トロイの木馬
『仮想世界』に入り、灰色の世界と化したカンナギ港が辺り一面に広がる。電子の波が赤く染まり、サーバーに危険信号を放つ。
ネットワークが繋がず、焦り出す民衆を他所に、私たちは上を見上げる。
「あれが、『トロイの木馬』?」
巨大な木で出来た木馬を見上げる。どうやらこれが例の『トロイの木馬』のようだ。まさか、サイバー空間だとこんなに多いものだとは思いもしなかった。
木馬が鎮座しているところを見ると、大量のウィルスが木馬から放たれているのを見る。これが美生の言っていた仕組みの一部のようだ。あの中には、ランサムウェアなどが出ているのだろう。
それはともかく、一刻も早く木馬を除去しないといけない。そうしなければ、アリスを迎えることが出来ないのだ。
「これは相当手強そうね」
「そうだね。早急にどうにかしないと」
私達はそれぞれのスマホに手をかざす。
「いくわよ! ブリュンヒルデ、『ライド・トゥ・ブレイバー』!」
ブリュンヒルデと一つになり、『ブレイバー』の姿になる。美生も香里奈も続いて同じく『ブレイバー』の姿になる。
「さて、これは少し骨が折れそうな相手ね」
「あぁ、これだけのデカブツは初めてだ」
香里奈は『ヤタノカガミ』を担ぎながら、『トロイの木馬』を見上げる。木馬はそれでもランサムウェアをカンナギ港のサーバーに送り続ける。
香里奈が木馬を見上げていると、美生が『ウィングユニット』を展開し、木馬の頭に向かって攻撃する。
「それじゃ、おっ先!」
「やろう! 一番槍は私のもんだ!」
美生がいくのと同時に香里奈も後を追うように『ウィングユニット』を展開する。2人が木馬に攻撃を仕掛ける。次の瞬間、2人の攻撃がバリアのようなものに弾かれてしまった。
「なんだこりゃ!? バリアまではってやがるのか?」
「それにこいつ、相当硬いわ。何層にもはっているみたいね」
2人は再度『トロイの木馬』に突撃する。だが、同じくバリアによって弾かれた。すると、『トロイの木馬』から大量にウィルスが放出された。
ウィルスの群れは私たちを目掛けて攻撃する。その中にはこの間のカマキリまでもいた。
「これが『トロイの木馬』。あの図体にいろんなものが内包しているなんて」
「こいつはキリがねぇ! 溢れ出す前に片つけるぞ!」
大量のウィルスとランサムウェアを相手に3人で迎撃する。香里奈の『ヤタノカガミ』が触手のように固まるウィルスを焼き尽くす。溢れたランサムウェアは美生の『ゲイボルグ』でコアを突き刺す。
「『ギリシア・コード【β】。モード:ガンスリンガー』」
『ヴァルハラ』を連射しながらウィルスの大群を一掃する。触手のように伸びたウィルスの群れが空洞から体勢を崩す。しかし、木馬から次々とウィルスとランサムウェアの大群が灰色のカンナギ港に押し寄せる。
「まだ溢れてくるの?」
「どうやら遊び足りないらしいな。なら、お言葉に甘えて暴れてやるぜ!」
美生と香里奈はウィルスの群れを迎え撃つ。しかし、このままだと次から次へと押し寄せてくるウィルスの群れに、押し潰されることは明白だ。
そう考えていると、美生がウィルスに囲まれる。私と香里奈は美生を助けに向かう。すると、美生を取り囲んでいたウィルスは、一瞬で蒸発した。
「全く、これを使うことになるなんてね」
「今のは一体?」
「ケッ。それはそうとさっさと使いやがれってんだ」
古代文字のようなものを空間に書き記す。すると、古代文字から『ウィンド・エネルギー』が放出された。それに伴い、ウィルスの群れは一瞬にして切り刻まれていった。
「そういえば、美羽には見せてなかったわね。これは『ルーン・コード』。ケルト神話に伝わる『ルーン文字』を私の独学でデータ化したものよ。コードを読み込みことで、『電脳世界』でもルーン文字を書くことができるのよ」
「文字ごとに『エネルギー』を組み込んだってことなの?」
「そうね。でも、これはあんまり使いたくなのよ。クーフーリンの演算と書き込んだルーン文字を瞬時に読み込まないと時間がかかるのよね」
「その割にはスラスラじゃねぇか。いいから続けんぞ」
呆れながら香里奈は『ヤタノカガミ』を振り回す。美生は『ルーン・コード』を魔術のように扱いつつ、撃ち漏らしたウィルスを『ゲイボルグ』で始末する。
「『Λ・ブラスト』!」
香里奈の『ヤタノカガミ』から出る熱線が、ウィルスの群れを焼き尽くす。私は瞬時に『パニッシュメント』に切り替え、『レギンレイヴ』のモーターをフルスロットルで回転させる。そして、溜めた『エネルギー』を一気に放出する。
「『γ・ストライク』!」
回転を生かした『エネルギー』を一気に放つ。すると、一直線に放たれた『エネルギー』はウィルスの群れを殲滅する。
「これで大方やったかしら?」
安堵しているその瞬間、三度木馬からウィルスとランサムウェアが大量に放出される。
「まだ来るっていうの!?」
「まずったな。これ以上戦える『エネルギー』がないぜ」
「そうね。でも、ここはなんとかして守り抜くわよ!」
ウィルスの群れが再び襲いかかる。その時だった。ウィルスの群れは磁力によって拘束され、後続から来たピットによって次々と駆逐された。
爆風の後ろから、ドレスを纏った『ブレイバー』が現れる。
「もう。3人だけで暴れるんだから。私の分は残ってるんでしょうね?」
2つの大ぶりの盾を肩に浮かせ、『ブレイバー』になったアリスが駆けつけて来た。そして、45口径の『ウェポン』で撃ち漏らしたカマキリを撃ち抜く。
「当然、あるわよ。たくさんね」
「それはよかった。まだ前菜ってところかな?」
「前菜にしては量が多いがな」
「まぁ、みんなで食べれば均等じゃない」
アリスの参戦で、私たちは息を吹き返す。アリスが加わったことで、木馬の討伐は佳境に進むのだった。
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数分前、原子力空母『ロナウド・レーガン』船内。
海軍の原子力空母、『ロナウド・レーガン』の船内で米軍兵達は今も待機していた。アリスもその1人で、カンナギ港で何かが起きたこと感じとる。それに反応したアテナはアリスに伝える。アリスはそれを聞くために甲板の上に向かう。
「アテナ。状況は?」
『『トロイの木馬』に感染したそうです。今は彼女達が迎撃しているところかと』
「それなら厄介ね。やったのはロシア?」
『発信源からしてそうかと。行かれますか?』
アテナの質問に、アリスは当然かのように向かう。軍人としてもそうだが、親友たちとの再開に心躍らしているのだ。
「いくよ、アテナ!」
『今なら他のクルーたちもいません。『仮想世界』への転移を開始します』
アテナの転送によって、『仮想世界』に転移する。灰色になったカンナギ港で、美羽達が『トロイの木馬』と激しい戦闘を行う。
「アテナ。『ライド・トゥ・ブレイバー』!」
光の数式がアテナの身体を包み込む。軍服を光によって消え、ドレスのような装備を身に纏う。最後に鮮やかな金髪を金属質の髪飾りでポニーテールに纏めると、アテナに『ライド』した姿、『A・アテナ』に変身する。
「2ヶ月ぶりだね。さぁ、たっぷりと暴れさせてもらおうかな?」
『ここからでは5分もかからず着きます。行かれますか?』
「当然だよ。私の分まで始末したなら、許さないんだから!」
マッハ5の速度でカンナギ港に向かう。『ブレイバー』の『アーマーユニット』で空気の摩擦を遮断する。
こうして、アリスは背後からウィルスの大群を始末し、草薙美羽たちを合流したのだった。




