てみろ。もう二度とそんな法螺はふけないだろう。
またポーカーをする約束をした。
……ポーカー以外のゲームにしておくべきだったな。
◇
エドマンドは賢い。
今日も少し学問談義をした。
私は予め鼻を明かしてやろうと思って勉強していたんだ。
それをことごとく答えられて腹が立った。
誇らしい。
彼が私の友人だなんて、大声で触れて回りたいくらいだ。
エドマンドは絶対嫌がるだろうけどな。
あぁ、そうか。それをやろう。
嫌がる顔をさせてやろう。
楽しみだな、それは。
彼に王命の婚約話がきた。
異国の第三王女だとか。
淑女だといいんだが。
◇
エドマンドは頻繁に王宮に呼ばれているようだ。
また研究施設か何か作るらしいな。
本当に忙しそうだ。
彼はそんな立場でありながら偉ぶらないのだから……。欲はないのか?
陛下とも適切な距離をとっているようだ。
下手な嫉妬を煽ることなく信頼だけをうまく勝ち得ている。
世渡りもうまい男だ。
私のところに新たな鉱山の投資話がきた。
エドマンドはやめておけと言っていた。
悩む。
エドマンドの言うことを聞いておくべきか。
◇
かくいう私もそうだが、同世代の男たちはみな愛人を囲っている。
それはそうだろう。
我々は庶民とは違う。
結婚が決められて、成人してからやっと自由が得られるのだからな。
与えられた妻は子を成すためのもの。
恋は自分で掴み取るのさ。
だが、エドマンドは妻子を溺愛している。
恋愛小説にでも出てきそうなほどの聖人君子だな。
娼館にも行かない。
彼の身体は一体どうなってるんだ。
例の鉱山が破産したそうだ。
エドマンドの言うことを聞いて手を出さなかったのは正解だった……。
◇
エドマンドの妻子が馬車の事故により儚くなった。
落ち込みようがひどく、なんと声をかけてやればいいのか分からなかった。
◇
エドマンドは、グレイブハル城に引きこもるようになってしまった。
彼が持つ広大な土地も、管理人に任せきりになったという。
今日も私は彼の城に行ってみたが、会えなかった。
また時間を作って会いに行こう。
あれだけの男だ。
きっと立ち直ってくれるさ。
新しい女を紹介するか?
いやいや、エドマンドは我々とは違う。
彼を癒すのは、時間だけだろう。
◇
今日もエドマンドの城へ行った。
もう長らく会えていない。
何やら良くないものにのめり込んでいる……などという噂も立ち始めている。
エドマンドだぞ?
あの人格者がそんなものに身を投じるわけがない。
私だけは彼を信じる。
なんたって腐れ縁だからな。
エドマンド、またお前と酒が飲みたい。
◇
エドマンドのもとに勤めていた使用人が何人も斬られたとか……。
まさか。
そんなわけあるか?
きっと仕方のない事情があったんだ。
侯爵家に勤めていた元使用人たちは、何も語らない。
社交界には憶測だけが飛び交っている。
何も知らない凡俗どもめ。
エドマンドのところへはもう最近は行っていない。
久々に行ってみるか。
どうせ入れてもらえないだろうけどな。
エドマンド、手紙の返事くらい寄越せ。




