表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かぐや姫は乙姫になりました〜海の底から、約束を破った人間を見届けています〜  作者: 本咲 サクラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/6

其の四「消えた火の跡を、彼は見た」

浦島太郎は、これまでの来訪者とは決定的に違っていた。


竜宮城の豪華な食事を出しても、彼は「美味いですね」と言うばかりで、あまり食べない。四季の間に案内しても、「私の村の秋も、これくらい綺麗でしたよ」と、どこか寂しげに微笑む。

彼は、ここにある不変の美を尊ぶのではなく、地上の移ろう醜さを、そのまま愛しているようだった。

遥か昔の私のように。


「乙姫様、あなたはこの広い海を、お一人で守っていらっしゃるのですか」

ある夜、庭で並んで座ったとき、彼はそう聞いた。


「守っているわけではない。ただ、ここにいるだけ。」


「そうですか。……あなたは、とても美しい目をしておられる。けれど、ずっと遠くの、消えてしまった火を眺めているような目をしている。不変であるはずのこの場所で、見える心の奥の揺曳が綺麗だ。」


私は、言葉を失った。


帝は私の瞳に"月の冷たさ"を見た。

けれどこの漁師は、私の瞳に"熱の消えた跡"を見たのだ。

そして、彼は私が手放したはずの熱を過去を拾ってみせて、綺麗だと言う。不変の私の中にも移ろいがあるという。その事実が、凍りついていた私の胸を、じりじりと焦がした。


「母が待っています。約束したのです、今日のうちに帰ると」


三日が過ぎた頃、彼はそう言った。

地上の三日は、すでに数百年であることを、私は教えなかった。

ただ、震える手で彼に玉手箱を渡した。


そして、いつもと同じように、「竜宮城に戻って来たいなら開けてはいけない」と伝えた。


浦島太郎は箱を受け取りながら、「どうして開けてはいけないのか」と聞いた。

私は少し間を置いてから、「約束だから」と答えた。

「絶対に開けません」と彼は頷いた。その目は、帝と同じ、真実の光を宿していた。


これまでの来訪者と違うのは、私が彼にだけは裏切られてほしくないと、そう願ってしまったことだ。

彼を見送る私の指先が、その熱を求めて微かに震えていたことを、私は認めざるを得なかった。

浦島太郎の目に、乙姫はどんな風に映っていたと思いますか?


明日、この物語は結末を迎えます

最後まで見届けていただければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ